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Vtuberの陰キャとギャルが百合する話  作者: 二葉ベス
第2章:仲良くなるように営業する毎日
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第19話:青の無知。コラボって何を知ればいいの?

 それからコラボの日程を決めて、内容も決めてみた。

 最初の百合営業ということもあり、お互いのことを知ってもらおう、ということで雑談配信をすることとなった。

 雑談配信なんてやったことないのになぁ。向こうは朝田世オキテと名前のとおりに朝活雑談してるのに対して、わたしはお絵かき垂れ流し配信。天地の差はあまりにも付きすぎていた。

 自分から言いだしたこととはいえ、やっぱり百合営業はなかったかなぁ。わたしだってオキテさんのことあんまり知らないのに。


「……起きてるかな、レモンさん」


 こういう時に頼りになるのがレモンさんだ。彼女はかなり活動的にVtuber活動をしている。FPSゲームだって、誘ったり誘われたりしながらコラボ配信をしていることが多かったりする。その点で言えば、間違いなく先輩様なのだ。

 えーっと、今は配信してないか。流石に夜遅いから軽く済ませるつもりだけど、それ以前に起きてるかなぁ。


 連絡したら速攻で返事が返ってきた。大丈夫らしい。

 毎回思うけど、レモンさんのレスポンスの良さ、すごすぎじゃないかな。わたしも見習うところがある。ま、連絡なんてオキテさん以外からは来ないんですけどね。


「もしもし」

『ふあぁ……。おはよー』


 ん? いつものボイチェンが入ったノイズのような音が聞こえない。

 シンプルに入ってくるのは幼女の声ではなく、中性的で響くような低音の声であった。

 あー、この人寝起きだからボイチェン付け忘れてるな?


「レモンさん、ボイチェン忘れてますよ」

『えぇ~? あーホントだ。……まぁいっか、相手は音瑠香ちゃんだし』


 それでいいのか配信者。ボロが出たらまずいでしょ、そこで!


「起こしちゃいました?」

『うーん……。ちょっと寝てただけ。ゲームしたら目覚めるから待ってて』

「は、はい……」


 マイクがすごい物音を漁るような音を拾ってくる。途中で何処かをぶつけたのか「いたー!」とか聞こえたし。もうこの人の生活環境が恐ろしく気になって仕方ない。お茶っ葉の妖精幼女の中身おっさん説とか聞きたくないし。


 まぁなんというか。こんな感じでレモンさんは結構だらしのない人だ。いつ寝てるかも、いつ起きてるかも分からない。働いているのかすら……。わたしもちゃんと仕事見つけないとこんな風にダメな大人になるんだろうなぁ、という気持ちとイラストレーターとして働くならこれぐらいも覚悟しなきゃ行けないんだろうなぁ、って。


『今つけた。何するー?』

「今日はそういう話じゃないんですけど……」

『おー、そうなの? どれ、お姉さんに言ってみんしゃい』

「キャラ崩壊してますって」

『ウチに言ってみて~? こんな感じでいい?』


 ダメかもしれんこのお茶っ葉妖精幼女。ボイチェンは相変わらず付け忘れてるけど、思っている以上に低音が響いててイケボっていうか、こっちの路線で売っていったら、女性のお姉さま方とかにモロに直撃しそう。羨ましい。


「ぶっちゃけ聞きますけど、レモンさんの女の人ですか?!」

『聞きたかったことってそれ~?』

「いや、違いますけど」

『じゃあなんで今聞いたのさ~』

「今の機会しか聞けないかなぁ、と」


 ボイチェンが外れてる今しかね。


『ふふふ、どっちだと思う~?』


 そして返ってくる質問がこれだよ。なんというか、うざい。

 こういうの「わたし、何歳見える~」って質問と同じぐらい面倒くさくて、外れた時がさらに面倒くさく、当たった試しがない質問だ。

 幸いにも答えは2択だし、声色的にはなんとなく察するものがあるからさっさと正解を口にすることにした。


「女の人です」

『えへへ~、せいかーい!』


 聞いてれば分かるって。そっちの路線も悪くはなさそうなのになぁ、と思いつつ手元の飲み物を一口飲んだ。なんか今日喋りまくってる気がする。


『まぁバレてどうっていうのもないけど、これはみんなには秘密ね~』

「幼女じゃなくなるからですか?」

『ウチはさ、顔面種族値600族のイケメンイケボ女子じゃなくて、幼女になりたかったんだよね~……』

「ま、まぁ。致命的ですよね。その低音は」

『だよね~! 流石イラストレーター、分かってる~!』


 今度、当てつけに顔面種族値600族のイケメンお茶っ葉妖精幼女でも描いてやろうかな。誰かに刺さるようにときめき重視のシチュエーションで。となると執事系がいいかな。更に長身長足でスーツを着てるとなおいいかも。極めつけはお茶を持ってきて「お嬢様、おまたせしました」って。


『全部聞こえてるよ~』

「ぅえ?!」

『それやったらさすがのウチも縁切るからな』

「やらない、やらないですよ!」

『あはは、冗談!』


 縁切るって言われた時のドスの入り方がかなり怖かったけど、気にしないことにしよう。うん、わたしは何も発想してないし、何も描いてない。よし。


『で、本題は?』

「あー、そうでした。えーっと……」


 ということで前回までの内容をカクカクシカジカで伝えることにした。

 一言で口にすると、いま人気の新人Vtuberと百合営業することになった、ということを。


『あー、あのオキテちゃんかー。ウチもフォロー貰ってたなー』

「流石オキテさん……」

『Vを始めた理由が音瑠香ちゃんを人気にしたくって、そのまま音瑠香ちゃんは百合営業することになった、と』

「まぁ、そういうことです」

『ふーん……』


 なんだろう。ちょっと寒気がした気がする。声色から、まるでなにか琴線に触れたかのような感覚。よく分からないけど、嫉妬とかそういう類じゃない。もっと別の、何かだ。


『まぁまぁまぁまぁ詳しく話を聞こうかな~。お茶とお菓子持ってきてもいい?』

「そこまで長く語るつもりは……」

『大丈夫だよ~。少なく見積もっても2時間は話すから』

「わたし明日学校です!!」

『ちぇ~』


 明らかに楽しんでいるような声だったけど、まぁ相談事に対してノリノリならそれに越したことはないか。

 大体聞かれるようなことも何もないし。百合営業だし。憧れは抱いてるけど、それ以上に恋愛感情なんて持ってないから。


『で、何をそんなに聞きたいの?』

「コラボって、どんな感じでやった方がいいのかなー、とか」

『……ん?』

「あ、ほら! わたしコラボやったことないので、どういう距離感で進めればいいのかなとか分からなくて」


 あれ、これひょっとして、自分がコミュ障であることを打ち明けているのと同義では?

 ま、まぁ! 友だちがいないわけじゃないし。そうだろう、レモンさん、オキテさん!!


『ここまで純粋無垢なコラボ処女を見たのは初めてだよ、ウチは……!』

「しょっ?!」

『距離感も何も接したいありのままでいいんじゃないの~、って話』


 そ、そういうね……。それが分かってないから困ってるんですけども。

 百合営業の距離感が全然掴めないし。そもそもオキテさんの本体はあのギャルだ。赤城さんがどこまでわたしのことを受け入れてるのかも分からないし、知っていることがどこまであるか……。

 むしろわたしも赤城さんのこと、何ひとつ知らないんだ。どこから始めればいいのか、分からないんだ。


『あぁ、そういう話ね』

「そうです。相手のことも百合営業のことも分からないから」

『じゃあまずは相手のことを知っていくのがいいかもね~。なんとかは危うからずって言うから~』


 ほぼ伝わってこないけど、わたしもニュアンスしかわからないからいいか。

 それはともかく。オキテさんのことを、赤城さんのことをもっと知っていく、か……。


「今日はもう寝ます。早起きしてオキテさんの配信見てきます!」

『お、その調子だ~! じゃあウチはもうちょっと寝ようかなぁ~』

「ま、まぁ。ちゃんと寝てくださいね……」


 レモンさんの体の調子がなんとなく心配になったけれど、まぁいいか。

 通話を切って、とりあえず明日に備えてわたしはベッドに入り、睡魔に襲われることにした。

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