6.夏休みと秋の収穫祭デート side J
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美術館に行った日からは彼女との距離を少しずつ詰めていった。彼女の友人達にも僕の気持ちは相談という形で打ち明けた。幸い僕に協力的で、恋愛初心者な彼女とはゆっくり育むようにとアドバイスされた。
そしてゆっくりしてたら夏休みになってしまった。
休みの間、彼女は帰省するそうだ。伯爵家の領地は北の高地にあって移動にも時間がかかるから、新学期まで戻らないらしい。久しぶりに両親や領民に会えるのが楽しみだと笑っていた。
王都より涼しいなら夏の間の避暑地として経営を考えないのかな。景色もいいだろうし。そう言えば彼女は田舎育ちの割にそんな感じしないな。でも彼女のきめ細やかな白肌は北方に多く見られるものらしい。触れてみたい。
彼女に会えないのは寂しいけど、夏休みは有限だ。色々楽しもう、と気持ちを切り替えた。
父の商会を手伝ったり、母の開くサロンに顔を出したり、友人とサマーパーティーを企画したりと、忙しない日々を楽しんだ。人脈作りは大切だ。
それなりに充実した夏休みが終わり学園に行くと、教室に彼女の姿を見つけた。久しぶりに会う彼女はやっぱり綺麗だった。田舎では毎日のように外に出ていたと言うけど、相変わらず肌は透けるように白い。久しぶりに会う友人達と話す楽しそうな笑顔は輝いていた。
夏休みの間たくさんの女性と会ったけど、やっぱり彼女が一番だ。
「秋の収穫祭、よかったら一緒に行かない?」
秋の収穫祭は、国の内外の様々な物が集められる品評会も兼ねてて、経済的にも盛り上がる。父の商会は出店してないけど、商品の開発などに繋がる情報の得られる重要な催しだ。何より楽しい。
彼女はいつも家族と行くらしい。この年になったらそんなに気を使う必要もないだろうに。しばらく考えてからやっと笑顔を向けてくれた。
「もちろん行くわ。楽しそう!」
やった。
収穫祭の日はよく晴れていて、彼女を迎えに行く足どりも軽かった。
エントランスの扉から出てきた彼女を見て驚いた。少し複雑な編込み模様のカーディガンにスカート姿。いつもはサラサラなストレートの髪が、今日は可愛らしく結ばれ、柔らかそうにくるんとカールしている。前髪を下ろしてる為か顔立ちもあどけなく見える。
いつもの落ち着いた才女のイメージと違いすぎる。これが僕のためかと思うと何より嬉しい。
僕が黙って見つめていると、少し不安そうに見せる上目使いもいい。思わず笑ってしまった。
「今日の格好も可愛いね。新鮮だ」
祭りに行くのがますます楽しくなってきた!
「せっかくだから国中の美味しいもの食べつくそうよ。ちゃんとお腹空かせてきた?」
楽しい気持ちが抑えきれないまま彼女を見る。
「もちろん!朝はスープだけにしたわ!」
得意気に胸を張る姿も可愛い。
「いいね!けど食べきれない分は僕がもらうから、無理しないで」
「ふふ。ありがとう」
彼女と並んで歩き出した。
祭のメイン会場に繋がる通りに出ると人が多くなってきた。彼女が人混みに押されて少し遅れる。今しかないと思い振り返ると、彼女がきょとんとした顔で見上げてくる。可愛い。
「混雑してるから離れないようにね」
差し出した僕の手に、戸惑いなく重ねられた彼女の手をギュッと繋いだ。
「!」
繋いだ手が想像以上に細く柔らかくて、握り締める力が強過ぎたことに驚いた。瞬時に顔が赤くなるのを感じて、急いで顔をそらして歩き出した。
平民の恋人を真似て手を繋いでみたいと思ってたけど、想像以上に繋いだ手に意識を持っていかれた。
僕たちはほとんど話すことなく人混みを進んで行った。
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