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4.髪飾りと美術館デート side J

初デートです。


 勉強を教えてもらったお礼をと言ったけど、彼女にはやんわり断られてしまった。それでもなんとか関係を繋げたい。

 とにかく贈り物をしよう。彼女の身に付けている物からして贅沢が好きな感じもしないし、あまり高価な物だと断られてしまうかも。


 若い女性や平民が気軽に使えるアクセサリーを考えてみよう。早速父の取引先の工房に話をすると、数日後、職人がいくつか試作品を持って来た。その中から青い硝子を使った髪留めを手に取る。僕の瞳の色。彼女の瞳も青いし、これならきっと似合うと思う。



 彼女にお礼だと手渡すけど、やはり初めは断られた。新しい商品を試して欲しいと言うと、それならばと受け取ってくれた。やった。


 次の日、彼女の白銀の髪に僕の瞳の色が飾られてた。すごく嬉しくて、表情が崩れないように苦労してしまった。

 クラスの女の子達に、髪飾りについて何度か聞かれてた。これは流行るかもしれない。早めに商品化するよう父に知らせた。


 一度は浮かれた気分になってたけど、その後、彼女との仲はなかなか進展しなかった。

 というのも、彼女は学園内では友人達と一緒にいることが多くて、話し掛けてもその場にいる全員と話すことになってしまうからだ。彼女は大勢でいると口数が多くはないから、僕とはほとんど会話にならない。

 それでも彼女が絵画が好きで、開催中の展覧会に興味があると言う情報は掴めた。


 早速チケットを手に入れた。



 だけど、それから一週間以上、僕の制服の胸ポケットには展覧会のチケットが2枚、入ったままになっている。


 なかなか彼女が一人きりにならない。いっそのこと友人達の前で誘ってしまおうかな。いや、うまくいかない予感しかしない。

 どうしようかとじりじりしながら、教室の斜め後ろの席から彼女の様子を伺っていると、放課後ひとりで図書館に寄ることがわかった。

 僕は急いで教室を出て、図書館近くの廊下に先回りすることにした。


 ひとり歩いてくる彼女を待ち、背後からそっと近づいた。邪魔が入る前にと気が急いて、思わず距離が近くなってしまったら、少しだけ驚かせてしまった。

 結果、初デートに誘うことに成功した。




 その日はあっという間に来た。伯爵家のタウンハウスまで迎えに行くと、オフホワイトのワンピース姿の彼女が出てきた。シンプルな装いでも十分可愛い。けど、いつかうちの商品を着てみて欲しいな。きっともっと可愛くなる。


 並んで歩きだすと、水色のリボンの編み込まれた髪に、僕の贈った髪飾りがあるのを見つけた。可愛い。もっと僕の選んだものを身に着けてほしい。


 その日、街を歩いても美術館にいても、彼女が一番美しかった。

 僕の隣で静かに絵を観賞する彼女は、凛とした空気を纏っているけど、その目は嬉しそうに輝いていて、飾られた作品よりも彼女に見惚れてしまっていた。


 暫くすると、彼女が1つの絵画の前で足を止めた。とても熱心に観ているから、僕も絵画に目をやった。


 それほど大きくない風景画。


 川に架かった橋の田舎の風景。空は晴れてて、咲いているのは春の花かな。淡く明るい色が溢れている。何となく……


「気持ちのいい天気だね」


 思わず口にすると、彼女が勢いよく振り返った。見開いた瞳の色は深い青で、僕の瞳の空色を映した海のようだった。綺麗だな。

 そういえば美術館に着いてから初めて、僕をちゃんと見てくれた。嬉しくなって続けた。


「ごめんね。急に声を掛けて。その絵を観てたらそう思ったんだ」


 小声で話すために少し距離を詰める。


「ううん。大丈夫。私もそう感じてたから」


 彼女は僕との近さを気にする様子もなく、楽しそうに笑った。気を許してくれたような柔らかい笑顔。可愛い。


 こんな顔を見せてくれるんだから、きっと僕のこと好きになってくれるよね。



お読みいただきありがとうございました。

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