36.王宮パーティーと僕の彼女 side J
彼女と食事をした日から数日後、手紙が届いた。王宮パーティーのために贈ったドレスのお礼と、先日自分が至らなかったことについての謝罪が書かれていた。
僕が怒ってると思ったのかな。そんな必要ないのに……。けど何だか、学園の頃は前ばかり見てきた彼女が僕と向き合ってくれてるのが嬉しい。
婚約して初めてふたりで参加するのは王宮でのパーティーになった。迎えに行く馬車の中で最後にあった日の彼女を思い出す。……あんなに草臥れるなら働かなくてもいいのに。僕と結婚したら隣で幸せそうに笑っていて欲しい。
そんなことを考えているうちに伯爵家のタウンハウスに着いた。
エントラスで待っていた僕は、二階から現れた彼女を見て思わず階段を駆け上りその手をとった。そのままエスコートして階段を下る。
想像以上に綺麗だ。
今回僕が贈ったドレスは、黄色い裾から胸元にかけて白くなるシフォン生地を重ねたプリンセスラインだ。胸元を白くしてよかった。彼女の白い肌とサファイアの青がよく映えている。
けど彼女はいつもと違い何となくぎごちない。やっばり先日のことを気にしてるのかな。
「この間は無理をさせてしまってごめんね。今日は大丈夫?」
「はい。私の方こそごめんなさい。今日はよろしくお願いします」
僕が謝ると彼女はいつも通りの優しい笑顔になった。やっぱり彼女が一番綺麗だし可愛い。
王宮の会場に入ると大勢の視線を感じた。みんな彼女に見とれてるんだ。奥の方には大学の友人達がいて、こちらを見ている。彼女を紹介しないといけないな。
僕が友人達に向かって歩きだすと、彼女が
ご両親を見つけて「お父様たちだわ」と言った。「うん」馬車は別だったけどお互い招待されてるしいるしね。
そのまま進もうとしてたのに、彼女に腕を引かれてご両親の元に誘導された。……案外力強いね。
「お義父様とお義母様はどちらにいるかしら。ご挨拶したいわ」
ご両親との挨拶がやっと終わると、今度は彼女は僕の両親を探し出した。いつでも会えるんだからいいじゃないか。
「必要ないよ」
「え?でも……」
彼女が困惑した様子になる。視線を動かして会場を見渡すと、すぐに両親を見つけられた。人の塊ができている。
「ほら、父も母も歓談中だよ。特に父は商談絡みかもしれないし、下手に割り込まない方がいいよ」
「そうなの?でもご挨拶もしないなんて、いいのかしら」
「大丈夫だよ。それぞれ楽しんでるから」
彼女がまだ言い淀むのを僕はにっこりと微笑んで制した。それよりも早く友人達に僕の彼女を紹介したい。
近くまできた友人達はみんな食い入るように彼女を見つめてきた。気持ちはわかるけど流石に失礼じゃないかな。けど、彼女は気にする様子もなくにこやかに接している。
少し離れたところから「婚約者は地味でつまらなそうな女だって誰か言ってなかったか?」と困惑したような囁きが聞こえた。僕の彼女がそんな訳ないじゃないか。
友人のなかには彼女とダンスを申し込もうとした奴もいたけど、もちろん僕が断った。この会場で彼女と踊れるのは僕だけだ。
上機嫌で友人達と歓談していたのに、突然、学園時代の友人達がやって来てあっという間に彼女を連れて行ってしまった。なんだか少しだけ懐かしいな……。
久しぶりの友人達と楽しそうに話す彼女を連れ戻すことは、それからできなかった。
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