表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

31/58

閑話 兄視点②

ふたたびアリシア(彼女)のお兄様です。


 2歳下の妹が学園に入学した年、私は大学の選考試験に向けた勉強に並行して、サザン伯爵に彼女との婚約の許しをもらえるよう尽力していた。

 両家の初顔合わせにまで辿り着けたときは、気が抜けて彼女の前なのにぐったりしてしまった。そんな姿を見せても彼女は嬉しそうに微笑んで労ってくれた。


 妹に私の婚約を伝えると手放しで祝福してくれた。はしゃいで私と彼女について延々と聞いてくるが、兄の恋愛話なんて面白いのだろうか。



 ある日、同じクラスのハムウェイス侯爵令嬢から声を掛けられた。一見嫋やかだが眼力が凄い。そんな方が妹と話をしたいそうだ。

 生徒会役員で王宮事務官の学園長推薦を受けている侯爵令嬢からの話か……。快諾しておいた。


 妹には当日の朝、馬車の中であえて伝えた。それまで私の大学合格の話で上機嫌だったのが、予想通り一瞬で挙動不審になった。まぁ、学園に着けば人の目があるから大人しくなるだろう。


 昼休み、モタモタしてるだろう妹を回収して、ハムウェイス侯爵令嬢のもとに連れて行く。どうあがいても妹が敵う相手ではないのだから、早めに承諾すればいいと思う。

 後でエイデンも生徒会に入ると聞いた。彼がいれば安心だ。



 その後、私は大学に入学し更に忙しくなった。そろそろ一年が過ぎるが学びたいことが次々とあらわれて、大学が3年しかないことを惜しくすら思う。彼女と結婚するためにも延長なんてしないが。


 自室で本を読んでいると、上機嫌な妹が入ってきて、「新歓パーティーのドレスを彼が贈ってくれるそうなの」と軽い口調で言ってきた。妹よ、まさかその意味をわかってない訳ではないよな……?

 内心恐れながら妹の顔を見ると、頬が少し赤くなっていた。その顔は理解はしてるようだな。安心した。

 それにしても、彼とはヤツのことだよな。長期戦なんだな。まぁ頑張れ。気には入らないけど。



 冬が始まる頃、学園から帰ってきた妹が真っ直ぐわたしの部屋にやってきて、「王宮事務官の学園長推薦をいただけたわ」と興奮ぎみに言った。生徒会への推薦を受けたときから可能性はあるかと思ってたが、本当に夢をかなえるとは。

 目の前で笑ってる妹が子供の頃に重なる。雪や泥にまみれても笑って立ち上がる子だったな。私は久しぶりに妹の頭を撫でた。



 冬の休みには婚約者と妹の3人で領地に向かった。狭い馬車の中、長い時間共に過ごす訳だが、心配する暇もなくふたりは意気投合した。気を許すと令嬢としては礼儀に欠けるところのある妹だが、彼女はそれも受け入れてくれている。本当の姉妹のようだ。


 領地に入る頃には寒さが増してきた。暖かい地で生まれ育った彼女は大丈夫だろうか。心配したが、彼女は不満をもらすことなく、領民達にもにこやかに接している。雪の中、幸せそうに微笑む彼女を見て、共に歩めることを幸運だと心から思った。



 そして妹が学園を卒業する日が近くなった頃、自室で研究レポートを必死にまとめていると、妹が上機嫌で入ってきた。既視感があるなと考えていると、「彼から求婚されたので婚約することにした」と言ってきた。…………は?

 唐突な報告に驚いて顔をあげると、明るい声色とは裏腹に緊張した顔の妹が立っていた。妹なりに真剣なのだろうと思ったので、祝福はしておいた。……やはり何故だか気に入らないが。

 妹は私の言い方に不満そうな顔をしていたが、私は今はレポートを仕上げたいんだ。



 私は妹が変わらず幸せそうに笑ってればいいと思う。




お読みいただきありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ