23.学園長推薦と冬の領地 side A
あっという間に冬です。
新歓パーティーのドレスの衝撃は意外とあっさり消えさり、3年生になってもあまり変化はなかった。
生徒会も、最高学年ではあるけど、第三王子達が顔となってくださってるので、私達の仕事はほとんど変わらず、むしろ2度目なので楽になった。
秋が過ぎる頃、先生がクラスに来て、すぐに学園長室に行くよう言われた。
「はい!参ります!」
思わずおかしな宣言をしてしまい、一緒にいた友人達にクスクスと笑われてしまった。恥ずかしい。けどみんな嬉しそうに、「きっと素敵な知らせだわ」と送り出してくれた。
クラスを出る時、離れて座っていた彼をちらりと見ると、優しい笑顔で手を振ってくれた。
足早に向かうと、学園長室の前にエイデンが立っていた。相変わらず眉間にシワを寄せて、こちらを見る。
「お前も呼ばれたのか」
……何だか1年生の時、ハムウェイス侯爵令嬢に呼び出されたことを思い出すわ。無言のままにっこりと笑って、エイデンの隣に立つ。ふたり並んで学園長室の扉を叩いた。
「エイダン・ウェスティン、アリシア・ノーステリア、両名を王宮事務官に推薦する」
結果、ふたり揃って王宮事務官登用の学園長推薦をいただくことができた。夢だったらどうしよう。学園長に深々と礼をして部屋を出る。扉を静かに丁寧に細心の注意を払って閉じた。
「ねぇ……、よく覚えてないんだけど、私、失礼なことしてなかったわよね?」
「大丈夫じゃないか?」
相変わらず素っ気ないエイデンを睨んでやろうとして、止まった。エイデンが笑顔だったから。
「まぁ、よろしく頼むな」
私が驚いて黙っていると、あっという間に眉間にシワが戻ってきた。惜しい。けど最早この方が落ち着く。
「よろしく頼むわね」
私も敢えて素っ気なく返した。
クラスに戻ると、友人達が待ち構えていて、代わる代わる祝福してくれた。私は感動で涙が出そうになってるのに、エイデンは「どうも」と短く礼をして席についてしまった。
残された私を友人達が優しく抱きしめてくれる。
「貴女を心から尊敬するわ。ずっと努力してるのを見てきたから、貴女の夢がかなって本当に嬉しい。おめでとう」
その言葉に、涙が堪えきれずに溢れてしまった。
友人達のほとんどは婚約者がいて、卒業後はそれぞれ結婚することになっている。私のように、就職を真剣に考えている女子生徒は稀なのだ。もし、これから先の道が分かれてしまっても、大切にするから、ずっと友人でいてほしい。
彼は最後に近づいてきて、そっと「おめでとう」と言ってくれた。女の子の輪が出来ちゃってたしね。
タウンハウスに戻ると、真っ先に兄の部屋に向かい、学園長推薦をいただけたことを報告した。兄は立ち上がって「よかったな」と何年かぶりに頭を撫でてくれた。
両親にも手紙で報告すると、すぐに返事がきた。手紙でも祝福の気持ちと興奮してる様子が伝わってきて、思わず笑ってしまった。
冬休みは、2年ぶりに領地で過ごすことにした。馬車の中、目の前には兄と未来のお義姉様が仲良く座っている。私、お邪魔ではないかしら……?と思ってたら、お義姉様が、
「楽しみにしてたの。たくさんお話しましょうね」
と言ってくださった。それならば遠慮なく、と兄をそっちのけで楽しくおしゃべりした。私はとても素直なのだ。兄はそんな私達を楽しそうに眺めていた。
領地に入ると雪道のため、馬を休ませながら進むことになる。休むたびに領地の人達が声を掛けてくれて、領地の様子を話してくれたり、温かい飲み物をくれたりした。
今回はお義姉様が一緒のため、いつも以上に歓迎された。婚姻はまだなのにすでに『若奥様』と呼ばれている。初めは遠慮していたお義姉様だったけど、兄が隣でにこにこしていたので、受け入れたようだった。
最後の休憩となる村を出発するため、馬車に乗り込もうとした時、ひとりのお婆さんが小走りで近寄って来て、お義姉様の肩に手編みのショールをいきなり掛けてきた。
「大切な若奥様が冷えないように」
お婆さんは目尻にたくさんのシワを寄せて笑う。
普段から領民との距離が近い私達は気にしてないのだけど、お義姉様には馴れ馴れしすぎたかしら……。さすがに少し不安になる。
お義姉様は驚いた顔をしてたけど、両手で肩に掛かったショールに触れ、とても嬉しそうに笑った。
「ありがとう。とても暖かいわ」
雪の中で幸せそうに微笑むお義姉様は、とても綺麗だった。
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