11.お店訪問と金の栞 side A
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今日は彼のお父様の経営するお店に行く日だ。
今回の支度はマリの意見を素直に聞くね、と言ったら早朝から起こされた。
支度の終わった私は、胸の下にリボンの付いたボルドーのワンピースに茶色のショートブーツ、柔らかい白のコートを合わせている。髪はいつもより丁寧にケアしてくれたからサラサラ艶々だ。サイドを緩く編み込んで髪飾りを着けてくれた。
「楽しんできてくださいね」
とメイドらしからぬニヤニヤ顔で送り出される。苦笑を浮かべて玄関に向かった。兄の婚約のお陰で、我が家はなにやら祝福ムードなのだ。
門で待っている彼のもとに向かった。
彼は金色の髪によく似合う青みがかったライトグレーのコート姿。凝ったデザインだけど、彼が着ると何故か派手に見えない。扉から出てきた私を見て、キラキラした笑顔を向けてくれた。
彼に連れられた先にあった建物は、白い石造りで、ライムグリーンとペールピンクの看板の可愛らしいお店だった。店内は吹き抜けになっていて、外から見るよりも広々している。綺麗な色の小物が所狭しと飾られていて見ているだけで楽しい。
「……どうかな?」
彼の問い掛けに我に返った。そうでした。今日はお店の参考として来ていたのでした。『素敵です』としか言える気がしない。どうしよう。
「あの……ごめんなさい。私、あまり参考になることは言えないかも。けどとても素敵なお店で見ているだけで楽しいわ。なんだか子供の頃に憧れた宝石箱の中にいるみたい」
お役に立てないことを正直に言った。それでも彼は真面目な顔で返してくれた。
「なるほど、宝石箱か……。確かに女の子たちって子供の頃、母親の宝石箱に憧れるよね。商品の中には気になる物がある?」
それからしばらくの間、店内を廻りながら、思いつくままに飾られた商品の感想を話したりした。途中支配人のロブさんともご挨拶した。
けど、これでお役に立てたのかしら……?
「今日はありがとう。参考にさせてもらうね。お礼に気に入ったものを贈らせて?」
「ううん!私も楽しかったから。そんな必要ないわ」
お礼をされることはできていない。
「うーん……。なら、これはどうかな?」
彼が商品をひとつ手に取った。それは細かな細工の施された金の栞。領地の山に咲く白い花をモチーフにしていて、さっき見かけた時、気になっていたものだ。
「気に入らない?」
「……とっても素敵」
「よかった!包んでもらってくるね」
彼はパッと笑顔になり、奥の方へ入っていった。何故わかったのかしら……?思わず頬が熱くなる。
商品を眺めながら待っていると、彼が店奥から出てきた。小さな包みを渡される。お店の看板と同じ2色の細いリボンで飾られていた。
「ありがとう。大切に使うわ」
包装までも可愛らしいのに感動して顔を上げると、彼の笑顔を見て違和感を感じた。
「あの……、何かあったの?」
何だろう……。キラキラが半分くらいに減っている気がする。
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