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9.冬の訪れと兄の幸せ side A

この頁にお越しいただきありがとうございます。



 王都にも冬の気配がしてきた。今ごろ領地では雪が降り始めているかな……。高くなった空を見ながら冬山の景色を思い浮かべる。

 冬休みはどうしよう。兄は大学入学審査試験前で王都に残るだろうし、私だけのために雪道に馬車を走らせることに躊躇いもある。


 どうしようかと迷っていると、なんと領地から両親が王都のタウンハウスにやってきた。驚いたので思わず、馬車から降りてきた母に抱きついてしまった。隣で寂しそうにしている父に気づいて、慌てて父にも抱きついた。


「偶には驚ろかそうと思って貴女には内緒にしてもらったのよ。どう?驚いてくれた?」


 イタズラっ子のように笑うお母様。大好き。


「驚いたわ!でもとっても嬉しい!どうしたの?最近はずっと年越しは領地で過ごしてたのに……」


「今回はね。もうひとつ驚くことがあると思うわよ」


「何かしら?」


「ふふ。そうねぇ。すぐに分かるわ」


 両親とも楽しそうに笑ってるから、きっと素敵なことね。


 久しぶりの家族揃った夕食はとても楽しかった。サロンに移り食後のお茶をしていると、兄が少し緊張した様子で話しだした。なんだろう……?両親はにこにこ……じゃなくてニヤニヤしてる。


「次の休日、サザン伯爵家を招いての食事会の準備を無事に調えることが出来ました」


 サザン家と言えば、温暖な南に領地のある伝統ある伯爵家だ。兄と同じ学年のご令嬢は優秀で、太陽のような明るい雰囲気の方だ。

 ん?二家の食事会?まさかと思い兄の顔を見ると、初めて見る何とも言えない表情をしていた。


「おめでとうございます!お兄様!素敵な方ですよね」


「ありがとう。受け入れてもらえそうで嬉しいよ」


 大学進学が決定次第、婚約することになったそうだ。領地経営について研究する3年間、待っていてくれるらしい。そこまで話が進んでるのに蚊帳の外だったのは少しだけ寂しかったけど、兄が幸せそうだから許してあげよう。

 それからしばらくの間、兄の惚気話を引き出しながら、楽しい時間を過ごした。




 次の日、幸せな気持ちを抱えたまま、兄とふたり馬車に乗り、学園に向かった。


「婚約が正式に決まったら、お兄様と一緒に学園に来ることも無くなるのね。『婚約者』をお迎えに行かないといけないし」


 馬車を降りた時、兄を見上げて言った。兄はまた何とも言えない表情をして、私の額を指先で軽く弾いた後、手を振って離れていった。幸せが隠しきれていないですよ、お兄様。

 私も、いつか出会えるのかしら……?



 兄を見送ってから教室へ向かう途中、エントラスホールで彼に会った。朝はいつもより爽やかにきらきらしてる。お兄様の婚約の話題の影響なのか少しだけドギマギしてしまった。


「よかったら休みの日に、うちの店に来てくれない?若い年齢層向けだから、ぜひ意見を聞かせて欲しいんだ」


「次の休日は家の予定があるけど、その日以外なら喜んで」


 彼からのお誘いについ受けてしまったけど、あまり流行に詳しくは無いのよね。お役に立てるかな……?不安に感じたけど、彼の笑顔を見るとそれ以上は言えなかった。




 次の休日、我が家にサザン伯爵家の皆様を招いての両家の顔合わせの場は、とても和やかなものとなった。サザン家の方々は皆さん朗らかで、真面目な兄には彼女のような方が必要なのだろうと心から思った。


 恋愛結婚だけれど、特性が異なる領地を持つ者同士繋がりを得ることは、両家にとっても良縁となりそうだ。


 ますます我が家は安泰だ。素敵です、お兄様。



お読みいただきありがとうございました。

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