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(有名無実の)最強種族は暇潰しを求める!!  作者: フリータイム
始まりの章 女神領の決闘 編
3/50

第一話 領主カイザンと女神領〜創造種の少女〜


 エイメルとの'自称'死闘。あれから一ヶ月、新たに女神領領主にして最強種族の肩書きを手に入れたカイザンの名は謎の危険人物として全大陸に広まった。


 噂は原形を留めず、彼が支配する女神領内部ですら眉唾ものの情報が出回っている始末。中には、カイザンのことを帝王、[カイザー]なんて呼ぶ者たちが多い。

 各々が理想の最強を思い浮かべるからこそ、会った時の幻滅は計り知れない。


 このようなのに加え、あまりに突然の広まり故に、カイザンを危ない最強種族ーーーーー否、帝王と認識しているのが一般的な状態にある。一部領地では、カイザーの支配を恐れて大量に武器を仕入れたり、他領地との交流を盛んにし始めたなんて話もある。いずれ殺られる前に殺るなんて暴挙に出る可能性も少なからずあるのだ。


 カイザーはもはや思い描いたような勇者や英雄などではなく、全領地にとっての恐怖の象徴、急に現れて最強種族を倒した危険なカイザーとなった訳だ。


 そして、彼は自分の身の現状を地獄だと言う。しかしながら、彼が地獄だと言っているのは呼び名に関してではない。


 何が地獄か、そんなのは決まっている。


・・・ただただ暇なんだよ。領主生活、最強種族やんのが。


 転生者として、勇者として求めていた冒険がどこにもない領主生活。

 最強種族なんて、普通は長い戦いの果てにあるものだ。それをショートカットして、一撃で手に入って何が楽しいのか。

 何も楽しくない。ゲームスタート早々にチートを使った気分。緊迫感もワクワクも何もない。


 あれほど反省したのに、まとも調子に乗って決闘後にエイメルにいろいろ要求してこうなったのはカイザンが悪いが、今はそんなことはどうでもいい。もうそこには触れないでほしい。


・・・暇だ。暇なんだ。暇過ぎるんだ。


 女神領領主になって一ヶ月、最初は多少なり仕事もあったけど、もうそのほとんどの仕事は飽きたし、補佐の女神に投げ出した。


 仕事すればいいじゃん等の苦情意見は一切受け付けませんのでご了承ください。


 気付けば、カイザンの頭の中を[暇]の一文字だけが占領を続けていた。


・・・何をすれば満たされる?俺は何のために生きているんだ?っていうか、暇って何だ?これか。


 精神的異常は、やがて彼の日常となる。暇潰しとは彼にとって、平和な世界での一時の空腹ではない、戦争時の満たされない空腹感に近い。


 それが続いて早二週間、日常生活にすら支障をきたし始めた。

 例えば、食事だ。喉は通るけどお口に合わず、何故だかおかわりをせがむ毎日。

 睡眠も、夜は寝れても朝は起きれない、三度寝しちゃう。

 などなどの暇によって苦しめられる日々が続いた。


・・・どれもこれも暇なせいだ。決して、俺が領主の座を利用してぐーたらしてた訳じゃない。断じて否だ。


 それからだんだんと自我を失い始め、暇による狂気に突入しようとしていた。

 何とかしないと、このままでは、このままだ。


 そんな時、ふとある事を思い付いた。


・・・まさに、天才的な答えだな。


「それで出てきた答えが領地を巡る旅、ですか。.....カイザンさんの脳って、どうしてそんなに浅はかなんですかね」

「さらっと入ってきてさらっと心を読まないでもらえないかなっ」


 自身の心の中に浸って暇と言う原因菌を集中攻撃していたカイザンに背後から毒舌を吐いたのは、部屋の扉をそっと開けて入ってきた少女だった。


 名を、アミネス。[万物創成(クリエイト)]の特殊能力を持つ創造種である。現在、十四歳。歳通りの幼げな見た目だ。


 透き通る肌に、空色の瞳。瞳と同じ色をした髪は腰付近まで届き、この世界のベレー帽のような物を被っている。

 服装はシャレた高校の制服のようだ。主に水色と青色が主張されており、所々に黄色があしらわれている。

 上半身はあまり露出していないが、短めのスカートから健康的な脚が出ている。年相応に華奢な体だ。


 肩から普通サイズのカバンを掛け、中には創造種が特殊能力を使うのに必要な道具が入っているらしい。所謂、創造機器と呼ばれる物。ご存じない?


 アミネスはカイザンの見る限り、なかなかの美少女だ。

  立っているだけで人を魅了させる程の可愛さを備えたアミネス。曰く、アミネスは元女神領領主エイメルに救われた恩から秘書的立場として仕えていて、今は仕方なく新領主カイザンのお手伝いさんとなっている。


 そのためか、カイザンへの当たりは強いところが多々多々ある。多々しかない。


・・・アミネス。一ヶ月は一緒に居るけど、こいつの事あんまり分かってないんだよな。それに、恩が何かとか、詳しいことは全く聞いてないしー。まあ、俺から女の子の内情をズケズケすんのはなあ、普通にルール違反だと思う訳だし。


 アミネスのお手伝いさんとしてもろもろの能力は素晴らしいもの。秘書に任命したエイメルの判断は確かなものと言える。わ


 実際、カイザンの仕事のほとんどはアミネスの補佐があってのこと。途中から他の女神に投げ出してからは仕事振りを拝見していないが、実に完璧だ。.....特技である、心を読むことさえしなければの話だが。


 創造種は何故か()()の人の心を読むのが得意らしい。その一部にまさか自分が入るなんて、トラックに続き何て運の無さか。知ってしまった夜は月にひたすら嘆いたものだ。


 カイザンとて、読まれっぱなしを許してはいない。

 毎回読まれる度にやめろと言うが、本人は読んでいないと苦し紛れの否定を繰り返す毎日。証拠がないからどうすることもできない。だから、このままにしているだけのこと。


・・・というか、最強種族によくもあんな気安........気軽な態度で。俺としては感服だね。


 いっそのこと、気軽に話してかけていいよ週間にすれば、対応の悪名も消えてくれるだろうか?


 仮にも最強種族の立場に対して、ここまで気軽に話しかけられるのも逆に凄いと思う。

 可愛いし一応敬語だから許しているものの、もしゴリラだったら檻に閉じ込めてサーカスに売り飛ばしているところだ。


「あの、聞いてますか?カイザンさん」

「えっ?もちろん、全然全く聞いてなかったぜ」

「どうして聞いてた時の感じで言うんですか?途中まで紛らわしいんですけど」


 エイメルと対峙していた時と一切変わらない、一ヶ月領主をやっても相変わらずの気の抜けた態度と声音。アミネスが分かりやすくため息を吐く。目の前で落胆しないでほしい。って直接言いづらいから困る。


「まったく、これが本当に'あのウィル種'なんですかね?」

「そうなんだよ、俺ってウィル種でさ。最強種族やってんだよね」


 煽る方の煽てだが、カイザンは誇らしそうにする。


 エイメルの時にも心から心の中で思ったけど、やはり自分には人をムカつかせる才能があると改めて思う。


 それ以外の才能と言えば、やはり与えられた種族。ウィル種だ。特殊能力は実に素晴らしい。

 あれから調べたみたところ、ウィル種は既に大昔の戦争で絶滅していたらしい。となれば、領地があるはずもない。転送装置が壊れているのかよく分からなくなった。

 考えるのも面倒だ。そもそもカイザンはあまり考えるタイプではない。


・・・あの時は緊急だったからで、真剣に考えるのは自分らしくないと思うんだ。


 自分らしさ意識無駄に高い系男子のカイザンがそんな事を考えていると、


「自分らしい.....。そう言えば、カイザンさん。さっき、暇で自我が無くなりそうとか言ってましたけど、自我なら要らないくらい持ってるじゃないですか」

「お前どっから読んでたんだよ。つか、それって自尊心が無駄に高い的なの言ってんのか?」

「読むって、何のことですか?」


 目を逸らして誤魔化そうとする醜........可愛らしい抗いだ。アミネスだから見れるだけ。こちら側が言うのもおかしな話だが、もう少ししっかりと誤魔化してほしい。

 というか、誤魔化すならいっそのこと触れなければいいものなのに。


・・・つか、自分らしくないの一言でどうしてそこと繋いだんだよ。想像力が高いもんだなぁ。


 まあ、この想像力からのアイデア発想力に助けられてきたのは事実なのだが。


 心を読む関係のツッコミや返しに対し、都合が悪いとアミネスは下手な誤魔化しで話を逸らそうとしたり、変に否定する。それが図星を語っていると言うに。


 それがこの、アミネスという少女のらしさなのだろう。

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