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(有名無実の)最強種族は暇潰しを求める!!  作者: フリータイム
始まりの章 女神領の決闘 編
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プロローグ2 〜公称帝王の誕生〜公称帝王の誕生〜


 改めて自己紹介をすると、俺の名は、(いとま)・カイザン。


 前世では割と裕福な家庭で生まれたから、良い暮らしはできていたと思う。と言うのも、俺の実家である暇家は地域では名のある感じの名家だったからだ。

 って自慢げに俺は話すけど、その家系に生まれる全ての子孫が優秀な訳はなく、凡才として生まれてしまった俺と違って、幼きに秀才を発揮しまくった我が妹が次期当主へと任命された。


 当然、俺は実家でたくさんの人から腫れ物のような扱いを受け続けた。....だからだと思う。前世への悔いも死んだことへの絶望も何も感じていない。

 むしろ心のどこかでワクワクやドキドキとかの高揚感すら感じてる。


 前世の事など忘れ去り、異世界転生で心機一転、人生ってものを楽しもうと思った矢先.....にだよ。


 ほんとうに、どうしてこうなったんだ......ってことに関しては素直に言うと、まあ俺が悪い。

 とりま、順に説明していこうか。


 あの世に案内人ーーー閻魔様曰く、この異世界には数多の種族が存在しているらしく、当然と種族とやらを与えられ、その種族の特殊能力を授かった俺は、異世界への転送装置へと乗り込んだ。


 そして、目覚めた時、俺は何故か女神と思しき女性の前にいた。


 その女性の名は、エイメル・イリシウス。


 俺はエイメルと対峙した瞬間、女神っぽい見た目であることは一旦忘れて、己の異世界転生主人公の設定を考えた結果、エイメルを特殊能力の試し撃ち要員として想定。

 とりあえず煽ってみた。

 どうして煽ったかって、煽りたかったから。煽ってみたかった、マウント取ってみたかった。....何度でも言います、俺が悪いです。


 楽しさ混じりに煽りまくった結果、求めてなどいなかった情報を引き出すことに成功。


 そのエイメルという、女神っぽい女性は、女神種という種族の方でした。

 高貴聡明の神の名を冠する種族だ。それはもう、その瞬間に死亡フラグ確定した。心で発狂しました、ひえって。


 それとは知らずに煽り続けていた過去の自分に説教をしてやりたいと正直思った。今の自分は悪くないっていう暗示です、はい。



 とまあ、こんな感じの説明で分かってくれるかなぁ。....んじゃ、止まった時から本編に戻すとするか。


・・・あー、この点が三つ並んだのは心の声ってことでよろしくです....。



 時は戻り、それは女神種エイメルから差し出されたものの場面へと戻る。


「決闘です。どちらが優位にあるか、決闘にて証明致しましょう。正式な規則の下、貴方に確かな敗北と醜態たる屈辱の両方を贈らせていただきます。これを、最強種族から貴方への制裁とします」


 目の前の女神が、それはもう、大層怒った様子でそんな事を言ってくる。


 カイザンへと一直線に向けられた人差し指。そこから言葉として差し出されたのは、所謂、決闘の果たし状である。


 しばらくの沈黙を挟み、カイザンは両手を上げて提案した。


「とっ、とりあえず.......平和的な対話で解決しましょうか......お姉さん?」


 降参ポーズでもするように両手を上げ、多少引きつった笑みで笑いかける。


 一応気を遣ったお姉さん呼びをしてあげた呼び方も、疑問がついた途端に意味をなくし、エイメルはすっと顔を逸らして....


・・・えっ、無視....


 周りの者たちに目を向けた。

 カイザンの了承を待たず、女神ーーーエイメルは決闘の準備を勝手に始める。


「ハイゼル、審判を任せます」

「はっはい」


 二人の騒ぎに気付いて集まっていた観覧の女神たちの中、突然エイメルから名を呼ばれて審判の役を承ったハイゼルと言う女神。慌てた様子で示された場所に立つ。


・・・えっ、えっ、何っ!?


 心の中では収まりきらないカイザンの動揺に気付いたのか、エイメルがそれを説明してくれた。


「この女神領において、決闘に定められた規則の一つ、勝敗は審判の判断にて決定するのです」


 挑発して喧嘩を売ったのはカイザンの方だが、いきなり挑戦状を叩き付けてきてルールを強要させるなんて酷い女神だ、と自分を正当化させつつ、郷に入っては郷に従えを全うすることにした。


 これ以上、変に言い返したりするのは本当に危険そうだと判断。大人しく言うことを聞く。


・・・....審判か。不必要なもの気もするけど、正式な決闘とか言われたら、まぁ仕方ないのか。


 正直な所、自分の身分も定かではないこの状況での決闘の審判がエイメル側なのは文句しかないけれど、高貴な女神が忖度をするとは思えないと予想する。

 ちょっと不安ではあるが、ここはなるべく穏便に進めていこう。


「えっと、正式というのは、審判が必要とかだけですか?」

「急な敬語とは、ようやく身の程を弁えたようですね。....いえ、それだけではありません。女神領の決闘に関して言えば、賭け事が許されます。勝者は敗者に何かを求める権利が与えられるのです」

「....なるほど、賭け事ですか」


 ふと、黙り込むカイザン。

 賭け事と言われて、ちょっと勝った後のことを考え始めている。


 若干、口の口角が上がっちゃうカイザン。

 きっと何かを思いついたのだろう。


・・・....って、ちょっと待てよ、俺。


 冷静に考えてみるカイザン。

 ほんとになんの案もなく後のことを考えていた。


・・・普通に考えてみて、俺が女神を相手にどうしろってんだよ。....いや、そもそも今の俺って一般高校生じゃないのか。閻魔様に貰ったじゃんか、特殊能力的なやつ。


 一応、特殊能力に関しては説明を受けている。場面が揃えばかなり使えると思う効果だ。


 ここでその特殊能力とやらに賭けるのもアリな話だが、相手は何を言おうと考えようと、絶対に強そうな女神種であることは事実。

 魔法特化であることが脅威なのはもちろん、、双翼が生えている時点で[つばさでうつ]みたいな技を使ってくる可能性もある。


 脳内での考察が異常に捗り、現実空間を他所にしていると、


「では、早々に始めるとしましょうか」


 未だに解決策のまとまらないまま、決闘が勝手に始まろうとしていた。....否、既に始まったのだろう。


 エイメルが言った一言は、一方的にではあるが完全に決闘の開始を告げたものだ。それとともに、とある通知でもある。


 開始宣言を受けて考え込んだまま伏せていた顔を焦りつつ上げたカイザンが見たのは、棒立ちのエイメルだった。


・・・....まさか、譲ってるのか?先制を俺に。


 女神種ともあろう者が、開始を告げても尚、構えらしき構えをしていない。


 決闘を申し込んで以降、一切の感情を表情に出さないエイメル。そこからカイザンが読み取ったものは、エイメルの余裕さに他ならない。


 '貴様の一撃を、真正面から耐えてやる'と顔面で言っているのだ。攻撃が一切効かず、後悔に呑まれるカイザンを見下したいがため。


 推測でしかない自身の考えに、カイザンは無意識に頬を緩めて完全ににやける。


・・・そうか、そうなるか、そうなっちゃうよな。....あれ?さっきまでの俺って結構優秀だった説あるぞ。


 防御も攻撃の構えもなく、ただ突っ立っているも同然のエイメルに向かって、カイザンはすっと手を伸ばす。その手のひらを開いて。


・・・不意打ちで変に魔法放たれたりしたら負け確だったけど、先制さえ勝ち取れたならワンチャン可能性あるんじゃねぇかっ!?


 閻魔様から授かった種族、その特殊能力を解放する時が来た。


「んじゃ、こっちから行かせてもらうぞっ」


 不器用な敬語を取っ払い、大きな声で改めて気合いを入れ直す。強く言い切ったそのまま、広げた手のひらに意識を集中させる。


・・・正直なところ、特殊能力に関しては教えてもらったが、魔力とかそういうのの扱いはさっぱりだ。だけど、何となく念じときゃ大丈夫だろ。


 眉間にシワができるくらい思いつく限りの念を送るカイザン。すると、体内の血の流れに沿って他の要素もそこに加わって手のひらへと集まっていく。...それこそが魔力だ。


 直後、手のひらが激しく発光した。

 それは、無色の魔力によって生成された特質魔法による特有の現象。意識の集中で魔力が蓄積された結果だ。


 初めてて加減ができていないのか、予想外のレベルで直視を拒む光が周囲一帯を照らす。


 この特質魔法で全てが決まる。その圧倒的な存在感を前にそれを理解したのは、カイザンだけじゃない。


「それは、その光は特質魔法。...効果までは分からない」


 エイメルは発光の特徴から魔法の系統を見破るも、光の持つ意図、何を現すかを見極めることは不可能。

 特質魔法とは、使用者の魔力によって細かく変異を繰り返すモノ。他者が間接的に内容を調べることは無理解の世界だと閻魔様から聞いた。


 ならば今、エイメルができることは、起きること全てへの対処。

 カイザンが無意識に見せる勝利の笑みから何かを感じたのか、エイメルが余裕さの感情を捨て去り、行動に出る。


 とっさに身構え、両の手のひらを合わせて中心に魔力を注ぎ込む。

 瞬間的な紫の輝光。そこから造り出されるのは、透き通る紫電の魔力剣。それを水平にして、切っ先を向けたまま正眼の構えになった。


 しかし、その行動は何の意味も持たない。エイメルの構えは所詮、防御の後にある反撃に徹するものだ。

 もう遅い、それは既に始まっているのだから。


「女神種、エイメル.....」


 唐突に自分の名と種族名を言われ、反射的に剣を強く握る。疑問による対応、戦闘において疑念の感情は危機であり、早急に排除すべき点だ。

 故に、敵意を込めて問う。


「今のは一体、何だと言うのですかっ!?」


 問いに対する返しは、カイザンの変な笑みだ。

 それだけじゃない。溜められた魔力が特殊な効果を持つ魔法としてエイメルに牙を剥く。


 の前に、一つだけ伝えておいてあげよう。

 

「試し打ちの相手みたいになるけど、俺の英雄譚にはしっかり良い戦い風に載せといてやるから安心しといてくれよな、最強種族さん。....んじゃまあ、[データ改ざん]」


 言葉に反応、あるいは共鳴するように光が光量を増し、一瞬だけ強く輝いて消滅した。すると間も無くして、エイメルの足下から消えたはずの光が出現。瞬きの間に全身を包み込んだ。


 この状況からの対処は無為、一度包まれれば最後、抗う術は存在しないから。


 数秒後、光が徐々に薄れていき、何事もなかったかのようにエイメルが姿を現す。

 一見して無害。自分の事は自分が一番分かっている。外見だけじゃ分かるはずがない。あの魔法は内面を、エイメルの肉体自体の構成、種の根源たるウィルスを歪めるように働いたからだ。


 この異世界の神話に繋がる、ウィルスと呼ばれるもの。それは、神がただの人間に与え、種族を作ったとされる情報体を示す。


・・・そして俺は、ウィル種ってやつらしいからな。


 自身の体に異変を感じ、殺意と深い疑念の目でカイザンを睨み付けたエイメル。怒り、それ以上の困惑。

 それに対して、カイザンは笑いかける。


 その笑みで怒りを抑えきれなくなったエイメルが魔剣で斬りかかろうとする。が、そこに魔剣は存在していない。


 事態に動揺するエイメルを他所に、カイザンは一人で準備体操を始めて軽く体をほぐすと、今まで以上に楽しそうな顔をして空いた手を強く握り締める。


 そのまま真正面、エイメルに向かって走り出す。

 一般的な高校生平均と言えるその拳は、ほぼ全てのウィルス情報(ステータス)をほぼゼロの状態にされたエイメルに豪腕として放たれる。


 この決闘の最後がどうなったか、細かく説明する必要は特にないだろう。


 物語の始まりにしては酷く呆気なく、光だけがただ目立っただけの地味な魔法で二人の決闘は終幕したのだ。


 結果、カイザンは女神領領主エイメル・イリシウスを倒したことにより、最強種族の異名を得るとともに女神領[イリシウス]の二代目の領主となったのである...。


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