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インフィニティ・ブルー  作者: 仲仁へび
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第7話 好き放題な朝



 クロードの家 私室


 疲れを残しつつ目覚めたのは、自分の家の部屋の中。


 家の中に両親はおらず、今すんでいるのは一人だけだ。


 クロードの両親は良く分からない人達で、どんな職業のなんの仕事をこなしているのか、あちこちを駆け回っている。


 たまに珍しい動物の皮とか角とか持ってくるから、普通の仕事ではないと思っているのだが、どうなのだろうか。


 たまにしか家にかえってこないし、家族で話す時間もないため、詳しく聞けたことはない。


 窓を見ると、朝日が目にまぶしい。


 時刻は7時くらい。


 目覚めた動物や人がそろそろ動き出す頃合いだろう。


 事実、青色の鳥が窓枠にとまって、囀っていた。


 この辺りに生息するアクアバードだ。


 澄んだ水を好む鳥で自然豊かな場所にしか生息しない。


 クロードの家は町外れにあるため、こういった鳥をよく見かける。


 欠伸を噛み締めながら部屋を見回す。


 朝、出勤した通りの様子で、特に変わった事はない。

 視線を向けた壁の時計も、予想した通りの時間を刻んでいる。


 ねぼけたまま、とりあえず郵便ポストに向かって新聞を回収、リビングで詳しく目を通す。


 コンサート会場の事件は翌日の新聞に載っていた。

 昨夜からそうではないかと分かっていたが、負傷者多数、死亡者多数の大惨事だった様だ。


 犯人は未だ逮捕ならず。

 手がかりや、足取りを捜査中で、逃亡の可能性を見て規制線は張られるようだった。


 昨日の情報を整理し終わる頃には、寝ぼけた頭がすっきりしてきた。


 起動したなら、後は手早く支度を済ませていく。

 必要な物は昨日の内に揃えておいたので、迷う事は無い。


 あの後僕達は、治安部隊に簡単な事情聴取を受けたのだが、他にも対処しなければならない事が山ほどあるらしい彼らは一つの事に時間をかけてられなかったらしい。

 また後日、という事でイリア共々家へと帰してもらったのだ。


 そんな中でかすり傷一つも追わなかった知り合いは、本当に運が良かったのだろう。

 彼女は本当に昔から、運だけは良かったのだ。

 それについては考えてみれば当然の理由があるのが、今はその事については触れないでおく。


「……川に落ちて流された時も、たまたま近くに水泳選手が通りかかったんだし、僕にもちょっと、その運を分けて欲しいくらいだよ」

「へっへーん、良いでしょー。でも、あげないよ」


 独り言のつもりで言ったのに、なぜか返事が返って来る。

 クロードが声がした方へと視線を向ければ、案の定そこには今しがた口にしたばかりの人間の姿があった。


「イリア……」

「はろー。クロード。どんな様子か見に来てあげたよ」

「ここ、僕の部屋」

「うん、そうだね。ほら、早く早く、着替えちゃってよ」


 イリアは部屋主の許可なく無断浸入してきた事を、悪びれるまでもなくこちらを急かしてくる。


 本日は彼女と共にとある用事をこなさなければならないので、現地集合するよりはと家にやってきたのだろう。


 そのイリアは慣れた様子で慣れた風に、クロードの部屋から衣服や鞄やらを集めてきて、こっちに差し出してくる。


 そういえばまだ寝間着のままだった。

 イリア相手に羞恥心を覚えるような初々しい関係ではないけど、こういう事は気にした方が良いだろう。


「ほら、はやくはやく。遅れちゃうよ」


 実際にはそんなものないが、急かすイリアのお尻には、元気のいい犬のしっぽがくっついているように思えた。


「まったく、年頃の女の子なんだから、そういうのちょっとは気を使ったらどうなの?」

「小さい事は気にしないの! あたしとクロードの仲でしょ?」

「イリア、親しき中にも礼儀ありって言葉知ってる?」

「え? 知ってるよ? それがどうかしたの?」


 きょとんとした顔でこちらに尋ね返してくる、無断侵入者が一人。

 クロードとしては小さい事でも細かい事でも何でもない事でもないのだが、そんな心中は伝わらなかった様だ。


(駄目だこいつ)


 目の前には、早く早くと散歩を待ちわびる犬のような少女が一人。

 イリアの難易度が高すぎる。

 正論で言い負かす事を諦めるしかなかった。


 だがそもそも、こんな朝の光景は今に始まった事ではない。

 こちらが同じような事を何度も何度も繰り返しているのにも関わらず、一向に態度を改めようとしないのだから今さら何か言ったところで、無駄なのかもしれない。


 しかもなんかキッチンからは、何故か出来立ての朝食の匂いが漂ってきてるし……。


(僕の家族がいないからって好き放題やってくれちゃって……、もう全般的に諦めた方が良いのかな)



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