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インフィニティ・ブルー  作者: 仲仁へび


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第45話 一か月後



 飛空船内

 不可能だと思っていた竜退治に参加する事になったのは、意思表明をしてそれから一か月の事だった。


 意思が固まったのなら、クロードに迷う事は無い。

 出来る限りイリアをサポートしてやるために、黙々と準備を整えるのみだ。


 そうして、一か月の時間やる劇事をひたすらこなして行けば、日々の経過はあっという間。

 気が付いた時には、作戦の日となっていた。





 飛空船の上。

 普通の移動時の飛空状態ではなく、速度を落とした低速の船。

 青々とした空が頭上いっぱいに広がるその場所は、風が通り抜ける心地の良い場所だった。


 その中で、その場に集まった者達の姿を見て、イリアが改めて歓声を上げていた。


「船が、たくさんいるね!」


 わーわー言いながら先程からずっとこの状態だ。

 祭りか何かと勘違いしているのではないかというはしゃぎっぷりだった。

 今からそんなにテンション上げていて、後でバテてしまわないか心配になるくらいだ。


「そりゃあ、いるでしょ。なんたって世界をこんな風にした竜をこれから退治しようって言うんだから」

「ね! 今日は絶対勝とうね」

「まあ、勝たないと死んじゃうからね」

「もう、クロードは素直じゃないなあ」

「仕方ないでしょ、イリアがそんななんだから」


 いつも通りの状態のイリアは、近くで立つユーフォリアに声をかける。彼女は先程からずっと、同じ空に浮かんでいる船を眺めているようだった。


「ユーフォちゃんは、大丈夫? 戦いとか平気?」

「大丈夫……」


 嘘だ。

 内容はそんなものだったが、ユーフォリアの状態は正反対だ。

 青い顔だし、表情も硬い。


 これを見て、大丈夫無問題だと判断する人は、嘘つき以外おそらくいないだろう。


 無理もない。

 今回は彼女にとって、初めてのちゃんとした実践。


 しかも相手は、世界を滅ぼしかけた事もある相手、竜なのだ。

 緊張しない方がおかしいだろう。


 ドラゴニクスの時は、溜まっていた疲労の影響で逃走していたらしいし、地上に出た時の治安部隊との戦闘はほんの少し手を出した程度だった。彼女が明確な討伐意識を持って敵と戦うのは、これが最初となる。


 イリアがそんなユーフォリアを見て、異変を指摘する。


「ユーフォちゃん。肩、震えてるよ」

「あ……」


 自分でも気づいていなかったそれを指摘されたユーフォリアが何かを言いかけるが、それよりも早くイリアが動いた。


 自分より一回り小さい少女の小柄な体を抱きしめる。


「こんな事しかしてあげられなくてごめんね。でも私達はユーフォちゃんと一緒にいるから、一緒に戦うから」

「イリア……」


 目を閉じて安心したように強張っていた体から力を抜くユーフォリア。

 その肩から、徐々に震えが消えていく。


「もう大丈夫」

「ほんとう? また大変だったら、いつでも私の胸をどーんと貸しちゃうから、遠慮なく言ってね」

「うん、ありがとう」


 ぎこちないながらも表情に笑みの色を付け足したユーフォリアは、決意を固める様にこちらに言葉を告げる。


「私、戦う。イリア達を守りたい。正直言うと、本当は戦いなんて嫌だって思ってた。でも、ちょっと怖いけど、イリア達を守りたい。皆と一緒に、頑張りたいから」

「そっかぁ」


 強い口調で最後の言葉を言い切ったユーフォリア。

 彼女の意思は固そうだ。


 それだけイリアの事が気に入ったのだろう。

 助けたのがクロード一人だけなら、こんな風に彼女はここにはいないはずだ。


「イリアはユーフォリアに好かれてるよね」

「えへへ、仲良しだからね! でも、それを言うならクロードだってそうだよ」

「僕が?」


 長い時間傍に寄り添っていたイリアと違って、クロードがユーフォリアにしてやったことなんて数得るくらいの事しかないだろう。そのはずだ。


 だからかけられた言葉を意外に思って、イリアの言葉に間抜けな反応をしてしまう。


「い、いや、それは無いだろ。さすがに。だって僕別に……、イリアみたいにお人よし馬鹿じゃないし」

「えー! お人よし馬鹿って何? あたしそんな風にクロードに思われてたの?」


 口を滑らせた。

 イリアを怒らせて口喧嘩になってしまうかもと思っていたのだが、話の中心人物であったユーフォリアが助け船を出してくれた。


「イリアは凄く良い人だと思う。お人よしって言うの……は、よく分からないけど、大体意味は同じって聞いたから」

「ユーフォちゃんまでーっ」

「あとね。クロードも良い人だと思う」


 いや、助け船なんかじゃなかった。

 こっちに火の粉が飛んできた。


「だって、ずっと後ろで見守っててくれるから。イリアがお母さんみたいなら、クロードはお父さんみたいって思う」

「あー、なるほど。お父さんかぁ。ぴったしだよ、ユーフォちゃん。クロードってお父さんだよね!」


 イリアが「ね?」と水を向けてくるが、さすがに首を縦に振る気にはなれなかった。

 気恥ずかしいやら照れくさいやら、真っすぐな意見なだけに変にごまかすの気が引けて反応に困る。


 そんな空気を天が読んでくれたのか知らないが、正しい形で助け船が寄越される。

 アリィが外に出ていたクロード達に声をかけてきたのだ。


「ここにいたの貴方達、そろそろ中に入ってきて。作戦の最終確認しなくちゃいけないわ」


 気が付かないうちに時間が迫っていた様だ。

 三人で慌てて、船の中へと入っていく。


 もう数時間もすれば、竜退治の始まりだ。

 それまでにできる事はもう全てやり終えている。


 ここにきて出来る事と言ったら、あとは入念な確認と、腹を括るだけだろう。


「皆で必ず勝とうね!」

「当たり前だろ」

「うん」


 三人で円陣を組んだ後、顔を見合わせた。

 決意も準備も、十分だった。



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