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インフィニティ・ブルー  作者: 仲仁へび


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第37話 有名人



 そんな中、小さな少女が小さな花を手にして近寄って来た。

 目当ての人物はアリィだったようだ。


 少女は、目の前の女性へ己が持っていたそれを差し出す。


「アリィおねえちゃん、かわいいお花とれたの。もらってくれる?」

「くれるの? ありがとう。家に飾らせて……は、ちょっと遠いからせっかくのお花が萎れてしまうわね。これから寄る集会所に飾らせて貰おうかしら」

「うん、ありがとうお姉ちゃん」


 声をかけて来た少女はニコッと笑って満足そうにどこかへと駆けていく。


「アリィさんも、ジンさんも大人気だね。あんな小っちゃい子も顔を知ってるんだ」


 感心したように言うイリアに、アリィは首を振って答える。


「大した事じゃないわ。私達は、彼女達が本当に望んでいる事をまだしたあげられていないもの」

「そうかなぁ、よく分からないけど、アリィさんが笑顔でいてくれるだけで、皆嬉しいって思ってそうだけど。大好きな人がちゃんとそこにいてくれるだけで、あたしは結構嬉しいんだけどな」

「そう? そんな事考えた事がなかったわ。お世辞でも嬉しい。ありがとう」


 アリィは照れたように幽かに頬を済めて、視線をそらしてしまった。


(でたよ。イリアの人たらし。そうやって見境なく出会った人間を誑し込んでくんだから……)


 イリアの言葉に照れるアリィを見つめながら、友人の将来に良くないストーカーでも出没しないだろうかと若干の危惧を抱いていた時……。


 クロードの思考を中断するかのように甲高い警報が町中に鳴り響いた。


 その音を聞いた町の中の住人たちが、口々に何かを言い合ってその場を離れていく。

 平和だった景色が、一瞬で変わってしまった。


 何か、起きているのだ。


「わ、大きな音。びっくりしたぁ」

「すごく煩そう……」


 クロードの横では、イリアとユーフォリアが耳に手を勝てて、思わずと言った風に首を縮めた体勢をとる。


 アリィがそれについて教えてくれる。警報の音が煩いので大声で。


「町全体に聞こえるようにしてるからよね」


 クロードは音に負けないように声を張り上げる。


「これは、何の警報ですか」

「竜種が近くに来てるという知らせよ」


 言われて思わず空を仰いでしまうが、それらしい影は見えない。


「距離はまだ遠いけれど、何もせずにあと数分もじっといたら、町に辿り着いてしまうでしょうね。そうさせないために、私達討伐隊がいるの」

「アリィさん達も、討伐隊だったんですか?」

「使える戦力を遊ばせておく余裕は……、少しはあるけど、基本的にはないの」


 言い切る寸前で行方がぶれた。

 取りあえず、ギリギリ一歩手前という事は分かった。


 だから、一人でも多くの戦力が欲しくて昨日の歓迎会があんな風に大げさになった……とは、考えすぎだろうか。


 とにかく、とアリィ達は走り出す。

 こちらに付いてくるように言いながら。


 ジンが楽しみにしてろとでも言わんばかりの顔で、話しかけて来た。


「お主等にはちょうど良い所だった。どうせなら、実際の現場を見てもらった方が早い」

「そうね、いつもは割とのんびりしてて、暇だし。その代わり忙しい時は忙しいから」

「ついてくるといい。クロード殿達に、我らの力を見せて差し上げよう」


 せかされるようにして、人の姿の無くなった町を駆けていく。


「それに、その子に会わせたい子もいるしね」


 そしてアリィは、ユーフォリアを見て意味深そうにした。


「私に?」

「後のお楽しみ」


 そういえば、全然関係ない事なのだが、彼等とフィリアとの出会いとかの話をまだ聞いていない。


(別にどうしても知りたいと言うわけじゃないけど、イリアがふと思い出して我が儘言ってくるのも困るし、後で聞いておくとするか)


 普段人の姿がいて当たり前の光景に、人がいなくなるというのはかなり不気味だった。


 その中で、これでもかというくらいに大音量で鳴り響く警報音。

 平穏に見えても、この地上に住む人達は安全ではないという事を改めて思い知らされた。


 海中に逃げたクロード達よりも、立ち向かいながら自分達の日常を守ろうとしている地上の彼らの方が、ずっと厳しい生活を送っているのだろう。



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