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インフィニティ・ブルー  作者: 仲仁へび


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第20話 言葉もでない状況



 ブルーオーシャン 人工洞窟

 懐かしい過去を振り返りながら辿り着いた秘密基地は、海水浴場にある奥まった場所。入り組んだ洞窟の奥だった。


 申し訳程度の明りで洞窟の壁から彼女等を照らしているのは、発光する黄緑色のコケ類ミズヒカリコケだ。


 薄暗いそこに、二つの人影がある。

 クロードは奥にいた人物の、良く知った方にまず声をかける。


「探したよ、イリア」

「あっ!」


 特に怪我をしているわけでもなさそうだ。

 彼女は笑顔で、そこでユーフォリアと楽しく談笑していた様だった。


 まったくこちらの気も知らずに、呑気にお喋りにいそしんでいたようだ。

 

 だが、無事だった事にはとりあえず一安心。

 この数日の間に何度、こちらの心臓をヒヤヒヤさせるつもりなのだろうか。

 同じような事は数えきれないほど今までもあったが、慣れる気がしない。


「クロード! やっぱり覚えてたんだ!」

「そりゃあね、そう簡単に忘れられるわけないでしょ。あの頃は、毎日のようにイリアに引っ張られてここに来てたんだから」


 ちょっと、忘れかけていた事は棚に上げて内緒にした。


 けれどイリアは小首を傾げて……。


「その割には、ちょっと遅かったような」

「知り合いと話してたんだよ」


 妙な所で、勘の鋭さを働かせるイリアを騙しきる自信はあるけれど、そんな不毛な言い合いに時間をかけているられる程に、クロードの頭は呑気ではない。


「それより、何があったの?」

「あ、それがね……」


 クロードの問いに答えようとしたイリアの顔が一瞬だけ曇る。


「クロード、大丈夫だった?」

「何が?」


 心配そうにこちらを見つめながら。

 怪我などをしていない事は、一目見て分かったはずだろうに。

 どんな時でもわりと笑顔を絶やさないでいるイリアが、そんな風にするなんて珍しい。


 尋ね返せば彼女は口ごもった。


「……誰かの視線を感じたり、追いかけられたりしなかったよね?」

「別に何もなかったけど、一体どうしたの? というか、何でこんな所に?」

「それは……」


 イリアとユーフォリアは互いに視線を交わす。

 それは事情を話して良いか迷うというよりは、どこまで話して良いのか考える様な表情。

 目の前でイリアはユーフォリアの様子を伺っているようだった。


 つまり、何かが起きたのだろうけど、その何かはユーフォリアに関する事柄なのだろう。


 クロードはため息をついて先を促す。


「はぁ、言ってみなって、というかもうバレバレだから。顔に出てるよ」

「えー。やっぱり? クロードには隠し事できないなあ」

「イリアが単純すぎるんだよ」


 思った事がすぐ顔に出るタイプだし、やましい事とか進んでやろうとはしないタイプだから。

 良く知っていなくとも、今のは誰だって分かるだろう。


 そうでなくともクロードには、イリアに何かがあれなすぐにその異変を察知する自信があった。

 自慢じゃないが、彼女と一緒に過ごしてきた時間の長さは他の誰にも負ける気がしない。


 イリアの顔色を読む事にかけてはクロードの右に出る者はいないだろう。


「えっとね、フィリアさんの家から飛び出したユーフォちゃんを追いかけてって、そのすぐ後の事なんだけど……」


 観念したようにゆっくりと話しだすイリア。


 彼女から聞き出した話はこうだった。


 彼女はクロードが知っている通り、一足はやく家を出た。

 そして町を駆けていき、すぐに逃げたユーフォリアを見つける事が出来たのだが、そこで問題が発生したらしい。

 治安部隊の人間達がやってきて、強引にユーフォリアをその場から連れて行こうとしたらしい。


 何でも、昨晩にあった事件の事情聴取がしたいのだとか。


「……と、いう事なの」

「うん。分かった、続けて」


 特に聞く限りは話に不自然な所はない。


 ここまでは、だが……。


 ユーフォリアが昨晩、コンサート会場にいたのは事実だし、その場にいたというのなら事件について事情聴取しなければならないというのは、理解できない話ではなかった。


 普通ならそこは、イリアは重要人物であるユーフォリアを治安部隊の人間へ、大人しく引き渡すところなのだろう。


 けれど、違った。


 やってきた彼らを見て、尋常ではない怯え方をするユーフォリア。

 イリアは彼女を守るために、ここまで逃げてきたというのだ。

 なんというか、とてもイリアだった。


「はぁ、僕……呆れて言葉も出ないよ」


 ユーフォリアが悪人だとは微塵も考えてないのだろう。

 だから、迷いなくそんな行動がとれる。


「言葉なら出てるじゃん」

「そういう意味じゃなくて」


 ユーフォリアの詳しい事情とか、治安部隊の人の都合とかあんまり考えていない様子のイリアに呆れれると同時に、仕方がないとも思ってしまう。


(イリアらしいといえばイリアらしいけどね)


 そこで、大人しく引き渡すなんてイリアじゃないって、知ってるけれど。


「もうちょっと、何とかならなかったの?」


 空気より重い溜息を、僕はあと何回吐けば良いんだろう。

 きっと、イリアと付き合い続ける限りやめる事はないんだろうな。


(そこでうっかり見切り発車するんじゃなくて、色々する事とか事前にやっとけなかったかな。まあ、無理だよね、イリアだし)


 逃げるにしても、引き渡さないにしても、その前に治安部隊の人間と話をして情報を聞き出すとか、逆にカマをかけてみるとか観察するとか、やれる事はいくらでもあっただろうに。


 まあ、それもこれも全部分かってて、付き合ってはいるんだけれども。



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