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インフィニティ・ブルー  作者: 仲仁へび


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第18話 目の前の問題



 今はまず目の前の問題をどうにかした方が良い。


「とにかく、ここで、フィリアが帰ってから考えよう。ユーフォリアの事とか、相談しなくちゃいけないしさ」

「うん、放っておけないもんね」

「もう首を突っ込む事確定なんだ」

「じゃあ、クロードは放っておくの?」

「まさか。イリアがやるなら僕もやるよ」

「だよね! だってクロードは私の相棒だもん!」


 クロードしては相棒という程の存在感を放っている認識はなかったが。

 彼女の言葉に首を横に振る事は無い。


 とりあえず家主がいないのなら、保護した少女の解決も事件の真相究明を急いでも仕方がない。

 フィリアの突発的な用事が終わるまで、気長に待機しているしかないだろう。


 クロード達は、取り立てて絵画の趣味を持っているわけでも、ミリタリー関連に興味があるわけでもないのだから。


 時間を潰す意味でもユーフォリアを労わる意味でも、何か口にできる物を見繕おうと思っていたのだが……。

 食料を求めて、ダイニングへ足を運ぼうとした時、それに気が付いた。


「黒い人たちは、嫌……」


 ユーフォリアが怯えてクロード達から距離を取ろうとしている事に。

 その視線は、イリアが見ていた本……ではなく、その本が並んでいるテーブルの上に注がれている。


「ユーフォちゃん?」


 問いかけるイリアの言葉に、彼女は答えない。

 その顔は蒼白で、血の気が通っていないようだった。


 彼女はなおも距離を取っていく。

 クロード達が呼びかけるのだがその声は聞こえていないらしい。


「連れてかないで、あそこは嫌……」


 うわ言の様に、ただその言葉を繰り返すだけ。

 そして、ユーフォリアは大きく首を振って、彼女にしか分からない何かを拒絶するように家から出て行こうとする。


「行きたくないっ!」

「待って!」


 イリアが引き留めようとするが一歩遅かった。

 ユーフォリアは家を飛び出して行ってしまう。


「クロード!」

「分かってる。先に行って」


 イリアを促して先へ負わせてから、クロードは家の中を移動。

 直前にユーフォリアが見つめていたものを見る。


「軍の資料?」


 それは、フィリアが以前勤めていた治安部隊にあった資料だった。

 ユーフォリアは何故かこれを見ていて怯えていた。


 記憶の引き出しをこじあけるようにして、最初に会った時の様子を思い出す。

 空から墜落してくる前も、確かそんな感じだった。

 彼女は何かに怯えてて、周囲に視線を向けていた。


 そして、その前に起こった事といえば。


(会場の爆発……)


 その事件を起こしたのは、治安部隊の機械らしい。


「……」


 もう一度部屋の中を見まわしてみる。


 やっと。違和感の正体に気が付いた。


 彼女が趣味で飾っていた、もの。

 趣味で飾っていた、銃器類のいくつかがなくなっている。

 どこかへ閉まったのか、盗られたのか、もしくは必要となったのか。

 床に散らばっている彩色道具は散らかっているのではなく、ぶちまけたから散らかっている様に見えているのだとしたら……?


 推測材料はいくつかあるが、ここでは答えが出せなかった。


 優先事項は他にある。


 後で怒られるだろうが、やむなしと考えて散らばていたん物品をかきわけ、それを引き出して、素早く筆記具を走らせる。

 余計な事は書かず「知人を探してくる」とだけメモを用意、テーブルの上に置いといた。


 後は……。

 いくら急の用事が出来たからと言って、知人の家を鍵も閉めずに飛出すわけにはいかない。


 こういう時に感情的になれない事に、思う所がないでもないが、それについて悩む段階はとっくの昔に卒業した。


 クロードはクロードにしかできない事をこなすのみだ。


 無人の家を出て、手早く戸締りをした後にイリア達を探しに町中を走った。





 人通りの多い通り


 どこかの道を無我夢中で走る私は、今までの事を思い出す。


 それは思い起こそうとして出てくるものではなく、強制的に引きずり出されたものだちだ。


 だから、脈絡がなく、時系列もばらばらだった。


 生まれた直後の、大人達の無機質な視線。


 たくさんの機会や実験道具。


 怖い生き物たちとの戦い。


 記憶の多くは苦痛や恐怖に塗りつぶされたものだったが、その仲にもあたたかなものはあった。


 たった数日だけだったが、私にやさしくしてくれる人がいた。


 どこか、イリアと似た顔つきの女の人だ。


 白い服をきたその人は、私のことを可哀想だといって、親切にしてくれた。


 こっそり美味しい食べ物をたべさせてくれたり、面白い玩具で遊ばせてくれたりもした。


 だけど、ある日突然、武器を持った人たちがやってきて、その人をつれていってしまったのだ。


 それからはずっと、辛い事や怖い事ばかりの日々だった。


 そんな日々が嫌で逃げたのに、また逆もどりするのは嫌だった。


 どこか遠くに逃げて、あの白い服の女の人みたいに優しい人たちとずっと一緒にいたかった。


 辛い事や怖い事のないところで、戦いのない生活をしたかった。


 あの女の人は「生まれた環境を選べないのが可哀そう」だと私の方を見ながら何度かいっていた。


 私がその意味を聞いたら、言わなくなってしまったけど、今ならわかる。


 私はイリアや他の人たちに用に生まれたかった。


 自分で楽しい事や幸せな事がたくさんある環境に生まれたかった。


 どうして、自分の生まれた環境を、選べなかったのだろう。



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