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小江戸の春  作者: 四色美美
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先輩との絆

先輩との絆が徐々に深まっていきます。

 川越には沢山の神社仏閣がある。

日枝神社や氷川神社、熊野神社などの全国区的な物も多い。



そんな中から先輩が選んだのは三芳神社だった。



平安時代の創建と伝えられる古杜だ。

1624寛永元年に川越城の鎮守として再建された。童歌の《とおりゃんせ》は、この神社の参道を歌ったものだそうだ。





 でもその前にもう一度、出来る限り多くの写真を撮ることになった。

やはり先日の中途半端なロケーションが尾を引いていたのだ。



『これでは提出出来ないな』

あの日、企画書を製作しながら先輩は呟いた。

私もそれを認めざるを得なかった。



菓子屋横丁の帰り道何も考えずにいた。

こんなことでは真のジャーナリストになれっこないと解っていた。



ジャーナリストの仕事とは?

ニュースや話題を追いながら、それらの解説や背景などを見通し記事にしたりすることだ。



簡単にジャーナリストと言っても多種多様だ。

スポーツに芸能、経済や社会など上げたらキリがない。

だから多方面のジャーナリストが要求されるのだ。



私にそんな力がないことは解っている。

それでも、多岐の文化を発信したいのだ。





 今やネットで何でも調べられる時代だ。

川越も新しい魅力を発掘しようと画像共有サービスを始めようとしているとの一報が入った。

それは今からなんか一ヶ月後の予定だそうだ。



小江戸川越の観光協会が中心となって、風景やグルメなどを提供してもらう訳だ。



そんな公式なキャンペーンに勝てる訳がない。

だから焦っていたのだ。



私達は又本川越駅横にあるスクランブル交差点で待ち合わせすることにして解散した。





 待ち合わせしたのは又本川越駅前にあるスクランブル交差点。

時間厳守。

だから川越市駅からの道を急いでいた。

でも、先輩はそんな私を追い掛けていたのだ。



実は先輩は早く着きすぎて、私を川越市駅まで迎えに来てくれていたのだ。

私はそれに気付かずに本川越駅前を目指してしまったのだった。



「まったく……」

先輩が後ろから声を掛けて来るまで私は知らずにいたのだ。



(えっ!? 何か悪いことした?)

私は首を傾げた。



「川越市の駅まで迎えに行ったんだぞ。それなのにお前さんときたら……」

その言葉に何も反論出来ない。

その行為に私への思い遣りが溢れていると感じたからだった。



「良し、又熊野神社からだ。今日は癒しのスポットとしても紹介するからな」



「はい。言われた通りに厚い靴下履いて来ました」



「よろしい。ではあの石の足つぼへ行こうか?」

先輩の言い付けだから仕方ないけど、本当は怖い。

だってあの石は見るからに痛そうだったからだ。





 「相変わらず鳥居はくぐらないんだな?」

先輩の言葉にドキンとする。それでも自分を私は通した。



其処は鳥居と鳥居の間に挟まれていて、観光客の足の疲れを長年に渡り取ってきたそうだ。

早速私も靴を脱いで挑戦した。

でも其処にいた観光客は土足のままで歩こうとする人もいた。



「あの此処、土足禁止ですが……」



「何よ!?」

私の言葉に怖い目を向けた人がいた。



「あっ、今撮影中です。貴女の映像が流れますが、それでも宜しいのですか?」

先輩はそう言いながら、土足厳禁と赤く書かれた表示物を差し示した。



「あっ、本当だ。失礼致しました」

その人はそう言ったが早いか逃げて行った。



「ありがとうございます」

本当に怖かった私は泣いていた。



「此方こそ悪かった。ちょっと目を離したからな」



「私こそ、だって先輩に靴を脱ぐトコ見られなくなかったから」



「何でだ?」



「だって恥ずかしいでしょ」

先輩は私の言った意味が解らずにキョトンとしていた。





 次ぎは勿論大正浪漫夢通りだ。

何故そんなネーミングなのかというと、大正時代に出来た商店もあるからなのだ。

でもさわてなでてすぐなおると表記してある連馨寺のおびんづる様は外せないと私は考えた。



だから私は中央通りを川越熊野神社方面へ歩き始めた。

先輩を見ると、そのまま行こうとしている。

だから私は先輩の手を取った。



連雀町の信号を右に折れる。

その先の信号を右に向かう。

目指す連馨寺は桜の中にあった。



「もうこんなに咲いているのか?」



「本当ですね。何か今年の桜は冬が寒かった割りに早く咲いて、咲いたかと思ったら一気に咲ききりそうですね」



「桜まつりまで持つのかな?」



「桜まつりって、何かあるのですか?」



「癒しの……あっ、何でもない」



(えっ、今の何?)

否定した先輩に私は疑問を感じながらもおびんづる様を目指していた。



私はおびんづる様を撫で回した。



「あっ、これも癒しか?」

先輩の言葉に頷いた。



「ごめん、気付かなかった」



「きっと楽しいことでも考えていたのでしょう?」

私の質問に頭を掻いた先輩だった。



(もしかしたら、本当に楽しいこと考えていた?)

私は何故かほくそ笑んでいた。

其処で私達は耳寄りの情報をゲットした。



毎月8日は境内で縁日やフリーマーケットなどが開催されるそうだ。

提灯にある呑龍様はすべての願いを叶えてくれるそうだ。



おびんづる様と呑龍様、子育て観音もある。

そして、絶対に外してはならないポイント。

此処は桜の名所だったのだ。

中院と喜多院の枝垂れ桜も良いけれど、ソメイヨシノの古木は此方が勝っていると秘かに思っていたのだ。

もしかしたら此処は川越の最高の癒しの空間なのかも知れない。





 次ぎは、境内の桜を観賞しつつ裏木戸へ向かう。

丁字路を右に行けば蔵造りの町並みへ出るはずだ。



旧式ポストのある銀行の先の道を曲がると時の鐘。

それを潜った先にある川越薬師も外せない。

あの両目を模したような絵馬も癒しになってくれると信じたのだ。

川越まつり会館横の井戸。

其処から向かう菓子屋横丁。



でもその前に、一番の癒しのスポットへ……

それはカメレオンオブジェのある流だ。

行ったことは勿論ないのだけど、山口県にある鯉が泳いでいる場所に似ていると感じていた。

比較にはならないとは思うけど、其処にも金魚などが泳いでいるのだ。



「夏はきっと気持ちいいでしょうね?」



「そうだな。早く夏よ来いって感じだな」



川越にはこのようなオブジェが沢山あるそうだ。

中身は発泡スチロールだと聞く。

以前テレビで紹介していたらどうしても見てみたかったのだ。

先輩には悪いけど、癒しの空間は私のアドバイスから始まったのだ。



「何か癒しの空間があってもいいねって思ったの」

本当はアドバイス何処じゃなかった。

私はただ、先輩と一緒にいたかっただけなのだ。





 菓子屋横丁では人力車を待って撮影した。

やはり一番似合うと感じたからだ。



撮影は順調だった。

今回は店の調査も念入りに行った。



昭和の初期には70店があったが、現在は20店舗が石畳の軒を連ねている。

薄荷やニッキ飴など昔ながらの味が伝統的な雰囲気を醸し出しているならのが菓子屋横丁だ。





 菓子屋横丁の入り口を真っ直ぐぬけた交差点を右に向かう。

暫く歩くと川越市役所があった。





 市役所を通り過ぎ、なお真っ直ぐに行けば新城下橋に出る。

でも私達は、その手前にある博物館の向かい合う丁字路を右に曲がろうと思っていた。



暫く歩くと右に川越城本丸御殿。

左に目指す三芳神社はあるはずだったからだ。



でも私達は其処へ寄らなかった。

30年まで修復工事予定と地図に示されていたからだった。



「ごめん、気付かなかった」



「いえ、私も見逃していたの。最初に地図を貰ったのは私なのに……」



「実は俺も待っていたのはいたけど、古い地図だったんだ」



「川越って、あまり変わらないからね。でも気付いて良かった」

そんな人通りの多い道で地図を拡げていては迷惑がかかる。

私達は新城下橋の手前を左に曲り、川越氷川神社を目指すことにした。





 其処も桜が咲いていることは解っていた。

そして、すぐに散るだろうことも……



それでも、先輩は川越の魅力を伝えようとカメラを構えた。



「次の土曜日まで持つかな?」



「大丈夫だと思います」

私は先輩の心配を他所に、いい加減な発言をしていた。



「どうして?」



「確かに今年の桜は異常です。冬が寒かった割りに桜が咲くのが早くて、しかも一気に暖かくなったから満開までも早い」



「そうなんだよな。お前さんの言う通りだ」



「だったら早く発信しましょ」



「ん!?」



「川越の今の桜の状態を会社のホームページから流してもらうのです」

私は口から出任せにとんでもない発言をしていた。



「そうだ。善は急げだ」

先輩は踵を返すように駅に続く道を歩き出した。





 私達が集めた映像が、ホームページ上に揚げられる。

タイトルは《今が見頃小江戸川越の桜》だった。



「これで少し川越の観光に貢献出来たかな?」

私が言ったらハグさられた。



(えっ!?)

何が何だか解らない。



「もしかしたらだけど、お前さん俺のこと好きか? あれは単なるお礼の意味だったけど」



「えっ!?」

私はその場でフリーズした。






同じ場所を何度か行っているうちに色々と発見していきます。

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