観戦
見る人が増えてきててとても嬉しいです
ほぼ毎日投稿するのでちょくちょく見に来て欲しいです
リオはさっき閉まったばかりの鉄の扉を少し見つめていた。
酷いことをしたな、と自分でも思う。
彼に最初に会った時には既に鑑定でレベルは分かっていた。そして特殊な職業も。ギルドメンバーのレベルを知らせなかったのは狙いがあった。
「一旦弱さを受け入れて確実に強くなれるようにする、それがお父さんの考えですか?」
見ると中学生くらいの外見の竜人っ子がいて、見透かすような視線を寄越してきている
「んー、簡単に言えばそうかな。彼はまだプライドみたいなのが少し残ってたからね。一旦そういうのは全部捨てさせて、レベルもそうだけど強くさせてあげたいんだよ」
「…何故?時間をかければレベル80くらい傷つけずにできるでしょ?」
「彼は僕が何がしたいと聞いた時、真っ先に「強くなりたい」って言ったんだ。だから手荒でもレベルに関係なく彼の職業にあった戦い方を教えるつもりだ」
ふぅ、とため息をつく竜人っ子、ユキは諦めたように
「昔からいろいろ勝手ですもんね、お父さんは…」と言いながら去っていった。
…さてそろそろ出かけるか、とリオは椅子から立ち上がった
依頼された場所まで行くのに、街を疾走する。
レベル差はあってもあかりはペースを合わして横に並んでくれている。
正直助かる。
なんせレベル差が60くらいあるのだ。本気で走ったら犬とチーター並の競走になってしまうんじゃないだろうか
あっという間に街の景観を通り過ぎる。
中から外へ出ていくのはノーチェックらしく、守衛さんに声を掛けられることはなかった。
そのまま看板が示している「牧場」のところまで一息に走り抜けてふと見ると、柵が踏み倒されていた。
そして柵の内側に巨大な灰色の肉の塊…ではなくキングホークがいた。
頭にテカっている王冠に見えるものを被っているから間違いないだろう。
「じゃあ、行ってくるね!」
「え?正面からか?」
「まぁ、見といてよ」
あかりはそう言うとゆったりとターゲットの方へ歩いていく。
対するキングホークは既にこちらに気づいており、威嚇を繰り返している。
豚型の魔物は威嚇に臭いを垂れ流すので辺りに悪臭が漂い始める
…普通の人間の俺で20メートルくらい離れているのに吐きそうになるが堪える。
獣人のケット・シーであるあかりは俺より鼻の性能が上なのでこの悪臭もひどいと思うが、変わらず歩き続けている。
遂に5メートルくらいに近づいた…と思った時、どうやら我慢の限界に達したらしく、キングホークが咆哮をあげてあかりに突進した。
だがキングホークが突進の構えをとった瞬間、あかりが一瞬で距離を詰めて
「…猫パンチ」
と言いながら手のひらを相手の顔に押し付けると、
ブギュッと顔が凹んで一瞬ボールのようになり、
「ブ…ギャン!」と言いながら農場の向かい側の柵(およそ300メートル)まで吹っ飛んで哀れな柵を薙ぎ倒して止まる。
「ん〜、絶好調!」
といいながらあかりはこちらへ歩いてくる
いや〜86と聞いてバケモンだとは思ってたけどここまでとは…
「お疲れ、けどあそこまで吹っ飛ばす?」
「あれ全部私の力じゃないよ…?相手の力を利用したんだけど…思ったより突進が強かったんだって。…さっきから引いてない?」
「豚を数百メートル吹っ飛ばす女子は初めて見たんで」
「もう……でも相手の力利用せずにあのくらい吹っ飛ばす人は結構いるよ?」
「それは人じゃねぇから安心して」
「リオさんもその1人だし。」
「やっぱあいついろいろとやらかしていそうだな〜…」
「呼んだ?」
「うわっ!?」
いつの間にか背後にリオ。
「解体に来たよ〜あかりちゃん今回は派手にやったねぇ 張り切ってたんだね」
ニヤニヤしながらリオは肉塊と化したキングホークへと近づく
「は、はい。張り切りました…」
( 好きな人のまえだから?(コソッ))
(なっ、なんのことですか!?早く解体してくださいよ!(コソッ))
お二人さん、コソコソ何か言ってても丸聞こえなんですけど…
なんか気まずい雰囲気になっている間に、鼻歌交じりに高速解体されていく元、豚。
5分後にはきれいさっぱり無くなっていた。
「いやぁーご苦労さま2人とも。これでしばらくは肉が持つね、食費が鬼かさむんだよねー皆よく食べるし…」
と言いつつチラリとあかりの方を見るリオ。
あかりはそっぽを向いて聞いていない。
あれ?こんな子だっけ…?
「さて、かっしー君。突然だが君は明日からコーチをつけて特訓を始める」
「ほんとに突然ですね」
「まあ、聞きたまえ。転移者でこちらで確認出来ているのは96人。最初の人が転移してから3年経ってるからもう来ないはずだ。つまり、残り3人は向こうへ行ったことになる」
「向こうって?」
「魔族領域、ディアブロだよ。
種族選択の時に魔族を選んだ人もいるみたいでね、ここでも住めるけど快適とは言いづらいらしい」
「それで?何か不都合でもあるんでしょうか」
「魔族は神と契約しててね、人間を全て滅ぼせたなら魔族にピースをそっくりやるっていうものらしい。つまり僕らは自動的に敵対することになるわけだ」
なるほど。転移者が入ってるだけで魔族側の脅威が上がるのか。
ところでなんでそんな情報君が知ってるの?って聞いたら企業秘密とあしらわれた。
「リーダーには知らせたから今日中には帰ってくるだろう。君が強くなるだけでも人間は滅ばなくなる可能性が高くなるんだよ。特訓する意味は分かったかな?」
…俺が前に言った強くなりたいっていう言葉もちゃんと聞いてくれてそれと結びつけたんだろう。
「ありがとう。特訓はもちろん受けるよ。」
「そう言ってくれると思ったよ、さてそろそろ帰ろうか」
ふと見るとあかりがめちゃくちゃ嫌そうな顔をしている
「何かあったのか?」
「リオさん…今日あの人帰ってくるの…?」
「うん、かっしーが加わったって言ったら30分で戻るって息巻いてたよ」
ケラケラと笑うリオ。
「あの人ってリーダー?そういや誰なんだ……おい、まさか?」
あかりを見るとガックリしてた。
…瞬時に最悪を理解する。
「あぁ、言ってなかったね!我らがリーダーはこのあかりちゃんのお父さんさ!」
太一おじさんが、リーダー…
その時、近くにいた農家のおじいさんは嘘だろぉぉぉぉ!!という悲痛な叫びを聞いたそうな。
今日は10時にもう一度更新して寝ます