約束
登場人物増えると書きやすいですね…
今回は見やすいように少し工夫してみました。
朝っぱらでも騒がしいと有名なノクターンの喧騒からこのギルドへワープしてきた訳だが、わんちゃん負けてないくらい騒がしい。
お祝いで料理と酒がどんどん運ばれて更にヒートアップしていく。
一応今日の主役(?)なのだが少し眠たいのとテンションの高さついていけないので離れて観察することにした。
今いるだけでも獣人が20人くらい、エルフが10人程、普通の人間っぽいのが30人くらい、あと竜人が数人いる。
見渡すとあかりは他の獣人と話し込んでいて、リオはニコニコしながら厨房で高速で料理を出していく…ってお前料理人だったのかよ!
「ちょーっと聞くけど武器屋で何してたの?」
「ん?ああ、包丁探してたんだよ。大型を料理するのすぐ刃こぼれしてかなり大変だから大型のやつを買おうと思ってたんだ」
…あそこ包丁も売ってんのか
…ていうかよかった、まともな理由だった。
「君は食べなくていいのかい?君のための宴だけど」
「昨日あまり寝てなくてそんな気分じゃないんだよ。野宿してたら頭上をドラゴンが通っていって…」
ポロッとリオが包丁を取り落とす。支えがなくなった包丁はまな板に突き刺さる。
どうしたのかと見ると
「君…ドラゴンを見たの?」
唖然とした顔でこちらを見てきた
「あぁ、見たけど…そんなに驚く?」
呆けた顔に戸惑いながら答えると、
「他には?」
「え?」
「だから他には?何か見た?ドラゴンだけ?」
何かを確認されるように聞かれる。
「いや、下から見たし一瞬だからドラゴンしか見えなかったけど…」
リオはほっとしたようにため息をついて
「その事は言わない方がいい。ドラゴンなんて伝説モンだから」
「伝説モン?」
「伝説モンスターだから伝説モン、伝モン。一生に見るか見ないかのモンスターってことだよ」
「幻ポ〇モンみたいなものか」
「…あぁ、うん、そんなものだよ。とにかく他言無用で」
うーん、言ったら何か事情聴取されたりするのだろうか?めんどくさいのは嫌だから黙っておくことにする。
そんなふうに独り合点した俺の前にサンドイッチが出される。
「はい、情報ありがとうね。一応朝ごはんだけでも食べておかないと倒れるよ?」
作るのはやっ
さっきローストビーフ(?)作ってたのに…だがせっかく出されたものだし
「頂きます」
「はいはい、どうぞ」
笑顔で渡してくれたリオにお礼をいい、隅っこに向かう。
渡されたサンドイッチは元の世界出よく見るようなものだったが、よく見ると肉の色が魔物の色だった。最初は気持ち悪くなったりしたものだが、さすがに慣れた。
とまぁ朝メシのサンドイッチをモシャモシャ食べていると癖でステータス表を開いていた。
レベルは変わってないが、名前の上の方に
(所属ギルド「トランスフリー」)
と新しく表示されていた。
…いつの間にか入ってることになっていた。
まぁ宿無しはつらいししばらくここを使うことにするかーとか思ってたらピロ〜ンとボードのところが光る。
1人の竜人(同じ歳くらい?)が素早く駆け寄りボードに触れるとみんなの頭上に紙の映像が映し出される。
何枚かに赤い字で「new」が付いていた。その中の1枚の色が違う。
読んでみると「キングホーク討伐依頼」と書いてあった。
なるほど、どうやらこれはギルドに回ってくる依頼みたいだ。
各ギルドで受け付けた依頼の情報を共有して、素早く依頼を達成できる仕組みになっているのか。
そこまで考えていると、騒いでいたみんなから歓声が上がる。
何事かと思えば1人の獣人…あかりが紫の紙の依頼を受注したところだった。
「あぁ〜取られた!これ絶対稼げるやつだって!」
「ごめんね、カラマさん。今日は私に譲ってくれないかな?」
といいながら笑顔でウインクするあかりに骨抜きになったらしく、カラマと呼ばれた中年はデレデレした顔になっていた。
「さ、かっしー行こ? 今日は私の活躍する姿見せるから!」
…中年の顔が憤怒の表情で俺を睨む。
だが、その程度の眼力ではベネカ村のおばちゃんに負けているのでスルー出来た。
「いいけど大丈夫なのか?かなり強いんじゃないか?」
「ううん、そんなことないよ?レベル50あれば狩れるレベルだし。」
…は?今なんと?
「レベル50」
頭に響く異次元の数字。
…いや、1ヶ月で50?確かレベルが上がるほど更に上げるには必要な経験値は増えるからかなり厳しい…というか無理だろ?
「…あかり、今レベルどのくらい?」
「えっとね、今は86だよ?」
首を傾げながら言う様はかなり可愛いんだろうが、今はそんなことが考えられなかった。
自分が圧倒的に弱いということがまたここで思い知らされた。
自分より弱いと思っていた従姉妹が自分を凌駕していたのだ。
正直にショックだ。そんな気持ちに囚われてると
「何ぼーっとしてるの!早く行くよ、私の活躍ちゃんと見てよね!」
あかりに手を握られそのまま出口へ向かう。
ドアのところで振り返るとリオがこちらを見て微笑んでいた。
「頑張れよ」
…そう言われたような気がした。
モヤモヤしたまま、俺は外へ引っ張りだされた。外にはそんな俺の気持ちを知らないように太陽もどきがサンサンと輝いていた。
「待ってくれ、俺のレベル知ってるか?25だぞ!」
「大丈夫だよ。私が倒すから安心してね」
「いや、何も思わないのか!?あかり達が高レベルになっているのに俺はまだ全然低い!」
「レベルで軽蔑したりなんかしないよ?私にとってかっしーはかっしーだもん。」
「けど弱い…」「私は強さでその人を決めたりしない!かっしーは小さい頃から私が泣いても慰めてくれたりしてくれたお兄ちゃんみたいな大事な存在!そんな人を見下すわけないでしょ!」
少し目が赤くなったあかりを見て言葉に詰まる。同時に肩が軽くなった気がした。
少なくともあかりは俺のことを見下したりしてはいなかった。大事な存在とも言ってくれた。
弱いことに対して罪悪感が消えたわけじゃないけど、胸につかえたものが取れた気がした。
「あかり…」
「何?」
「いつか、抜かすからな!」
ビシッとピースを決めて笑顔で言う。
あかりはキョトンとして、それから満面の笑みでピースを返してくれた。
「分かった。でも今から行くのはただ単に私の活躍見て欲しいだけだよ?」
「はいはい、じゃあ大人しく見学させてもらうとするか」
ふと、空を見上げるとさっきは憂鬱に感じた太陽がとても綺麗に感じられた。
万能題名使っちゃった…
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