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異世界の魔術は実に難解だった  作者: 滝咲 白菜
第一章 魔術と自然
6/7

反省

ナイフ一本で虎と戦うなんて、なんと無謀なことか。想像が出来なくて書くのが難しいですねぇ。

 虎が現れた。

 水を飲みに残った所為で仔牛が襲われる。

 後悔に囚われながら、咄嗟に腰のナイフを振りかぶり、虎の進行方向に放つ。

 虎は、仔牛に飛びかかる。

 ナイフは仔牛の近く目掛けて飛ぶ。

 ナイフは、駆け寄る虎の頬に吸い込まれるようにしてーー


 ーー突き刺さらずに落ちた。

 骨のナイフは質量が足りず、貫通力がなかったようだ。

 虎と仔牛はもつれ合うように転がった。

 無事なのだろうか。

 目を凝らし、様子を見る。

 ここからは仔牛の血が流れてるようには見えない。

 すると、虎はこちらを睨む。

 それはそうだ。狩りを邪魔されたのだから。

 よく見れば、頬から少し血が出ている。

 しかし、好転するわけでもなく、冷や汗が流れる。

 本日何度目だろうか。

 そして、今は丸腰で無防備状態。

 素手でやり合えるほど経験もない。

 彼は、大きく息を吸い込む。

 そして、腹に思いっきり力を入れ、


「オアアアアアアアア!!!」


 できる限りの威嚇をした。

 人間の他より優れているところは、声帯の柔軟さ。

 鍛えれば、ものすごく大きな声が出る。

 緊張のあまり出ないこともあるが、今回は大丈夫だった。

 その結果、少しは時間が稼げたらしい。

 戸惑いを見せながらこちらを睨みつけている。

 思ったような成果はなかった。

 しかし、もう1つの願いは叶ったようだ。

 細かな地響きが地面から伝わる。

 虎は、更に戸惑うように見渡し、あっさりと去っていった。


 程なくして、全ての牛たちが仔牛に駆け寄ってくる。

 母が舌で我が子の身体を舐めて、恐慌した心をほぐす。

 父は、こちらを睨みつけている。

 これは、何度やられても慣れない。

 理由は判りきっている。

 自分のした事で、子供を危険に晒したのだ。

 どんなに温厚な親でも怒るものである。

 一難去ってまた一難。

 反省はしていても、立っているだけでは何も伝わらないだろう。

 相手に伝わるかどうか判らないが、土下座という手段に出た。


「申し訳ありませんでした!!」


 最悪、殺されても仕方がない。

 自然を舐めてかかっていたのだ。

 もちろん、異世界に来たばかりで、まだ死にたくはない。

 誠意を示すことが最も命を伸ばす可能性がある事を信じて。


 周りを見ることが出来ず、心の準備ができない。

 草を踏みしめる音が耳に残る。

 その音が徐々に近づいてくる。

 視界に影が差し込む。

 胸の鼓動が大きくなるのを感じる。

 背中に1つ、とてつもない重みを感じた。


「ぐっ…」


 地面に押されて肺から息が漏れる。

 骨が軋む音が聞こえる。

 痛みに歯をくいしばる。

 行動の当然の報いだと感じて。

 ほんの一刻が長い時のように感じる。

 土の匂い、草の匂い。

 吹き付ける風、伝う汗。

 何もかも痛みによって掻き消される。

 身体に血が巡り、沸騰したように熱い。

 どれだけの時が経っただろうか。

 この苦痛はいつまで続くのだろうか。


 ふと、背中の重みがなくなった。

 左右から足音が聞こえる。

 片方は不規則に、もう片方は近づいてくる。

 暖かい肌が身体に擦り付けてきた。

 身を起こすと、仔牛が甘えてきていた。


「ごめんな」


 自然と、謝罪の言葉が出ていた。

 仔牛に抱きつき、触れ合う。

 あまりの気持ち良さに、力が抜け…

 そのまま眠りに落ちた。

気絶するように眠ってしまいました。水の捜索に牛との遭遇、更に虎との遭遇。あれ?意外と出来事が少ないような?でも、精神的疲労が大きかったのは事実。ゆっくり眠れるといいですねぇ。

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