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異世界の魔術は実に難解だった  作者: 滝咲 白菜
第一章 魔術と自然
4/7

火の魔術

ついに魔術が出てきます!

ワクワクしますねえ

早く魔術を研究する話まで持ってきたいです。

 大草原に放り出されて歩き始めてから1時間ほど経った。陽は昇り、草原には木がちらほらと遠くに見え始める。

 水袋は口をつけずに飲み、少し軽くなっている。残念ながら水は無限ではなかった。早急に水を探さなければならないわけではないが、補給できる場所があればありがたいもの。最悪、朝露を集めればなんとかなるが、それでもこの環境でも可能か不安である。手段は多い方がいい。

 幸か不幸かどの動物にも、人にも遭遇せず、木が生っているところまで歩いた。一度高いところから平原を見渡してみたかったのだ。木を蹴ってみる。虫も何も落ちてこない。

 ふと、思った。自分は、自分以外存在しない世界に落とされたのではないかと。植物は見渡す限りあり、生きていくにはそれほど苦労はしないが、動物がいないとすれば、精神的に病んでしまう。いや、動物がいない前提の世界ならば、食べられる植物も限定されてしまうのではないか。味のない青臭い食べ物のみでは、人間は生きていけない。そう思うと身体に鳥肌が立った。


 気を取り直して、木に登って見渡してみる。一応方向を見失わないように地面にナイフで切りつける。ナイフを腰に挿し、木に手を掛けた。いつでも異世界に飛ばされてもいいように軽い筋トレと柔軟をやっていたお陰でなんとか登れたが、都会暮らしにそんな経験があるはずもなく、ぎこちなかった。

 苦労して、さぁ見渡そうとしても、葉っぱが多く視界が悪い。なんとか目を凝らして見れば、遠くの草原に黒い何かがある。その他には特に目ぼしいものはない。

 黒い何かは遠すぎて何かがわからない。危険を気にして近づかないという手はない。もしかしたら、池なのかもしれないのである。あまり気乗りはしないが。


 小説では一瞬である道のりも、こうして歩けばかなり苦労するものだ。子気味いい足音もだんだんとどうでもよくなってきた。むしろ、音に気づかれて襲われないか内心ビクついていた。煩わしかった。慣れない環境が、足に疲れを促した。


 ふと、足が止まった。

 疲れに足を止めたわけではない

 池が見えた。

 これは嬉しい。

 しかし、それに反して近づけない理由がある。

 牛がいる。

 ツノが大きい。

 そして、大量にいる。

 50頭くらいであろうか。

 かなりの迫力がある。

 そして、目が合った。

 かなりの距離だというのに、緊張が走る。

 額から冷たい汗が流れる。

 強い風で直ぐさま乾く。

 乾く端から止めど無く流れる。

 数刻の間見つめ合う。

 外から見れば、牛を狙う獅子に見えるだろう。

 しかし、内心ではもちろんびびっていた。

 そして、火を噴いた。

 そう。牛は、口から火を噴いたのだ。

 こんな形でファンタジーに出会うとは思わなかった。

 しかし地味だ。

 とても地味だ。

 地味だが迫力はある。

 とりあえず、緊張は解けたので見つめたまま離れてみる。

 そのまま追われはせずに見逃してもらえた。


 生えていた木のふもとで座って休む。流れた汗を取り戻すかのように水を口に放り込む。

 しかし、地味とは酷い言い様である。実は、牛の吹く火はれっきとした魔術である。体内に溜めたメタンガスを口内の魔術で着火し、噴いて威嚇をする。温室効果ガスを牛自ら軽減しているのである。エコなのだ。仔牛の時に見る大人の噴く火はカッコよく、それを真似しようとして火傷を負うこともしばしば見られる。

 さて、池は見つかったが案の定の有様だ。他の池に行くには、確実性がないし、今は動く気力がない。異世界に来た疲れが溜まったのか、瞼が重くなっていく。まだ草原の真ん中で安心はできないので、頰を叩く。牛たちが池を離れるまでの辛抱だと言い聞かせ、彼は、眠ってしまった。

え?キミも地味だなんて言っちゃうの?

何?もっと牛を火だるまにしたかった?

そんなエネルギーの無駄遣いなキミは自転車でも漕いで、体脂肪を燃焼しなさい。

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