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異世界の魔術は実に難解だった  作者: 滝咲 白菜
第一章 魔術と自然
3/7

草原と空と、俺

 目隠しされて大草原に連れてこられたらって、想像したことあります?もし、連れてこられたとしたら、まずカメラかタイヤ痕探しますかねぇ。

彼は意識を取り戻した。

大地を踏みしめて強い風を感じる。

見渡す限り緑一色。

空は青く、小さな雲が流れていく。

地平線を遮るものはなく、陽は過ごしやすい暖かみをもたらしてくれる。


「おぉ、これは驚いた」


 コンクリートの街並みから、青々しい平原へと、いつの間にか移っているのである。異世界とは断定はできないが、確かなことは不思議なことが起こったこと。いかにも異世界小説の冒頭部分のような風景を思わせる。


「イヤッハー!」


 開放感からか、喜びからか、大声で叫んでしまう。ついに夢に見ていたものが現実になったのである。


「うん。痛い!」


 試しに頰をつねってみても、生きている証拠を感じ取れた。やはり、夢ではない。とても嬉しい。これから先起こるであろう物語に頰がゆるむ。


 イメージの力で身につく魔法


 ステータスの数字を頼りに鍛え上がっていく身体


 鑑定スキルを使った内政チート


 稼いだお金で買った奴隷の感謝の笑顔


 一生を誓い合った美しい伴侶



 妄想するだけならタダである。

 さて、ようやく身辺整理に移る。まず、彼が身にまとっているのはゴワゴワな麻の服だ。麻のシャツは被って着るタイプで、緑色に染められている。特に飾り気はない。ズボンは、生地本来の色の茶色。裾に小さくスリットが入っている。紐ベルトで腰に固定されている。下着まで麻で、なんだか感触がかたい。足には皮のサンダルが着用されてて、それは踵を固定するためにいくつかの皮の帯で踵を覆い、麻紐で前を結ぶ所謂、丈が短めのグラディエーターサンダルである。

 地面には、水の入った胃袋状の皮袋と、刃渡り4寸の骨の片刃ナイフが置いてあった。皮袋は胃袋ではなく革を縫ったもので、飲み口は骨でできている。何かの樹脂でできた蓋が付いている。ショルダーバッグくらいの紐で括り付けられており、持ち運びに適している。試しに手のひらに水を出してみて舐めてみる。問題はないようだ。骨のナイフは肉厚で、刃の根元部分は波線のようにギザギザしている。

 神様が用意したのだろうか。着替えた記憶がない。そもそも、転移する前に何をしていたかの記憶も朧げだ。誰かに叱られていた気もする。

 と、そこではたと気づく。神に会っていないと。チートスキルをもらっていない。いや、神様に会わなくてもスキルを持っていた主人公は結構いた。


「ステータスオープン」


 彼の言葉が虚しく響いた。

 呪文が違うのか、鑑定石なるものがある世界なのか。とりあえず、今はステータスが読み取れないことがわかった。つまり、スキルの確認は今はできないということだ。

 ならば次にすることは、水の確保である。水袋はあるが有限なため、生きていく以上はなくてはならない。もしかしたら、水袋からは幾らでも出てくるかもしれないが、今試すことはできない。水を確保するには、川、若しくは村を探すか、地面を掘って地下水を取り出すか、またはーー


「ウォーター!」


 ーー魔法で出すことくらいである。因みに出なかった。恥ずかしい。これは、イメージが必要なのか。もう一度試してみる。

 澄んだ水、視界の通る湖、叩きつける滝、水苔に付く水滴。それらを想像してから、コップの中の水よりスポイトで吸うようにして、そして雫を一滴垂らす。


「ウォーター」


 出なかった。このアプローチではないのか。ならば、陽子1つに電子1つ回る水素を2つ取り出して、陽子8個、中性子8個の周りを回る2つと6つの電子が回る酸素1つも取り出す。水素の電子を酸素の周期に混ぜるように繋げていく。それを膨大な量行われる想像をして


「ウォーター!」


 羞恥に蝕まれた。言葉が違うのか。言葉が違うのだな。と、自問自答をして結局、魔法による方法は断念した。

 残り2つの方法だが、地面を掘るには道具がないし、あったとしても徒労に終わることが大半だ。なので、川か村を探すことにする。と言っても、地理がわかるわけでもなく、上空から探すこともできない。取り敢えず、太陽のある向きに歩いてみる。今が午前か午後かわからないため、方角がまったくわからない。なので、より植物の育ちやすい赤道に近い向きに進む。幸い、水があるため1日は身体が保つだろう。


サクッ、サクッ、サクッ


 芝生のような草を踏みしめる音が子気味いい。サンダルも程よくフィットしていて、歩きやすい。風は強く、しかし心地よく、追い風な為進むのが楽だった。


こうして、彼の異世界探索は始まったのであった。

 いきなりの天丼回です。恥ずかしくても、生きていくために必要なことはあるのです。

 三人称が彼になってますが、別に主人公が変わったわけじゃないんですよ。異世界に行って、意識が変わったって暗示なだけなので、まぁ、特に意味はありません。

 今回は大丈夫でしたが、叫ぶのもどうなるかわからないですよねぇ。草食動物は逃げてくれるのですがね。

 てか、この回ファンタジー要素ないんですけど!

 安心してください。次回に魔術が出てくるはずです(希望)。

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