短編集『雑魚キャラ?勇者の事ですね♪』
お読みいただきありがとうございます。
超ど素人が気まぐれと思いつきと勢いで書いております。
気が付くと俺は、木漏れ日の溢れる森に寝っ転がっていた。
いや、正確には寝てはいないのだが目線が地上30cm程だった。
「ぽよぽよ(なんだこれは)」
……へっ??
声が上手く出ない、なんてものじゃなく、この独特の発音はまさか。
慌てて近くの水場、雨上がりなのか水溜りがそこかしこに出来ていたので
その内の一つに自分の姿を映してみる。
丸くて柔らかそうで愛らしいフォルムの、、、スライムだった。
スライム。
ノーマルスライムとかブルースライムとか言われる種は、
曰く「最弱のモンスター」「始まりのモンスター」「子供の憂さ晴らし」
と呼ばれる程に弱いモンスターだ。
経緯は良く分からんが、とにかく俺はそのスライムになってしまったらしい。
「ぽよぽよ!(ステータスオープン)」
種族:スライム
LV:1
HP:5
MP:1
力:2
魔力:1
守り:1
早さ:1
運:??
良かった、スライムでもステータスは見れるらしい。
しかし、分かっていた事だが……弱いな。
……ガサガサッ!!
近くの草むらが揺れたかと思うと、
『スライムAがあらわれた』
「ぷよ!(こんにちは)」
スライムが元気に挨拶してきた。
って、他のスライムの言葉は分かるんだな。
こ、こっちのも伝わるんだろうか。
「ぽ、ぽよ(こ、こんにちは)」
「ぷよよ~♪(友達♪)」
うん、伝わってるみたい。
楽しそうにジャンプしてる。
『スライムAからフレンド申請が届きました。承認しますか?』
す、スライムどうしってこんなにフレンドリーだったのか。
ひとまず承認しておく。
「ぷよよ~ぷよよ~♪……ぷよ!(友達友達♪……あっ!)」
何かを見つけたのか飛び出していく。
その先には、人間の少年がいた。
「ぷよ!(いじめっこ)」
なるほど、スライムから見ると人間はいじめっこなのか。
『冒険者Aがあらわれた』
ひのきの棒を構えた男の子にスライムAが飛び込んでいく。
「ぷよ!」ぽこっ。
「あいたっ。やったな、スライムのくせに!」
全然効いてなさそうだな、当たり前だけど。
男の子がやたらめったら棒を振り回してきた。
あー、このままだとまずいな。あ、1発当たった。
「ぽよっ!ぽよっ!(おーい、戻ってこーい)」
「ぷよ?(わかった~)」
『スライムAはにげだした』
無事に戻ってこれたみたいだ。
さて、ここからどうしたものか。
このまま2:1で戦っても負ける可能性が高いな。
2:1でダメなら……
「ぽよ、ぽよぽよ(なぁなぁ、この近くにお友達いっぱいいる?)」
「ぷよ♪(いるよ~)」
「ぽよよ~(呼んできて。一緒にあいつやっつけよう)」
「ぷよっ!(わかった、すぐ呼んでくる!)」
スライムAが楽しそうに近くの茂みに飛び込んでいく。
のんきだな~。まぁスライムだしな。
あとは、こっちか。
『冒険者Aがあらわれた』
「見つけた。さっきはよくもやってくれたな!」
うん、スライムAがこっちに逃げて来たんだから、来るよな。
しかもスライムの見分けも付く訳無いよな。
「おら!」ブン。「ぽよ!」スカッ。
『冒険者Aの攻撃。ミス」
「くそっ、おら!」ブンブン。「ぽよ!」スカスカッ。
『冒険者Aの攻撃。ミス」x2
ブンブンブンブン。
スカスカスカスカッ。
周りの草むらや木を利用して攻撃を避けるだけならスライムの素早さでも何とかなる。
というか、この男の子が貧弱すぎるのか。
さて、そろそろかな。
「ぷよ~♪(おまたせ~)」
スライムAの周りに20匹くらいスライムが居た。
『スライムB~Rからフレンド申請が届きました』
よし、これだけ居れば何とかなるな。
「ぽよぽよ、ぽよぽよぽよ。(3匹1組になって、包囲して、1回攻撃したら退いてね)」
「「「ぷよ♪(はーい♪)」」」
3匹1組になった所から、男の子の前に飛び出していく。
「ぷよ!」『スライムAの攻撃。ミス』
「ぷよ!」『スライムBの攻撃。ヒット。冒険者Aはいたそうだ』
「ぷよ!」『スライムCの攻撃。ミス』
『スライム達はにげだした』
「いてっ。くそ、こいつらちょこまかと」
ふむ、3匹同時に攻撃すれば1回くらいは当たるな。
よし、どんどん行ってみようか。
………………
「ぷよ!」『スライムJの攻撃。ミス』
「ぷよ!」『スライムKの攻撃。ヒット。冒険者Aはつらそうだ』
「ぷよ!」『スライムLの攻撃。ヒット。冒険者Aはふらついている』
『スライム達はにげだした』
「いててっ。……はぁはぁはぁ。くそ、このままだとまずいな」
ん?そろそろ逃げ出しそうだな。よしっ。
「ぽよ!(2組後ろに回り込んで)」
「「ぷよ♪(はーい)」」
あとは俺が前から飛び出して、
「ぽよ!」『攻撃。ヒット。冒険者Aはふらついている』
「くそっ、おぼえてろよ!!」
『冒険者Aはにげだした』「「ぷよ」」『だが回り込まれた』
よし、無事に囲めたな。
「ぽよ!(一斉攻撃!!)」
「「「ぽよ!ぷよ!ぷよ!」」」
囲んだ7匹で飛びかかった。
『スライム達の攻撃。ヒット。冒険者Aは死亡した』
よし、無事に倒せたみたいだな。
最初スライムになった時はどうしようかと思ったが、
統率が取れれば、何とかなりそうだな。
『戦闘に参加した全員に2の経験値が入りました』
……2か。しょぼい経験値だが、数が多いから仕方ないか。
だがこれを繰り返せば多少は強くなれそうだな。
後の問題はここにいる皆が付いてきてくれるかだが、
何て声を掛けたものか……
「ぽよ♪(楽しかったな)」
「ぷよ♪(たのしかった~)」
「ぷよ~♪(おもしろーい)」
「ぷよん♪(やっつけた)」
「ぽよ、ぽよ!(次も"一緒に"やっつけよう!)」
「ぷよ♪(いいよ~♪)」
「ぷよ~♪(やっつける♪)」
「ぷよん♪(一緒一緒♪)」
「ぽよよ!(じゃあ見つけたら呼んでね)」
「「「ぷよ♪(はーい)」」」
よし、これで何とかなりそうだな。
……そして。
「ぷーーよーーーー♪」
木漏れ日の溢れる森にスライムの声が響く。
「見つかった!?」
「くそっ、誰だよ、メタルスライム見つけたとか言って飛び出して行った奴」
「嘘じゃねえって。って、ほらあそこ。またいたぞ!!」
「ほんとだ。ってばか!あれはメタルスライムじゃねぇ。"フル"メタルスライムだ!!逃げるぞ」
総勢12人の完全武装の男達めがけて鈍色のスライムが突撃していく。
「ぷよ!」『スライムCの攻撃。クリティカルヒット。冒険者Dは死亡した』
突撃をもろに受けた冒険者の頭が吹き飛ぶ。
熟練の冒険者達なのか、動揺は一瞬ですぐに意識を立て直し、
突撃して背中(?)を見せているスライムに向けて大剣を振り下ろす。
「死ねや、おらぁ……あ?」
振り下ろしたはずの大剣が、というより両腕が無かった。
それと同時にフルメタルスライムの上に黄色のスライムが乗っかる。
「ぷよ♪」『スライムBの魔法。ヒット。冒険者Bは深刻なダメージを受けた』
ふたたび冒険者達に動揺が走る。
「エアースライム?いや、それがこんな強力な風の刃を放てる訳ねぇ。
ウィンド、いや、テンペストスライムか!?なんで上級のスライムが何匹も出やがる。
おい!纏まってたら恰好の的だ。分散して逃げるぞ!!」
「「「おう!!」」」
リーダー格の掛け声とともに散り散りに逃げて行く。
2匹のスライムは、そんな冒険者たちをのんびり見送っていた。
「ぷよ♪(助かったよ)」
「ぷよぷよ、ぷよ♪(どういたしまして。あとは皆に任せよう)」
それから約1時間後。
リーダー格の冒険者のみがようやく森の入口まで戻ってきてた。
「くそっ、生き残ったのは俺だけか。
Bランクパーティーがスライムの森で壊滅か。笑い話にもなんねぇな」
そしていざ森を出ようかという所に、ノーマルスライムが1匹だけ居た。
「へへ、脅かすなよ。こちとら散々上級スライムにやられてきたところでな。
憂さ晴らしにもならんだろうが、八つ当たりさせてもらうぜ」
『冒険者Aがあらわれた』『冒険者Aの攻撃。ミス』
真っ二つにしたかに見えた冒険者の放った斬撃は、しかしぎりぎりの所で避けられていた。
いや、正しくは体を半分に圧縮していたようで、よく見ると体積が半分になっている。
「ぽよ」
ゴムボールよろしく冒険者の胸元に飛び込んでいくスライム。
冒険者も余裕で体を横に開いて避けて、通り過ぎようとするスライムに剣を切り替えそうとする。
が、そこで縮んでいたスライムの一部が槍のように変形して冒険者を貫いていた。
「ぽよよ」『攻撃。ヒット。冒険者Aは死亡した』
そしてスライムは何事も無かったかのように森へと帰って行った。
ここは木漏れ日の溢れる、通称『スライムエンペラーの森』
今後展開が増えたりするかは未定です。
誰かが読んでくれたら頑張るかも。