あなたと出会えた奇跡
彼女はうまく話すことができない。それは生まれつきなのかもしれないしそうでないのかもしれない。何せ彼女とは話したことがないから詳しくは知らない。いつも玄関先で会釈するぐらいだ。彼女の特技は人を虜にしてしまうこと。彼女の周りに足を踏み入れた人は必ず、「彼女のことを知りたい」と言うそうだ。
彼女の名前すら知らない僕はもちろん彼女が何をしている人なのかも知らない。ただ知っているのは平日は朝帰り。しかも決まって八時。手には、コンビニの袋。中にはツナおにぎりとカップに入ったレトルトのしじみの味噌汁。彼女はキャバクラとかでもしているのか。そう思いながら毎日出勤する僕。
僕と彼女か初めてであったのは去年の四月。ピンクに色付いた町は、新しい出会いが多い。彼女は、僕が住んでいるアパートの隣の部屋に引っ越してきた。特に目立った感じもなくおとなしくこの時から会釈ぐらいしかしなかった。表札には名前が書いていなかった。この時代に個人情報をわざわざさらす必要もないから掲げていないのだろう。そう思っていた。隣の部屋の音はそれなりに聞こえた。平日はなかなか同じ時間に家にいないのでわからないが土曜日はほぼ一日寝ているらしい。音が全くないからそう思っているだけなのである。日曜日は朝早く起き出かけるか、部屋だテレビを見ている。ただ、たまに、どんどんばたばた、と慌ただしくしている。そのあと掃除機の音も聞こえる。彼女はこの生活が幸せなのだろうかとふと思ってしまうことがある。
ある時、ポストに見覚えのない名前あての手紙が入っていた。「北沢充帆」と書かれていた手紙の送り主は僕の名前が書かれていた。
次回は年明けにすると思います
楽しみに待っていただければと思います。
さらに、すでに、もう一本の連載を予定しておりますのでお楽しみに!




