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System Error   作者: 葛葉
8/8

Story6 未知のLv

 無事格上ボスを討伐し、ダンジョンを踏破。


 ギルドで報奨金を頂き、ギルドメンバーによるパーティでクリアした為ギルドレベルが上昇した。一気に8つも上がったので、現在はギルドレベルが9になっている。ダンジョン踏破に加えて、格上ボス討伐、更にギルドレベルを一気にあげる事が出来たのは上々な成果だと言える。


すっかり夜も更けてきた。

そこらの飲食店に落ち着き、皆でテーブルを囲む。


聖羅はワイン、轟はビール、聖羅はフルーツジュース、慎太郎はジンジャエール。

四者四様の飲み物を掲げて。


「「「「乾杯!」」」」


ごくごくと飲み干す。思わず、ぷはぁ、とオッサンくさい事までしてしまう。


「いや、お疲れ様、本当に」


「お疲れお疲れー!」


「お疲れ様!」


「実に大変だったな!」


一仕事終えた後の達成感が顔に出ている。


 結局あの後、ボロボロになりながらも全員でボスキャラからアイテムを剥ぎ取り、多分未だ市場に出回ってないであろうアイテムを何種か手に入れた。武器ドロップも中々のもので、手に入ったものにはセット効果が付いており、周囲のダンジョンを始めとした各ボスから得られる装備の組み合わせによるものだった。効果も協力で、既存の最高レベル装備(最大強化したもの)と遜色ないレベルである。ただ、着用レベルが230からなので、装備するのはまだまだ先になるのだが。


「まさか、希少個体が出るとはな」


「さすがにあのレベル差は昔を思い出したよ」


「でもレベル低い時はギルメンの先輩が良く連れてってくれたよね?」


「今や寧ろ私達が牽引する立場なのだから、笑えてくるな」


皆過去に高レベルボスを連れ回してくれた先輩キャラを思い出しているのだろう。

慎太郎は地道に一人でレベル上げをして正規レベルボスを順当に倒していたので輪には入れない。


「あれ何回かカンストダメージかましてたけど、やっぱ相当タフよね…」


「いづなのダメージ増加バフや、ゴウやシンの弱体化デバフが無ければもっと手強かっただろうな」


「いやー、それでもやっぱ悔やまれるなぁ…。あの時もっと盾に専念してれば…。それに一度死んだし」


「ゴウはそもそも仕事量が俺やセイラの倍以上あるからな。寧ろ1乙で済んだのはラッキーだろ」


「そういう意味では、私のデスが一番情けないな」


「セイラの場合はまた状況が違うでしょ。あれって多分戦闘中一回しか出なかったアクションだし、対応できなかったのも仕方ないわよ」


「希少個体とは言え、この地域での希少個体に手こずっていたら、ネルフレッドやシルクじゃあ何回死んでも足りないだろうな」


オセリアは大陸の中で中間層に位置する難易度だ。


 ネルフレッドはモンスターアベレージ195の超鬼畜難易度エリアであり、シルクはそれに及ばずともオセリア以上の高難度エリアやダンジョンが林立している。レイデルやクロアでさえ未探査領域が存在する。案外、低レベル層向けエリアにこそ別格レベルのダンジョンが出来てたりするかもしれない。


「元々難易度が難易度だからね…。僕はネルフレッドには良い思い出が無いよ」


「アタシは寧ろ狩場だったから、親しみ深いわね。今思えばウチのギルドはレベルアベレージ198だったから、そういう意味じゃトチ狂ってたとも言えるけど…」


「シルクには友人が大勢居たな。パーティコンテンツをよく一緒にしていた覚えがある。とは言え、大体皆私よりもレベルが上だったな」


「ネルフレッドのダンジョンはほぼ全て踏破した。シルクは忘れたがな」


そう言った瞬間、うわぁ、っといった感じの目で見られる。おい、何故だ。


「やっぱシンは化け物だよ…。なんでアベレージ199の六人パーティでもクリア出来ないのをソロでクリア出来ちゃうのさ…」


「重度のゲーマーって救いようないわよね」


「ソロで最高難易度ダンジョンをクリアしてしまったら、最早このゲーム自体オワコンではないのか…」


酷い言われようだ。こっちはソロでやるしか無いから頑張ったってのに。


「俺だって初見でクリアしたわけじゃない。敵キャラの行動パターンを覚えれば大体何とかなる。ランダム攻撃も実際ほぼ攻撃が飛んでこない安置が存在するからな。十回ぐらい行けばパターンとランダム攻撃の攻撃頻度が少ない場所も分かるし、道中の敵のエンカウントタイミングも掴める。なんてことは無い」


「『ネクロマンサー』って本当に強いんだね…」


「特にソロプレイ専門の慎太郎が使えばより、ね。鬼に金棒ってこの事よ」


「『ドラゴンナイト』には無い多段攻撃とデバフ攻撃が魅力だな。確かにそれだけ敵の弱体化と自身の攻撃力が高ければソロクリアも不可能ではないのかもしれない。まぁ、私には到底無理だが…」


何故だ。割と凄い偉業を成し遂げたっていうのにどうしてこう否定的なニュアンスが強いんだ。

慎太郎は納得がいかない、という表情でジンジャエールを流し込む。

炭酸が喉に刺さる。


「そもそも俺はこのジョブが流行ってない事の方が驚きだけどな。使ってみれば分かるけど、結構な優遇のされ具合だぞ?」


「いや、でもそれなら僕は『バーサーカー』に走るけど。多段攻撃に状態異常、スピードに関しては若干劣るけど、タフネスもある。まぁ、リーチが問題かもしれないけど…」


「同じマジシャンベースなら『バトルソーサラー』にするわね、アタシなら。チェインシステムで対ボスに関しては一級品よ。問題はMPの消費が馬鹿みたいに激しい所だけなんだから」


「圧倒的タフネスと攻撃力、機動力を有する『ドラゴニュート』も中々だぞ。ソウルリンクで色々なドラゴンの特性を引っ張って来れるし、パッシブスキルでステ強化値が全職中最も高い。攻撃スキルも優秀だが、多段ヒット系が少ないのが難点だな…」


「そういう意味じゃマジシャンベースなんだから紙防御は当然として、他にほぼデメリットの無い『ネクロマンサー』は相対的に最強になるんじゃないか?」


「うーん…」


「確かに…?」


「そう言われれば、そうかもしれんな…」


『ネクロマンサー』が実は全職中で最も強いんじゃないか説が出てきた。

まぁ問題はスキルによってマチマチなリーチを上手く詰めるのが相当難易度が高いという所だ。


 全職中、スキルによるリーチのバラつきの激しさは一番なんじゃなかろうか。何せ一番遠くて、『ホークアイ』(弓系ジョブの四次転職、リーチの長さが全職中一位)に及ぶのではないか、というレベルで、一番近くて『パラディン』並みである。そのくせクールタイムを考慮してスキルを組み合わせると、本当に前後左右に滅茶苦茶動かされるのだ。既存のマジシャン系ジョブでは決してない。


オールレンジと言えば聞こえは良いが、その実、結果論としてオールレンジなだけなのである。


「まぁ最強職談義は永遠不滅ってのが相場だ。ここいらで止めておこう」


「そうだね。一時期某掲示板で論争始まって凄かったし」


「結局プレイヤーのほぼ全員があのスレッドを鑑賞していたのだから、仰天エピソードだな」


「サバがパンクしそうになったらしいわね、アクセスが続いて」


オンラインゲームにおける「最強職」は結局存在しないのだ。


 その人のプレイスタイルによっては薬にも毒にもなるキャラ達。現に慎太郎が『ネクロマンサー』を使えばワールド二位にもなれる。だが、轟やいづな、聖羅が『ネクロマンサー』を使ってもそこまではいけなかっただろう。逆に、慎太郎が『パラディン』や『ハイプリーステス』、『ドラゴンナイト』を使用していても皆のようには強くなれなかっただろう事は間違いない。


ジョブとの出会いも一期一会だ。

自分に似合う職業を見つけて転職を重ねるしかない。

社会の縮図だ。慎太郎は口の中に残る苦みをジンジャエールで流し込む。


「取り敢えず、宿屋を探そう。そこらの連中みたいに路上で一日を明かす趣味は無い」


割と大きめな声で発破をかけてみるも、特別反応無し。

オープンテラスだから聞こえる連中には聞こえているはずなのだが。

まだ精神的ショックがでかいのだろうか。


 慎太郎のように、現実世界で失うものが特別無いと悲観的にならなくて済むが、こうして落ち込んで死んだように過ごしている連中は、少なからず慎太郎より充実した現実を過ごしていたのだろう。そう思うと、いづなは良いとしても、轟や聖羅も大して現実に満足していなかったという事になるのだろうか。


「(プライベートに踏み込んで話すような関係じゃ、まだないよな)」


どうせ時間は腐る程あるのだ。

若干出来上がってしまった轟と、ほろ酔いの聖羅を支えながら歩くいづなを携えて。


徐々に暗さを増していく街並みを、街頭に導かれるようにして進む。

今日は、上等な宿に泊まってやろう。





◆◆◆





 翌日。


濃い一日を過ごした反動か、若干淡白な一日を過ごしたくなる。


 惰眠を貪り、昼過ぎに起きて、ぐだっとしながら昼飯を食べて、夜遅くまでゲームをして、眠る。最高のサイクルだ。人としては最低だけれど。ただ、慎太郎にとってのゲームが今やリアルであり、自分自身が動いて戦わなければならないという難儀なシステムになってしまった。


さすがにダラダラとはしていられない。

とは言え、昨日は全員疲れがピークに達していたので、皆揃って起きたのは昼過ぎだ。

赤信号 みんなで渡れば 怖くない。


昼過ぎまで眠るのだって、一人だと罪悪感あるけど、皆だと逆に親密な関係になったように感じる。


「生活サイクルが乱れるな」


「あぁ」


「いや、慎太郎はいっつもこんなもんでしょうが」


「何を言う、失礼だな」


「大体アンタ重役出勤じゃない…。毎度毎度アタシが頭下げてるんだからね?」


「ははは、シンはやっぱりダメな生徒なんだね」


「やっぱりってなんだ、やっぱりって」


そんなあからさまにダメなヤツのオーラは出てないはずだ。

慎太郎は心外だ、と言わんばかりの表情を浮かべる。


「いやいや、何かいづなとのやり取り見てると特にね」


「ゴウの言わんとするところは分かるな」


「何でお前までシンパシーを感じてるんだ聖羅」


「このなんていうか、傲岸不遜というか、泰然自若というか、邪知暴虐な感じがね」


「最後は絶対違うぞ」


「軽佻浮薄よりは随分とマシなのだ、気を良くしておけ」


「最低限と比較されて喜ぶような感性は無い」


今日は随分と軽快にトゲを飛ばしてくるじゃないか。

慎太郎は昨日の連帯感を思い出しながら、一歩進んで二歩下がる、というフレーズ思い出した。


「今日は…そうだな、サブジョブ関連について試してみるか」


慎太郎が切り出すと、全員が食いついてくる。


「それはアリだね」


「アタシも薬剤師になりたかったから丁度いいわね」


「やはり鍛冶師は必須ジョブだろう。物理攻撃値にプラスももらえる。武器も作れる、最高だ」


「お前ら昨日より全然やる気あるじゃねえかよ」


昨日よりポジティブな雰囲気を感じる。

確かに、内職系のイベントだから心温まる感じがしないでもないが。


「いやいや、そんなことはないよ、僕らは至って真面目だよ、前日から」


「そうよ。それにまだアタシ達だって混沌の渦中に居るんだから、ハートフルでハートウォーミングな時間が必要なのよ! それには内職しかないわ、絶対、異論は認めないから!」


「自己鍛錬も重要だぞ、シン。現に私の鍛冶師としての技量が上がれば装備に掛かる費用も安く済む。いづなが薬剤師になれば強力なバフや回復効果のあるポーションも見込める。ゴウは元々デザイナーだ。質の良いアクセサリーが出来れば、注視されない隠れた部分でほかの連中と差を広げることが出来る」


「鍛冶師の装備製作にも、薬剤師の薬剤調合にも、装飾家の装飾品製造にも、製作レシピが必要だろうが。結局既存の物しか作れないのに、なんでそこまで楽し気なんだ。百歩譲っていづなと聖羅は認めよう。元々『ファーマー』と『コールマイナー』は捨て職呼ばわりされてたからな。ステ強化以外の面でほんとに死にジョブだった。救済処置に心がときめくのも分かる。が、『デザイナー』自体は既存の職だろう。今更物作りに目覚めたとけ府抜けたことを言うわけじゃないだろうな?」


「いやいや、今回追加された『アルケミスト』と組み合わせれば、より強力なアクセが作れるんだよ。かっこ良くて強い、可愛くて強い、そんなアクセが僕の手で作れるとなれば、もうそりゃときめくよ!」


あの謙虚な姿勢が売りの轟が身を寄せてまで力説するのだから、本当にそうなのだろう。


 慎太郎はステ強化の面で『ファーマー』を取っていて、レベルも最大にしているが、どうやら追加ジョブはあくまで「物を作る」という観点においてのみ特化しているらしく、ステ補正には影響が無いようだ。一応取るのなら『ファーマシスト』、いづなと同じ薬剤師か、轟と同じ『アルケミスト』だろう。まぁ、今回は連中の都合で慎太郎自身もサブジョブを追加しなければならなくなりそうだ。


まぁいいや。


「分かった分かった。まさかそんな食いつくとは思ってなかったけど、昨日は全員見事な働きぶりだったからな。自分御褒美的なものがあっても良いだろう」


本来ご褒美はもっと自分を癒すものなのだが。

こいつらがしようとしてるのは、鉱石掘って武器作ったり、葉っぱ引っこ抜いて薬作る事だ。

挙句の果てにはワケわからん窯や壺の中で液体を掻きまわす事までするのだから、本当に分からない。


「(こいつら、本当の意味で『SSO』楽しんでんなぁ…)」


ちょっと尊敬してしまう。

こんなミニコンテンツで楽しめるというのは、羨ましい。


 リスクリターンを考慮すれば、狩りで経験値と同時に金を稼いで物販組からフリーマーケットで買えばいいのである。確かに値は張るが、未強化品を購入して各自で強化すれば費用も嵩まずに済む。結構な強化品が手頃な値段で売られている事も多々ある。いくら材料費が無料で取れるからと言って、確定でそれが出るわけでなし、鍛錬したものが何十個と掛かる上に製作レシピまで見つけてこなければならない。手間と苦労を考えれば作ってもらったものを購入する方が手っ取り早いと思ってしまう。


苦労を楽しめるのも才能か。


「それじゃ向かうぞ。クリエイターエリア」


「「「おおーっ!!」」」


くっそ、場違い感とテンションの温度差が辛い。

朝から、いや昼からだが、最早スタミナがごっそり削られた感覚である。


「(ま、気晴らしには丁度いい。アイツらはああ見えても、この一週間対人関係で色々追われてたみたいだし、一人の世界に浸れる時間は、確かに重要かもな)」


それに。


「(少しばっかり情報を整理したい。やはりNPCの問題は結構深刻なように感じるしな…)」


嫌な予感、というやつである。

この予感が的中しないでくれていると有難いのだが…なんて。


そう思えば思うほど、良く当たるのを慎太郎は経験してきた。


「(気負わず行こう。別に可能性があるだけで、そうだと決まったわけでもない)」


意気揚々と、足取り軽やかに進む三人の後ろ姿を見ながら。

一人距離を空けつつ、その後ろに続く。


まだ日は高い。一日はこれからだ。



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