1日前
「アルト・テナーとクラ、そこもっと丁寧に」
「「はい!」」
木曜日。文化祭まであと1日だ。
「木管、もっと音量大きく。逆にトランペット。もっと抑えないとうるさすぎ。メインは木管高音なんだから考えて」
「「はい!」」
練習はいつも以上にきつく、部員たちもヘトヘトだった。
だが、3年生は一つ一つ注意されたことを受け入れて、「「はい!」」と、大きな声で返事する。
凛奈はハッとした。
『先輩たちは、これが最後の練習なんだ。私もしっかりして安心して先輩たちに引退してもらいたい!』
部員全員が必死で練習した。
小林は満足したように、
「今日の練習はここまでです。今から講堂にセッティングさせて、打楽器を運んでください」
「「はい!」」
「打楽器! スペース取りすぎ! 管楽器のイス置けないよ!」
「クラもっと詰めてー!」
講堂で55個のイスを並べる。
音楽室以外の場所でのセッティングはスペース感覚のせいで時間がかかる。
「よぉーっし! おっけー! みんな席についてくださーい!」
「「はい!」」
唄華がいつものように前に立つ。
唄華が前に立つのもたぶんこれが最後だ。
今していること、全てがこのメンバーですることの最後なのだ。
小林と池田が講堂に入ってきた。
「明日、7時に集合です」
「「はい!」」
「それと、明日の本番、これがこのメンバーで演奏する最後の本番です。しっかり気合いいれてやりましょう」
「「はい!」」
「それでは終わります」
「ありがとうございました!」
「「ありがとうございました!」」
3人はバスに乗った。
「ねぇ、」
樹奈が前を向きながら言った。
「明日の本番、がんばろーね」
それは、いつもの樹奈とは違う、少し大人っぽい笑みだった。
「え!? あんたどうしたの!?」
「え? なにもないよー!」
「あ、戻った」
2人は笑ったが、樹奈だけはなぜかわからないようだった。




