やる気&根性!
「ひっく……ひっく……」
2年生のいなくなった音楽室で、誰かのしゃくりあげた泣き声が響く。
「あたし、練習行くわ」
と、立ち上がったのは、意外にも麻由だった。
「こんなところで留まってても、上手くなれるわけじゃないし。なにより、先輩にそう思われてるって事はうちらの練習不足なだけなんじゃない?」
麻由はそう冷たい言葉を突き出し、ビブラフォンを動かした。
「夢跳愛、行くよ」
「え、う、うん」
と、夢跳愛も慌ててシンバルを持って麻由に付いて行った。
「なによ、麻由」
「ほんっと、意味わかんない」
ヒソヒソと麻由への悪口が聞こえてくる。
「亜利沙っち、マリちゃん、樹奈たちも行こ!」
と、樹奈も立ち上がった。
次々と部員たちが立ち上がった。
「凛奈ちゃん、うちらも行く?」
と、聖菜が声をかけた。
「うん。カナも」
「うん」
3人も立ち上がり、音楽室を出たが、凛奈はクラリネットの3人が気になった。
「ごめん、やっぱ先行っといて」
と、凛奈は走り出した。
「もも、菜穂っち、ひかりん!」
3人の練習する教室を開ける。
すると、3人は驚いたように顔を上げた。
「凛奈……。どうしたの?」
光里の目は、こすられていて腫れていた。
「……え、と、大丈夫?」
その言葉しかかけることができない。そんな自分を情けないと思った。
「もういいの。大丈夫だよ。麻由が言った通り、私たち、ずっと泣いてても上手くなれないから」
そう光里が言った。
「もう、かえっていいよ……」
「必死で練習するって3人で決めたから」
と、バチンッ!と百華が顔を叩き、そして、いつものあの笑顔へと戻った。
「そうだよ! 和音先輩たちをびっくりさせるんだから!」
「そして安心して先輩たちに引退してほしいから……」
3人はやる気に燃えていた。
「……そっか、そっか! 私も頑張るよ! 絶対に負けないよ!」
「私たちの方が上手くなってみせる!」
「私、練習戻るね! バイバイ!」
「ばいばーい!」
と、凛奈が教室のドアを閉めたと同時にクラリネットの音が聞こえてきた。
凛奈は安心して2の1へ向かった。
凛奈は、ベランダでサプライズの曲を練習する。
すると、隣のベランダからオーボエの音色が重なった。藍だった。そして、渡り廊下からフルートの2人も参加し、向かいの棟の窓の空いた教室のからクラリネット・バスクラリネットの3人の音が合いの手となる。ビブラフォンの音に乗せ、チューバ・コントラバスも参加し、シンバルのソロがなる。そして、後ろから加奈子と聖菜の音も加わり、アルトサックス、テナーサックス、バリトンサックスのソリが始まる。
トロンボーンとホルンとユーフォニアムがメロディーを奏で、トロンボーン、トランペットでファンファーレを吹いた。
1年生全員の音は、学校中に響いた。




