トランペットへの気持ち・憧れ
金曜日。凛奈は一刻も早く練習したい気分だった。
授業が終わるとすぐに部室へ向かう凛奈。
色が少しはげているトランペット。
右親指を添える部分は、変色して銀から金になっている。だが、このザラザラしたのがとても気持ちよく、トランペットパートでも謎の評判があった。
今日は金曜日だ。凛奈とって金曜日は華の金曜日と言ってもいいほど嬉しいものだ。大嫌いな勉強に追われることなく、部活だけに励むことが出来る。
だが、基礎練をしていると、少し気になることがあって集中出来ない。藍だ。結局あれから喋っていない。
凛奈の方から避けてしまっているのかもしれない。
姉の杏に聞くと、藍の第一希望の楽器は、トランペットだった。私と同じ楽器がやりたい!って思って吹部入ったんだって。と、少し照れながら話していた。
驚いた。と言うよりもショックだった。
凛奈は第三希望。藍は、トランペットも凛奈ほどではないが、そこそこ吹けていた。だが、凛奈がいたから、滑り止めでオーボエに入ったのだろう。
私のせいだ。私の、せいで。そう思っているうちに、避けてしまっていたのかもしれない。
謝りたい。避けていたことはもちろん、藍はトランペットがやりたかったのに、トランペットよりも別の楽器がやりたかった、とずっと思っていたのだ。
『あー! もう、どうしたらいいの……?』
これからは、藍の気持ちを、トランペットになれなかった人の気持ちを背負って吹かなければいけない。謝っても、謝らなくても、凛奈は罪悪感でいっぱいだ。