新しい塾
「ただいまー。」
「おかえりなさい、凛奈。」
リビングに母の姿があった。
「あ、母さんただいま!珍しいね、仕事は……」
ピラッと見せられたのは、1枚の紙だった。
「これはなに?母さん、こんなもの初めて見たんだけど。」
その紙は、期末テストの理科の答案用紙だ。
点数は……あきらかに平均以下だ。
「えっ、と、その、ち、中間よりも難しかったし、それにね母さん、」
「言い訳はやめなさい!」
「は、はい……」
「もうっ。明日から塾に通いなさい。もう申し込みはしてあるから。」
「朝緋は?」
「部活があるから無理でしょう?」
「……はぁーい。」
『私より朝緋の方が点数悪いのに。』
「えーっと、xに−5を代入して……」
『??代入って??』
ただいま、塾で数学の勉強中。
「わかりますか?」
「うーん……?」
凛奈は理科と数学が苦手だ。
ガラガラっ。
誰かが教室に入ってきた。
「ばんわー」
「あ、海内くん。遅いじゃないですか。30分遅刻ですよ。」
「あーもうはいはい。怒らないでよ塾長。30分ぐらいいいっしょ。…あれ?香坂?」
「え、海内先輩?」
「あれ? 知り合いなの?」
「うん。部活のコーハイ」
「へぇー。そうなんだ」
海内 蒼は現在2年生で、
北原中吹奏楽部でトロンボーンをしている。
「なに、方程式やってんの?」
「はい。でもあんまりわからなくて……」
と、凛奈が苦笑いする。
「俺が教えてやろっか?」
「え、いいんですか?」
と、塾長が呆れた顔で、
「いいですよ。親しい人から教えてもらう方がわかりやすいし」
「りょーかい」
と、凛奈の隣に座った。
「えーっとね、左側で−だったらさ、右側に持って行ったら+になるわけ」
蒼は凛奈に方程式のルールを説明している。
「は、はい」
「ま、こんなとこかな。もう1年帰る時間だろ?」
「あ、はい。ありがとうございました」
「おう。また教えてやるよ。じゃーな」
「さよなら!」




