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羨ましい
「はぁ〜」
『やっぱ小学校の時より練習キツイ……』
パート練習が終わり、マウスピースを洗いにきた凛奈。すると、トイレからオーボエパートの濱田藍が出てきた。
『あ、濱田さん』
凛奈の先輩、杏の妹だ。
『ちょっと声かけてみよっかな……でもちょっと図々しいかな……』
凛奈が戸惑っていると、藍がこちらへ来た。
「あのさ」
激しく動揺している凛奈と対称的に、
藍は微笑していた。
「いいね。トランペット。希望者が多くてはいれなかったなぁ」
「そ、そうだよね!カッコいいし! でも、オーボエの音、私好きだよ!」
気に障ったのか、藍はうつむく。
「わたしも、やりたかったなぁ」
と、ボソッと言った。ハッとした様子でこちらを見る。そして、
「ごめん、気にしないで。あ、私の事は藍でいいよ。じゃあ、もういくね。バイバイ」
「うん、またね」
凛奈はすぐに2の1に戻った。