隣の存在 加奈子ver.
認めたくない。こんな自分。
私は、私はずっと凛奈に嫉妬してたの?
自分に自信がないから、都合いい時だけ『初心者だから』って言って、『経験者はいいよね』なんて、愛菜が言う通りこの4ヶ月間、何度も言った気がする。
でも、なんであの場所で凛奈は弱音を吐くの?
あと2週間しかないのに。
悔しい思いしか私にはない。隣よりももっと上手くなりたい。でも、どれだけ頑張っても追いつく事は出来ない。
逆に、凛奈は追いつかれることがない余裕感を持っているはずなのに、なんで、あんな事を言うの?
それに……
〈ピロリロリン♪ピロリロリン♪〉
あ、電話だ。マイから。
「もしもーし」
〈あ、もしもし、カナ?〉
「んー?」
〈愛菜から聞いたよ。凛奈と喧嘩したって〉
「……だからなに」
〈カナは、経験者だからって言っていたよね。
でもね、初心者でも、経験者でも、時には弱音を吐きたいと思うこともあると思うの〉
「なにが言いたいの?」
〈聞くけど、カナはもうトランペットを始めて4ヶ月です。あなたは初心者ですか?〉
「……。わからないよ」
〈でしょ?〉
「あのさ、マイ、」
〈うん?〉
「なんで、凛奈は私の成功を喜んでくれるの?他人のことなのに。隣で競い合わないといけないのに」
〈あー、そっか。カナはそういう風に受け止めているんだね。あのね、確かに隣同士で競わないといけないかもしれない。だけどね、隣っていう存在は、競い合いだけじゃなくって、そうだね……、団結とか、助け合いも必要なの〉
「……」
〈もう1度、考えてみ?コンクールまでに〉
「わかった。ありがと」
〈うん!ばいばーい〉
「ほーい」
団結、か。
そういえば、私いつも凛奈に助けられてばっかりだ。
私に、出来ることってなんなんだろう。




