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北原中学校吹奏楽部  作者: 星野 美織
県大会に向けて
45/423

嫉妬

「えーっと、輝夜姫、Kから通します。」

「「はい!」」

部員たちの返事が音楽室に響く。

ppから始まり、ウィンドチャイムでクレッシェンドがかかる。

凛奈が深く息を吸い、ソロが始まる。

カンカンッ!

小林が指揮棒で譜面台を叩いた。

ソロが始まってたったの2小節で音楽が止まった。

「香坂。そこのソロやってみろ。」

「は、はい!」

凛奈は、大きくブレスした。

〈♪〜♪〜〉

「ストップ!」

『え?』

また止められた。

「お前、満月見たことあるよな?」

「は、はい。」

「お前は、月の輝きを表現できていない。もう一回やってみろ。」

「はい!」

〈♪〜♪〜…〉

「違う!」

突然、小林が怒鳴り、みんなビクッとなった。

「お前、いま月をイメージして吹いていたか?」

「い、イメージしました。」

「じゃあ聞くけど、お前はいまの自分の演奏に自信あったか?」

「え、」

凛奈は少し戸惑った。

「どうなんだ?」

小林が問い詰める。

「まだ、完璧ではないと思います……。」

「いつになったら完璧になるんだ?」

「……。」

「次までにできていなかったらそこ星野に吹いてもらうから。」

「…はい……。」

と、小林が時計を見た。12時半だ。

「じゃ、昼休みにします。」

部員たちは慌てて立ち上がった。

「ありがとうございました!」

「「ありがとうございました!!」」

『今日の午後からはずっとパート練です。」

「「はい!」」


『なんで? 桜先輩にテストしてもらったし、いつも通りに吹いてたはず……。なにがおかしかったの?』


「はぁ……」

凛奈は、昼食の時もずっとモヤモヤしていた。

「…な、んな、凛奈、」

気付いたら、マリアがずっと呼んでいた。

「あ、ごっめん! 聞いてなかった!」

「大丈夫? 最近、無理しすぎな気がする……」

「大丈夫だよ! 私、食べ終わったから練習いってくるね!」

と、凛奈は去って行った。

「マリア、凛奈のこと心配……」

「うん……そうだよね。さっきの事ずっと引きずってるみたい」

マイも心配そうな目でみた。

「私、凛奈のとこ行ってくるよ!」

と、加奈子が立ち上がった。

「よろしくー!」



〈♪〜♪〜〉

凛奈は、いつもの屋上で練習していた。

「はぁ……」

『なにが違うのかな。いつも通り吹いてたし、いつも先生に注意されなかった。なんでさっき先生に注意されたんだろう。なんで、なんで……』

凛奈は、考え込んでいると胸が苦しくなった。

ストンとしゃがみこみ、顔を伏せた。

「凛奈、どうしたの」

加奈子が、凛奈の背中をポンっと叩いた。

「カナ、」

と、加奈子もしゃがみこんだ。

「私、わからないよ。どうしたらいいんだろう」

「そんなの、みんな思うことだよ。ネガティブに受け止めすぎ」

加奈子は空を見た。

「先生も次にできていなかったら桜先輩と交代しろって……。なにが違うのかもわからない……。私、私ソロ吹けないよ……!」

いままでの思いがこみ上げてきた。

初めて泣きそうになった。

「……。 凛奈さぁ、少しワガママだよ」

「……ぇ……?」

「1年生なのに、コンクールに出ることができて、しかもソロを貰ってる。ちょっとぜいたくすぎない?

経験者だから、経験者だからって……。こんなこと当たり前じゃないの。わかる?凛奈は経験者だからわからないよね。初心者の気持ち。私だってコンクール出たいし、ソロだって吹きたい。凛奈は実力でコンクールに出れるんじゃないし、ソロを取ったんじゃない。経験者だからなれたんだよ。そんな弱気でさ、少しは初心者の事も考えたら?!」

加奈子はそう言ってスタスタと去って行った。

「なに、ずっと経験者のことそんな風に思ってたんだ」

と、隣の校舎の屋上に立っていたのは、愛菜だった。

その頃、職員室。

「小林先生。」

「あぁ、池田先生。」

「あの、凛奈ちゃんなんですけど……。」

池田は、いつも合奏を横から見ている。

小林は、コーヒーのはいったカップを机に置く。

「池田先生も気付いていましたか。」

「はい。最初、あの子が入部して、トランペットの音を聴いた時、びっくりしました。やっぱり、あの子は……、」

「もっと音楽に入り込むことができる。」

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