謝罪
「凛奈!」
気づくと、寝ている凛奈の隣に桜がいた。
『ここは……?』
「あの、私一体……」
「凛奈、覚えてない? 体育館裏に積んであった机が倒れてきて。頭打って気を失って……」
「───帆南先輩は!?」
だんだん記憶が戻ってくる。がっと桜の両腕を掴む。
「帆南……? 帆南が倒したの!? うそ、そんな……」
と、桜が凛奈の腕を掴み返した。
「あ……、帆南先輩は何もしてないんです。たまたま見かけて追いかけて……たしか、私が足を引っ掛けて。だから、帆南先輩は悪くないんです。ほんとに」
「なんでそこまでかばうの……」
桜は許せないようだ。
「2人とも、ちょっといい?」
ぴょこりと池田が顔を出した。
「?はい……」
ガラリと扉が開く。
「ほ、帆南……?」
桜も凛奈も驚く。
「凛奈……、その、ごめん……ッ!」
深く頭を下げる帆南に、言葉が思い浮かばなかった。
「あんた、謝ったら許されるとでも思ってんの?」
ありえないと言わんばかりの顔をし、帆南の胸ぐらをつかんだ。
「……わかってる」
ぶらぶらと桜の腕に操られたまま、下を向いた。
「桜ちゃん、落ち着いて。須野さんも反省してるからこの場にいるんじゃないの」
「先生もなんでかばうんですか!」
ばっとその手を離した。凛奈は黙って見ていることしかできなかった。自分のことなのに、何故桜はここまで必死になっているのだ。
「いつかこんなおっきいことになると思ってた……!」
と、爪を噛んだ。
「ごめん。桜も、凛奈も。先生も。もう吹部に関わらないから。ケースとかの落書きも、ごめん」
肩を落とし、重い言葉が帆南の口から告げられた。
「……私は大丈夫ですよ先輩。謝ってくれたから。それだけでいいんです。桜先輩も」
「……私は許さない。けど、凛奈がそれでいいなら」
ふいと顔を晒した。
「……ほんと、ごめんね」
「凛奈ちゃん、また後で来るから待ってて」
と、3人は保健室を後にした。
半透明な窓越しに、3人の姿はまだ見えた。
「私は許さないから」
と、桜だけ反対方向に歩いていった。
「……すみませんでした、先生」
「うん。じゃあ、2学期にね」
と、池田だけが桜と同じ方向に走って行った。
「桜ちゃん」
「先生……」
桜に追いついた池田は、桜の隣に来た。
「帆南ちゃんのことは」
「もう、いいよ。でも、なんで凛奈はあの子のことを許したのか」
桜が池田に敬語を使わない時は、本当に困っている時だけだ。
「そうねぇ……。きっと、心がまだ小学生だから。何ヶ月か前まで小学生だったから。だから、そこまで深く考える必要はないよ」
と、桜の頭を優しく撫でた。




