焦り
「あんたなんか、独りになっちゃえばいいのに」
ああ、夢だ。また、帆南だ。
「3年生を差し置いてソロに選ばれるなんて」
「天才?」
「何様気取り?」
ぐわぐわと耳に入ってくるのは陰口ばかり。
「や、やめて……!」
思わず耳を塞いだ。それでも、指の隙間から入り込んでくる。
桜の言葉を思い出した。
「選ばれたのは、1番だから。その自信を忘れちゃ行けないよ」
そうだ、と桜の声を思い出す。
「私が、1番なんだ───!」
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「先生、香坂さん見てませんか?」
「見てない」
あっさりとそう言われ、紗江は顔をしかめた。
「いないのか?」
「音楽室に薬取りに行ってくるって行ったきり戻ってこないです」
「もう戻ってくるんじゃないか?」
「そうだといいんですけどー」
と、毛先をいじる。
「あ、お前まだメイクしてるのか」
「いや、してないっすよ。なんで髪触っただけでそーなるんですか。してるかどうかわからないんですか先生」
こんなにも親しくつるむのは紗江くらいだろう。
「あ、違う違う、そんなことよりも凛奈ですよ」
「外に出てるんじゃないか?」
と、ベランダから外を覗く。
「まさか」
そう肩をすくめる紗江をするりと抜け、小林は行った。
「お前、パートに戻っておけ」
「え? なんで───」
「いいから。あ、池田先生。ちょっと」
なにか慌てた様子の小林。不審がったものの、あまり深く関わらない方が正解。そう判断した紗江は、大人しく戻っていった。




