目撃
「ほら、やっぱ帆南だよ……」
紗江が言う。
「どうする、とりあえず暗証番号を変えるくらいしか出来ないよ」
「とりあえずそうして、2学期まで様子見てみよ!」
『本当に、大丈夫かな……?』
不安で仕方ない凛奈の頭を、桜がポンっと手をのせた。
「大丈夫! うちらも頑張るから!」
「……はい」
凛奈はそれでも不安が消えなかった。
そして次の日、凛奈の私物は全て綺麗になり、
嫌がらせを受けることは無くなった、はずだった。
「すみません、桜先輩、薬とって来ます」
「いってらー」
パート練習中、凛奈は教室を出て、音楽室へと向かった。
「……え?」
見覚えのあるパーカー。そうだ、監視カメラに映っていたものと同じだ。帆南。そう思い、その影を追った。こちらに気付いたようで、走り出す。
「! 待って……」
散々な嫌がらせを、またしにきたのか。そう思うと腹が立ち、夢中で追いかけた。
ダンッ、ダンッ。
バスケ部のドリブルの音が聞こえる。
体育館の裏側。帆南の足は止まることなく走り続けた。
『くっ……速い』
「先輩、待ってください!」
と、何かに足が引っかかり、転んでしまった。
帆南は、そのまま走って行ってしまった。
「う……痛」
ガラガラガラッ!
“何か”が倒れ、凛奈に直撃した。
「な、に……?」
体育館裏に積まれていた机が、一気に倒れたのだ。
凛奈は何が起こったのか分からないまま、意識が途切れた。




