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北原中学校吹奏楽部  作者: 星野 美織
夏合宿in和歌山
354/423

新たな戦力の登場

「ああー。もう合奏の時間だやだなー。まだ出来てないのにー」

合奏のある練習室に向かう途中、わざとらしくフラフラと歩く乃愛。

「クラと同じとこ出来たの?」

「それがまだなんですよー」

「あと2週間切ってるけど?」

「うあー……」

3年生2人からの心配に悩まされ、首を傾けた。

「あれ、聖菜は?」

「あ、後ろ」

彼女は凛奈たちの後ろでキョロキョロと周りを見ていた。

「あ、ごめん……。なんの音か気になって。これ」

聖菜の言ったことに、確かに、と耳を傾けた。

ファゴットの音ではないようだ。バスクラリネット……にしては音が高すぎる。

「誰が吹いてるんだろう……」

と、その音が止まった。

《ピィィィィィイイイイイッ!》

キ───ンと甲高い音がトランペットパートメンバーの耳に突き刺さる。

左耳から右耳に、1本の棒が貫通したような。

しばらく沈黙が続いた。

「げっ。時間やばいよ。行こ行こ」

あと5分も経たずと合奏が始まる。呆然としていたトランペットパートが、また動き出した。

「「よろしくお願いします!」」

合奏が、始まる。

「チューニングから」

「「はい」」

と、小林が伊織に目を向けた。

コクリと頷き、伊織は少し緊張した表情でチューニングB♭を鳴らした。

それを聴き、次々とB♭が鳴らされる。

前に立っているのは、小林、国木田、そして池田姉妹。左端にはサポートメンバーの1年生が座っている。

「───はい。じゃあ、午前中は課題曲中心でいく……けど、とりあえず最後には全部通します。その時サポートメンバーはタイムと録音、あとビデオもお願いします」

「「はい!」」

「あと、昨日気になったところ、まだ言ってなかったから。課題曲最後4小節間のテンポがもつれ気味───」

ギィィ……

小林の話の途中で、入口の扉がゆっくり開く音がした。

皆の視線は楽譜からそちらにずれる。

小林も一瞬入口の方を確認したが、そのまま話を続ける。

「8分音符の意識にプラスで、」

柚子だ。右手に器用にクラリネット2本を持っている。そしてらもう片方の手に、バスクラリネットよりも小さく、だがクラリネットよりは大きな楽器。

「E♭クラと……アルトクラ?」

「うっそ、2本とも柚子先輩がするの?」

ざわざわと周りがうるさくなる。

小林はそんなことお構い無しに続けた。

「タッカをタイにしてるかんじで2拍目をしてください」

ストン、と彼女が席に座った時、少しだけ異様な雰囲気となっていた。


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