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北原中学校吹奏楽部  作者: 星野 美織
夏合宿in和歌山
352/423

パート練習の様子

「ロングトーンします」

「「はい!」」

トランペットのパート練習は、浜辺近くのベンチ───真夜中に、柚子と話したあの場所で行われた。

カチ、カチと均等に振れるメトロノームは、杏の私物だ。

「1、2」

杏の合図に合わせ、3、4拍目にブレスをする。

ゆったりと深くブレスして、そして歌うように。

これがいつもトランペットパートの心がけていることだった。

低音を鳴らし終え、杏は納得がいかないようにうーん、と唸った。

「どう? 早苗」

「なんか、混ざらないっていうかさ。みんな音が硬くなって、響かなくなってるかな」

早苗の意見に頷き、後輩たちに伝える。

「ブロックみたいに硬かったら、ぶつかり合うでしょ? だから、もっと柔らかい響きでお願いします」

「「はい」」

最近はこのように、3年生2人で協力してパート練習が進むようになっていた。

「じゃあ1人ずつ加わっていこうか。乃愛から」

「はい」

乃愛がB♭を鳴らすと、隣にいた茜がじっとそれを見て、ぐっと乃愛の背中を押し、乃愛も気付いたようで姿勢が正される。

「次、茜」

はい、と余裕の笑みを浮かべ、乃愛に音を寄せる。

杏と早苗は頷き合い、次に夢花が入るように指示した。

「夢花ちゃん、音暗いよ。乃愛も、だんだん高くなる」

「「はい」」

とは言いながらも、3人の音は寄せ合い響き合っている。1年生ながらなかなかの実力だ。

そんな彼女たちの音を潰さぬよう、凛奈は慎重に、丁寧に加わった。

「じゃあ、休憩しよっか」

「はいはいっ! 先輩、練習室行って涼んできてもいいですか?」

と、挙手するのは乃愛だ。暑さでぐでりと頬が赤く染まっている。

「いいよ」

「私も行ってきます」

「あ、そうだ、ついでにあたしのチューナー取ってきてもらってもいい?」

「わかりました」

早苗の返事をして乃愛を見ると、迫り来る暑さで機嫌が悪いようだった。

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