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北原中学校吹奏楽部  作者: 星野 美織
夏合宿in和歌山
341/423

ゲスト

「うおあああ!!! ひっろおおい!」

「ちょっと乃愛! 手伝いなさい!」

ホールを走り回る乃愛と、パーカッション1年生の小笹蓮のやりとりは何故か既視感(デジャヴ)を感じる。

「海だあああ!!!」

「樹奈! はやく運びな!」

ああ、きっとこれだ。楽器を手に持ったまま、フロントから見える海を見て叫ぶ樹奈と注意する麻由。

「パーカッションはしっかりしてるなあ」

茉莉花が呟きながら、凛奈の後ろを通り過ぎていった。


「じゃあ、基礎合奏を始める前に……」

今日から3日間貸切のホールは、合宿所にあり、ホール棟と部屋に分かれていた。

パタリと、背後でドアが閉まる音がする。

「こんにちはー」

スラリとした背に、きりりとした眉。顔のパーツ全てバランスが整った、これぞイケメンであろうという男性。

「こ、こんにちは!」

立ち上がったのは茉莉花と鈴音。そして愛菜、巫愛、彩音、都……葉月市吹奏楽団のメンバーだ。

「葉月市吹奏楽団指揮者の国木田(くにきだ) (じゅん)先生です。国木田先生はプロのサックス奏者でもあります。今日からの合宿の3日間と、あと何回か来てもらう予定です」

「どーも、国木田でーす。みんなにはジュンちゃんって言われてます。みんな好きに呼んでください。僕は小林先生の中学時代の1つ下の後輩です」

にかっと爽やかな笑顔を見せる。

「つまり、国木田先生は君たちと同じ北原中学校出身です。午後から池田志穂先生も来てくれます。今日の午後からは木管を紀穂先生と国木田先生、金管を志穂先生と俺が見ます。打楽器は、今日は金管と一緒に。明日からは、沢江先生も来てくださいます」

国木田とは真逆に、いつもの冷静な表情のまま話す。

「部長は相変わらずだなあ」

「その呼び方いつまでするつもりだ」

からからと笑う国木田に、こほんと咳払いする。

「部長?」

1、2年生は小林が中学時代部長であったことは知らない。

「ああ、言ってないんだ。小林先生は中学生の時、鬼畜部長って言われてたよ」

「俺は後輩を怖がらせた覚えはない」

そっぽを向く小林に、部員たちはくすくす笑う。

「で、今の部長は? 誰?」

「わ、私です」

手を挙げた茉莉花は顔が赤い。

「茉莉花かあ。頑張ってる?」

「は、はい!」

さらに顔を赤らめる茉莉花を部員達はにやにや見つめる。

「ほーん、なるほどねえ……」

早苗がにんまりと笑った。

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