心浮かれる
sunflowerコンサートを無事終え、夏休みが始まろうとしていた。
明日に終業式を控えた北原中学校は、蒸し暑さが押し寄せていた。
練習が終わり、トランペットパートは部屋を片付ける。
「あづ───い」
「ほらほら、早く片付けて?」
椅子に座り、幼い子供のように足をぶらつかせる乃愛に注意を呼びかけるのは聖菜。なんだかまるで姉妹のようだ。
「ねぇ、合宿さー」
「ああ、1日目と2日目、肝試しと花火大会だっけ」
廊下から聞こえてくる通り、吹奏楽部では合宿の話で持ちきりだった。
「たしか3年生お2人と、凛奈先輩は、去年アンサンブルの合宿に行っていらしたんですよね」
「あぁ……あれは地獄だった」
茜は何故そんなことを知っているのか。
「姉から聞きました。相当ハードだったようで」
まるで自分はそれに耐え切れるだろうと見せるようにクスリと笑った。
「枕投げとかそんな余裕はなかった」
「ええー」
早苗の声に、乃愛がまたがくりと肩を落とした。
*
合宿は夏休み2日目からで、合宿の前日は休みとなっていた。
「凛奈、前日空いてる?」
全体練習が終わった頃、マイと巫愛と3人で話をしていた。
「合宿前日? 特に、用事とかはないけど……」
「じゃあ、」
2人はにやりと笑い、がっしり凛奈の肩を掴んだ。
「服、買いに行くよ」
「いや、家にある服でいいかなーって……」
「いいじゃん、買いに行こうよ。肝試しと花火とか蒼先輩と2人っきりになるチャンスなんだよ?」
「……」
顔を赤く染め、素直に
「行く」
と頷いた。




