コンサート前日
夏休み3日目。明日はついにコンサートだ。
ジリリリリリリリリリリリリリリリリリリッ!
凛奈は朝緋のうるさい目覚まし時計で目を覚めた。
だが、当の本人はいびきをかきながらまだ寝ている。
「まいっかい毎回うるさいのよ!目覚まし変えろ!」
と、凛奈は朝緋に枕を叩きつける。
「はぁ……お弁当作らなきゃ」
たまには朝緋が作ってくれればいいのに。
凛奈は大きなため息をついた。
弁当を作っていると、朝緋がドタドタと階段をおりてきた。
「なんで起こしてくれないんだよ! 今日試合なのにあと30分で家でないといけないんだよ!」
「何回も起こしたよ! 人のせいにしないでくれる?! あとあの目覚ましほんっとうるさい。私出発まであと3時間は余裕であるのにあれのせいで目が覚めちゃったじゃん! 自分が起きられないのに目覚ましかけたって意味ないじゃん!」
凛奈は不満が爆発した。
朝緋は言い返すことができず、
「う、そ、それは……」
と言葉がつまった。
「もうっ」
凛奈はまたため息をついた。
「凛奈?」
凛奈は樹奈の声で目が覚めた。そうだ。ここはバスの中だ。
「あ、ごっめん! もしかして起こしちゃった!? ごっめーん!」
「ううん、大丈夫。気にしないで」
こんなところで寝るなんて、朝緋のせいだ。
「大丈夫? 凛奈にしては珍しいねw」
マイは軽く笑っている。
「今日さーまた朝緋の目覚ましのせいで5時に目が覚めたんだよねー。それなのに朝緋は起きてないしさー! ほんっと意味わかんないよねー!」
樹奈とマイは、
「ほんっと2人って仲良いよねー」
とクスクス笑っていた。
「よし! 明日は初めて人前で演奏するんだから、今から譜読みしよ!」
と、樹奈がリュックサックからファイルを出す。
「えー、樹奈、酔うよ〜? あんたすぐ酔っちゃうでしょ〜?」
樹奈はマイの言葉など気にせず、
「いくよ〜、1、2、3!」
「たんたかたたったたーたたん!」
凛奈も歌い始め、マイも呆れながらも歌いだす。
「とぅるっとぅとぅとぅとぅるるるー」
「ぷぁんっぷぁーん!」
「たかたかたかたたたたかたかたん!」
すると、
『そこの中学生3人、もう少し静かにお願いできますか』
と、運転手に注意された。
すみませ〜ん!とあやまる。
そして、3人で静かに笑った。マイが
《明日、がんばろーね!》
と口をパクパクさせながら言った。




