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北原中学校吹奏楽部  作者: 星野 美織
2度目のコンクールに向けて
329/423

ナイトフリーマーケット

本番は、まぁ上手くいった、というところだろう。演奏はぎこちない部分があったが、観客たちは温かい拍手を惜しみなくしてくれた。

「こんな機会を与えてくださって、ありがとうございました」

代表の凛奈は、主催責任者である年配の男性に小林と挨拶に行った。

「こちらこそ、楽しい時間をありがとうございました。お嬢ちゃん、しっかりしてるね。来年もまたよろしく頼むよ」

ありがとうございます、と小林が頭を下げた。

「お嬢ちゃん」と言う言葉が少し恥ずかしかったが、来年もまた、そう言ってくれたことに頬はほんのり赤くなっていた気がした。

「凛奈ー! 挨拶終わった? 自治会のおじさん達がさ、吹部にチケット配ってくれたよ」

マイが、チケットを手渡そうと駆け寄る。

マイと凛奈。この2人で屋台を回ろうと事前に話していた。

ギュッ。チケットを受け取ろうとした時、急に袖を掴まれた。皮膚まで巻き込んだせいで、チクリと痛さが混じった。

「……莉々奈? どうしたの?」

凛奈の腕を掴んだのは、拗ねた顔をした莉々奈だった。

「凛奈ちゃんと回りたい」

「……は?」

キョトンとする凛奈に、もう1度言う。

「私凛奈ちゃんと回りたい」

「でも私、マイと一緒だし……」

「……やだ」

と、莉々奈は小さく呟いた。

「なんで? ほら、いつもの友達は? 茜とか奈央ちゃんとか……」

「……」

ぶんぶんと首を振り、小さな子供のように、だだをこねる。

「なに怒ってるの?いい加減に……」

「凛奈」

苛ついた凛奈が怒鳴りかけると、マイはそれをなだめるように名前を呼んだ。3人の沈黙の間に最近はやりの音楽がBGMで流れる。

「私はいいよ。樹奈たちと回るから」

「……いや、いいよ」

「でもほら、莉々奈話したいことがあるんじゃない?」

マイは莉々奈には聞こえないように耳打ちした。顔を近づけられ、彼女のほんのりといい香りがする。

「……ごめんね?」

「ううん、大丈夫だよ」

にっこりと笑う。

じゃあ、とマイが去ったあと、莉々奈は再び凛奈の腕を掴んだ。

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