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北原中学校吹奏楽部  作者: 星野 美織
2度目のコンクールに向けて
325/423

3年間黙り続ける

「凛奈ちゃん。どーしたの」

部屋に入ると、莉々奈が宿題をしていた。

「ちょっとね。話があって」

凛奈の真剣な表情にきょとんとしている。

「あのさ……すごく、言いにくいんだけど。莉々奈と私の事、一緒に住んでいる事。みんなにいつ言うつもりなの?」

その瞬間、やんわりとしていた彼女の顔が凍る。

「いつ、って……言う前提なの?」

「だって……3年間黙り続けるなんて、難しいよ」

今日の茜の言葉をそのまま借りる。

「莉々奈が、友達に家に遊びに行っていいかなんて聞かれたら」

「断るよ」

「私が友達連れてきたら?」

「遊びに来てるだけって言えばいいじゃん」

「それでも!」

凛奈は立ち上がる。莉々奈は、淡々としている。

「3年間、騙すつもり? みんなを。仲間を」

ぐっと唇を噛みしめる。悩みと怒りが莉々奈の唇に跡をつけている。

「騙すって……。もし、みんなが私のこと知ったら? 誰も冗談を言ってくれなくなる。親しくしてくれなくなるよ。今日みたくみんなでお母さんの話したくても、私がいたら気を使ってできない。私はこれからずっと気を使われて生きていくの?」

ゆらゆらと彼女の瞳が感情的に揺れる。

「そんなにみんなのこと信頼できないの? 気を使わなくていいように言ったらいいじゃん」

「凛奈ちゃんは事の大きさわかってないよね。わかるわけがない」

と、冷ややかにため息をついた。

床からヒヤリと冷たい何かを感じる。

「凛奈ちゃんには私の気持ちわかるわけないよ。だっているじゃん、お父さんもお母さんも。私の気持ち知らないで知ったように言わないで! 絶対にみんなに黙ってて!」

お風呂はいる、と言って部屋を出ていった。

机に飾られていた、莉々奈とその両親の昔懐かしい写真を見つめ、

「わかんないよ……」

と呟いた。

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