原因はなに?
璃星は、次の日から部活を無断欠席するようになった。
授業には出席しているのに、部活は3日も無断欠席している。そして一昨日の昼休み、部長副部長が璃星を訪ねて注意した。すると、今度は学校も欠席するようになってしまった。
「なんで? 璃星ちゃん、急に部活辞めるって言い出したの」
樹奈が不安げに右手で頭を抑える。
部活の後、麻由、マイ、樹奈、そしてサポート隊である凛奈と藍で話をしていた。
「私もわからない。でも、原因はパートの可能性は低くないよね」
その言葉に、樹奈は慌ててマイに目を向ける。
「なんで!?樹奈なにもしてない!」
「いや、樹奈が原因とは限らないし、そもそもあの子が部活に来たがらない原因がパートかどうかはわからない」
マイは至って冷静だ。
「あの子ね……小学校の時、もう1人アルトがいたの。その子がいつもトップで……。なかなか自分が辿り着けなかったの」
その時、凛奈の脳裏に浮かんだのは美都だった。
彼女は最高学年になって1年間、凛奈の影で必死に吹いてきたのだ。
「だから、ここに来た、ってこと?中学でも、またその子に負けると思ったから。自分が、孤高の逸材になるために」
「そ」
マイは麻由の考えに頷く。
「たぶん、それが関係してるかもしれないね」
「でも! ……あの子は1年生で、樹奈は2年生だもん。なのにあの子の方が上手で、」
「樹奈、あの子が辞めたい理由はわかんないけどさ、その考え方やめなよ?」
ジロリと麻由の瞳が動く。樹奈は驚きを隠せず動揺する。
「事実がそうだとしても、あんた自身がそう言っちゃもう上手くなれないよ」
「……」
樹奈は無言で頷く。
「あの子と直接話がしたいなー」
「そう出来れば1番いいんだけど。さすがに引きずって連れてくるわけにもいかないし、この時期の1年生は不安定なこともあるから」
藍は、まるで1年前の自分の話をしているようだった。
「マイは、あの子の性格とか見てて心当たりない?」
「……。あの子の事だから、やっぱり技術面で何かあったんじゃないかな」
その答えに、4人は首をひねった。
「でも、さすがに先生たちも動き出してるんじゃない?」
「そうだといいけど……」
*
「ねえ!」
小声で麻由がマイと凛奈の袖を掴んだ。
「あの子、来てるよ! 小峰」
振り返ると、たしかにそこに璃星がいた。
璃星は藍を捕まえていた。困惑した藍は、こちらに向かってきた。
「璃星ちゃん、辞めるけどその前に話しないと辞めたらだめって先生に言われたらしいの」
「3年生じゃだめなの?」
藍は不思議そうに頷いた。
「2年生じゃなきゃやだって」
「なんでまた……」
やれやれと麻由が頭をおさえた。
「それで、なんで藍なの」
チラリと璃星を見る。彼女はキョロキョロとしていて、まるで警戒心の強いネコのようだ。
「ううん。私だけじゃなくて凛奈もだって。サポート隊だから」
「わかった。行くよ」
「ありがと。私、部長に伝えてくるね」
麻由とマイと別れ、璃星の方へ向かう。
びくりと体を震わせた璃星だが、元に戻ってごくりと息を呑んだ。
「璃星ちゃん。行こうか」




