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北原中学校吹奏楽部  作者: 星野 美織
第2楽章
302/423

楽器体験会

「トランペットでーす!」

新学期が始まり、1年生たちの仮入部期間がスタートした。

現在は楽器体験会を開催中だ。

だめだ、追いつかない。どんどんトランペットの列が長くなる。ありがたいことだが。

「えーっと、名前、教えてくれる?」

「……三枝、未羽です」

体験に来てくれた1年生の名前と、どの音まで出たかをノートに記入する。体験会は計3回。その中でトランペットを希望に入れてくれる人を多くしたい。そしてなにより、パート決めの時にパートリーダーが誰がいいかを聞かれた時に答えやすい。

「次の人で最後かな。どうぞー!」

杏が呼ぶと、一瞬、トランペットパート5人は固まってしまった。

「……桜先輩」

杏が思わずポロリと言葉を零した。

そう、その少女は前パートリーダー、星野桜にそっくりだった。

「はい?」

「……あ、ごめん、私ったら。どうぞ座って」

「あの」

「あ、ごめんね。小指はここにかけるんだよ」

凛奈は担当していた1年生に呼ばれてまた元どおり楽器体験を進めた。

「名前、聞いてもいいかな」

「星野 茜です」

凛としたその声にまた耳を寄せた。

名前までそっくりだ。もしかしたら……。

また次も反応してしまったら1年生に集中のない先輩だと思われる、そう思って自分のすべき事に手を進めた。

「うん、いい感じだよ。どうする? 他の楽器試した?」

「あのおっきい楽器まだです」

指差したのはコントラバスだった。

凛奈は美奈のところへ連れて行き、トランペットに戻り、確認したら嵐はひとまず過ぎ去ったようだ。

「はぁー」

体験用の椅子に座る。

茜はまだトランペットを吹いていた。

パーンッ!

張られた音に、周りはシンとした。

「茜ちゃん経験者?」

「はい。東野です。あの……」

少し言いにくそうに、茜は言った。

「私、その……星野桜の妹です」

やはりそうだったか。

凛奈は1人で納得した。

「「あ!」」

3年生2人が顔を見合わせる。

「やっぱそうかー、1回会ったことあるよね、覚えてる!?」

「……濱田先輩と、魚野川先輩?ですか?」

「そう!」

早苗の苗字は珍しいから覚えやすい。

「あと……」

チラリとこちらに目を向ける。

「香坂先輩ですよね」

「えっ、あぁ、うん」

急に呼ばれたから声が裏返ってしまった。

「姉から話聞いてます。私トランペットに入りたいって思ってます。もしトランペットになったら、よろしくお願いします」

「ぶふっ」

「ちょ、加奈子?」

「ごめん、なんか桜先輩に敬語で喋られてるみたいで」

「それ」

聖菜も思わず吹き出してしまった。

「すみません、まだ体験やってますか?」

誰かが袖を引っ張った。

「やってるよ……あ、夢花」

「凛奈ちゃ……先輩。お久しぶりです!」

小学校時代からの後輩、舞田(まいだ)夢花(もか)だ。

「凛奈先輩、夢花はトランペットがしたいです! また去年みたいに一緒に吹きたいです」

ついこの間まで"凛奈ちゃん"と呼ばれていたのに、なんだか慣れない。

「そっか。夢花ならトランペットなれるよ。楽器吹いてもいいよ」

「ありがとうございます!」

夢花は確実にトランペットだろう。

中1としては十分な実力だが、茜の音を聴いているとどうしても物足りなく聴こえてしまう。

「夢花、もうちょっと力抜いてみなよ」

「は、はい!」

それでも、上手だ。

加奈子は、ぶるりと身を震わせていた。

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