新しい家族?
「ただいまー!」
「まぁ、ほんとすっきりね」
新学期の前日。
凛奈は腰の少し上まであった長い髪をばっさりと肩まで切ったのだ。
美容院から帰ってきた凛奈の髪は、艶があって毛先も揃っていた。
「お母さん、話って……」
リビングには、朝緋ではない人物が座っていた。
「……莉々奈!」
「凛奈ちゃん」
凛奈と朝緋の従姉妹、莉々奈だ。
「どうしたの? なんで莉々奈が?」
「あのね、凛奈、朝緋にはもう言ったんだけど」
と、急に深刻な顔になる。
「莉々奈の中学校3年間、うちで過ごすことになったの。だから今日からは"香坂 莉々奈"ね」
「……え!?」
淡々と告げられたその言葉に驚きを隠せない。
当の本人は、えへへと笑っていた。
───そうだ、莉々奈は5年前、事故で両親を亡くしていたのだ。それから2年間は親戚の家を転々としていたが、3年前にようやく祖父母の家にとどまっていたと聞いた。
そして、今日から香坂家に住むことになる。
驚いたが、嬉しい。
「なんでうちなの?」
「北原の、吹部に入りたくて!」
莉々奈が、そんなことを言ってくれるとは。
「じゃあ後輩だ! よろしく!」
「よろしく!凛奈先輩」
2人はハイタッチをした。
ただただ嬉しくて、頬を赤く染めた。




