表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
北原中学校吹奏楽部  作者: 星野 美織
番外編①
290/423

3.ソロ

6月中旬。コンクールメンバー発表。

「ソロは、課題曲Hを星野」

「はい!」

課題曲か。

正直、自由曲のMしたかったけど、今年は紗江かな。

実際オーディションで演奏あんまり納得いかなかったし。まあ、紗江なら私はいいや。

と思っていたけど───

「自由曲Cを米田、Mを香坂が担当するように」

その瞬間、みんな私と紗江を見る。

もちろん私たちも何がなんだかわからなくて、顔を合わせる。

何故私たちじゃなくて、1年生が選ばれたのか。

対してあの子と私たちの実力にそれほどの差はない。むしろ、まだ『先輩』と呼ばれてもいいぐらいだ。

小さな嫉妬が、もやもやと出来始めていた。

なんで? なんで? って、みんなそんな目でこっち見ないでよ。

中学校に入って、こんなこと初めてかもしれない。

負けたんだ、凛奈に───。

その後、こばTに呼び出されたのは、私だけだった。

「今年はなぁー。トランペットはソロが多いから」

「なんで、凛奈なんですか」

初めて小林先生の前で泣いた。

紗江でも私はこんな気持ちになっていただろうか。ちがう。紗江は、ずっと私と2人でパートを守ってきた。なのに、なのに……。

入って2ヶ月の、しかもまだまだ自分の方が上手なのに何故あの子が選ばれたか。

「もうすぐ分かる。追いつかれるなよ」

「そんなの、もちろんですッ!」

むきになって叫ぶ。

何故こんなに焦っているのか。

「じゃあ、もう戻れ」

「……はい」

私は、教室に戻りながら涙を拭って深呼吸する。

目薬をさして、くっと口角を上げる。

そして教室を開ける。

「たっだいま〜。基礎練、始めよっか!」

笑顔を盾にして、私は負けない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ