289/423
2. 体育祭
2015年10月3日土曜日、体育祭
キ───ン
嫌な音が校庭に響く。
《これから、第43回、葉月市立北原中学校体育祭を開会いたします》
体育委員長の開会宣言に続き、金管2年生のファンファーレで拍手が起こる。
メンバー新体制になって、初めての本番が毎年この体育祭のファンファーレとオープニングだ。
3年生に見守られた中、校歌を演奏する。
しかも、我が校の校歌は難しい。Ddurで、しかも音も高い。
始まってまだ2週間の新チームにはハードルが高かった。
木管はトリルや複雑な連符の動きが多く、金管は音域が幅広く、リップスラーの一段階を飛び越す。
演奏が終わり、拍手がまた起こる。
3年生も、笑顔で拍手する。
新チーム初の本番、楽しく演奏するなんて余裕はこれっぽちもなかった。
しっかりできるかどうかが不安で仕方なかった。
「先輩、演奏どうでした?」
クラブ対抗リレーの時、唄華に尋ねた。
「んー、まあ、頑張ってたよ」
なんとなくな中途半端な返事に、まだまだなのだと気付かされた。




