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北原中学校吹奏楽部  作者: 星野 美織
はづき夢色吹奏楽祭・1年生編
286/423

アンコール

《アンコール、ありがとうございます。部長の、泉 茉莉花です。先輩が引退され、もう半年が経とうとしています。そんな中、ぶつかったり悲しんだりしたのは、部員1人1人に、個性というものがあるからだと思います。そして、アンコール飾るのが、color(カラー)です。この曲は、部員1人1人、それぞれのパートに色がある、その鮮やかな色で奏でる、そんな思いでこの曲を選びました。

それぞれのパートのソリで曲が進んで行きます。北吹の、色を"聴いて"お楽しみください。

今日は、最後まで私たちの演奏を聴いてくださり、ありがとうございました。これからもどうぞ、北原中学校吹奏楽部の応援を、どうぞよろしくお願いします!》

パチパチ……

《それでは、colorです。どうぞ》

サックスカルテットから始まる。部員たちがイメージしたサックスの"色"は、黄色だ。

アルト2人のメロディーを、力強く支えるテナーとバリトン。気づけば、クラリネットへとメロディーが移り変わっていた。

クラリネット・バスクラリネットはオレンジ。

優しく、太陽のような5人の音色は、観客の心を温める。

「綺麗だね」

柚子は、ふっと笑った。溢れそうな涙を溜めながら。

ドラムのソロが始まる。優香だ。

タンバリンを夢跳愛がリズムを刻む。マリンバを穂花が、ビブラフォンを麻由が、優しく叩く。

そんなパーカッションの色は、青空のような澄んだ水色だった。

フルートの、優しい音色が被さる。フルートは桃色だ。エメラルドの、オーボエと絡み合う。それを支えるのが、ファゴットだった。

2つの楽器の美しい旋律は、どこか遠くで誰かが微笑んでいる、そんな気がした。

黄緑のチューバ、ユーフォニアム、コントラバスのソリのあと、トランペットパート7人が立ち上がる。

動きは違うが、全員の心は揃う。

トランペットパートにラベンダーが咲き乱れる。

途中から、トロンボーンも加わる。トロンボーンは、炎のような赤色だった。

ストレート管の音色は、やがてユニゾンとなった。

最後に、海のように青いホルンが語りかける。そして、世界が変わるように転調し、tuttiでサウンドを作りあげる。

全員が立ち上がった時、莉々奈は気付いた。

「Tシャツの色が、パートの色なんだ」

色鮮やかな音たちは、観客の心を震わせる。

曲が終わった時、自然と笑みがこぼれた。

立ち上がったとき、熱か、それとも心が温まったからか、体がポカポカと暖かかった。

「ありがとうございました!」

「「ありがとうございました!」」

全員で、礼をする。

【以上をもちまして、はづき夢色吹奏楽祭2015北原中学校ステージを終演いたします。本日は、お越しいただきありがとうございました。お気をつけてお帰りください】

池田の優しい声と、拍手が混じり合う。

「終わっ、た───」

へにゃりと口が緩んでいった。

「ありがとうございましたー!」

玄関で、観客たちを見送る。

「ありがとうございました!」

奈津が、満面の笑みで挨拶をしていると、後ろから肩を誰かに掴まれた。

振り返ると、そこには柚子がいた。

「柚子……」

「よかったよ。ソロも。あのね、私決めた」

柚子が耳打ちすると同時に、奈津の目から、涙が溢れ出した。

そのまま柚子に抱きつく。

「……ありがとう……!」

凛奈は、それを見て、ホッとしていた。

「凛奈ちゃん」

目の前には、従姉妹の莉々奈がいる。

「莉々奈! 来てくれたんだ。ありがとう!」

何か、莉々奈は言いたいような顔をしている。

「凛奈ちゃん、実はね───、」

言いかけたところ、人混みに逆らえず、流されて行ってしまった。

また後で!と手を振る。

「ありがとう!」

莉々奈も、これをきっかけに入学先の中学校で吹奏楽部に入ってくれたら。そう小さな思いが凛奈の口元をほころばせた。


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