合同ステージ
《さて、続いては本日のゲストバンド、県立皇城高校吹奏楽部の先輩方との合同演奏を行います。3月の上旬、私たちは皇城高校にお邪魔して、合同練習をさせていただきました。先輩方の───》
「凛奈ちゃん。よろしくね」
「あ、よろしくお願いします」
先日の東野出身の高校生だ。羽奏はトップの杏の隣だ。
オーボエによるチューニングが始まる。木管、金管、そして打楽器、と順番にする。打楽器がオーボエでチューニングすることは滅多にないが、皇城高校では打楽器も響きを身につけるためにしているらしい。
《それでは、準備が整ったようです。皇城高校と北原中学校の合同ステージです。どうぞお楽しみください》
指揮は小林だ。滑らかに手が動く。
小林がこのステージのために選んだ曲は、間奏曲。
高校生と演奏する機会なら、ゆったりとしたテンポで音の厚みを学ぶため。
フルートやクラリネットの暖かなトリルの中には、まだまだ幼い中学生たちの音も聴こえてくる。だが、ホルンのソロは違った。綾乃だ。
高校生かと思わせる綾乃のソロ。彼女は中学校から始めたと思えないくらいのサウンドを、会場に響かせる。
そして、いつも以上に響くクラリネットへと移り変わる。これが、高校生、いや、皇城の力なのだろう。学年なんてわからない。それくらい1人1人が響いている。
"そして、お次の主役はトランペット!"
古川はこう言って、合奏練習ではもっと!と求めるように音を引き出すような動作をしていた。
そう、小林もトランペットを見て、舞台の音を持ち上げる。
ああ、心地よい。
高校生が、我を主張せず、中学生をサポートするように支えてくれる。
終盤の杏のソロのハーモニー隊は、音が分厚かった。それだけ乗りやすかったのだろう、杏の音色はいつも以上に輝いて聴こえた。
静かに、そっとハーモニーが消えていく。
その瞬間、拍手がクレッシェンドで巻き起こる。
《皇城高校吹奏楽部の先輩方、ありがとうございました。さて、続いての───》
「あ、あの、」
夢跳愛が司会をし、高校生たちが退場しかけるときに、羽奏に話しかけた。
「ありがとうございました」
すると、羽奏はひらひらと手を振り、
「こちらこそ。楽しかったよー」
と、笑みをこぼして去っていった。




