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北原中学校吹奏楽部  作者: 星野 美織
はづき夢色吹奏楽祭・1年生編
281/423

合同ステージ

《さて、続いては本日のゲストバンド、県立皇城高校吹奏楽部の先輩方との合同演奏を行います。3月の上旬、私たちは皇城高校にお邪魔して、合同練習をさせていただきました。先輩方の───》

「凛奈ちゃん。よろしくね」

「あ、よろしくお願いします」

先日の東野出身の高校生だ。羽奏はトップの杏の隣だ。

オーボエによるチューニングが始まる。木管、金管、そして打楽器、と順番にする。打楽器がオーボエでチューニングすることは滅多にないが、皇城高校では打楽器も響きを身につけるためにしているらしい。

《それでは、準備が整ったようです。皇城高校と北原中学校の合同ステージです。どうぞお楽しみください》

指揮は小林だ。滑らかに手が動く。

小林がこのステージのために選んだ曲は、間奏曲(インテルメッツォ)

高校生と演奏する機会なら、ゆったりとしたテンポで音の厚みを学ぶため。

フルートやクラリネットの暖かなトリルの中には、まだまだ幼い中学生たちの音も聴こえてくる。だが、ホルンのソロは違った。綾乃だ。

高校生かと思わせる綾乃のソロ。彼女は中学校から始めたと思えないくらいのサウンドを、会場に響かせる。

そして、いつも以上に響くクラリネットへと移り変わる。これが、高校生、いや、皇城の力なのだろう。学年なんてわからない。それくらい1人1人が響いている。

"そして、お次の主役はトランペット!"

古川はこう言って、合奏練習ではもっと!と求めるように音を引き出すような動作をしていた。

そう、小林もトランペットを見て、舞台の音を持ち上げる。

ああ、心地よい。

高校生が、()を主張せず、中学生をサポートするように支えてくれる。

終盤の杏のソロのハーモニー隊は、音が分厚かった。それだけ乗りやすかったのだろう、杏の音色はいつも以上に輝いて聴こえた。

静かに、そっとハーモニーが消えていく。

その瞬間、拍手がクレッシェンドで巻き起こる。

《皇城高校吹奏楽部の先輩方、ありがとうございました。さて、続いての───》

「あ、あの、」

夢跳愛が司会をし、高校生たちが退場しかけるときに、羽奏に話しかけた。

「ありがとうございました」

すると、羽奏はひらひらと手を振り、

「こちらこそ。楽しかったよー」

と、笑みをこぼして去っていった。

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