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北原中学校吹奏楽部  作者: 星野 美織
はづき夢色吹奏楽祭・1年生編
280/423

シンフォニックステージ

「莉々奈、ちょっと待って」

「おばあちゃん!」

本番の10分前。

栄本(はもと)莉々奈。先日小学校を卒業したばかりの少女である。

今日は、従姉妹の"凛奈"の所属する吹奏楽部の演奏会に来ないかと祖母に誘われたのだ。

「莉々奈」

聞き覚えのある声。この声は───

「朝緋くん!叔父さん!叔母さん! 」

朝緋。そして、2人の両親だ。

「久しぶり!」

「来てたんだ」

「そっちこそ。いつもならこないのにねー」

「今日は暇だったんだ」

そんな話をしていると、ブザーが鳴り出した。

【ただいまより、はづき夢色吹奏楽祭2015、北原中学校ステージを開演いたします】

池田の優しい声に続いて、幕が上がりながら曲が始まる。ラッパ隊のファンファーレだ。

ホルンが同じメロディーを引き継いで、ハーモニーがぐんと広がる。

杏のファンファーレのようなまっすぐなソロに風香のファゴットが囁く。だんだん溶け込んで、テンポがゆったりになる。

「すごい……」

莉々奈はそんな言葉しかでなかった。

オーボエがソロを終え、クラリネットとアルトサックスがフルートのハーモニーを支え、ティンパニのクレッシェンドで、ハーモニーが会場を包む。

小林が指揮台を降りると、大きな拍手が巻き起こる。

《みなさん、こんばんは! 北原中学校吹奏楽部です。本日は、はづき夢色吹奏楽祭、北原中学校ステージにお越しいただきありがとうございます!》

マイクから伊織の声が聞こえる。隣には、夢跳愛がいる。

《私たちは、1年生21人、2年生18人の計39人と、顧問の先生方お2人で楽しく活動しています。申し遅れましたが、第1部、シンフォニックステージで司会を務めさせていただきます、2年オーボエパートの小河伊織です》

《同じく、1年パーカッションパートの氷鉋夢跳愛です》

《《よろしくお願いします!》》

ぺこりとお辞儀をする。拍手が、大きい。

ホールだからやはり響くのだろうか、観客は……多い。東野小、西野小、北原小のバンドメンバーも見に来ているはず。これも、部員たちが必死に宣伝したからであろう。

この演奏会をきっかけに、来年から北原中に入部する小学生たちにも入部を決めてほしい。

期待とプレッシャー。両方を持ちながらも、凛奈はわくわくとしていた。

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