小6の時
その日の夜。
凛奈はいつも通り誰かの帰りを待っていた。
すると、マイから電話がかかってきた。
《もしもーし。凛奈ー》
「ん?」
《凛奈、今日元気なかったけどさ、どうしたの?
もしかして小学校の時のこと?》
「あー、まだ話してなかったよね」
《ゆっくりでいいから話てみ?聞いてあげるよ》
「……うん」
小6の時ね、金管バンドでファーストコルネット吹いてたんだけど、もう1人の6年の美都っていう子もファーストの子がいたんだ。
今は西中でトランペットをやってるみたい。
美都はね、私より1年はやく入ってるんだ。
だから、当然私より上手かった。
入部した時、私もマイみたいに、入部したばかりって思えないくらい上手かったんだって。それでもまだまだで、みんなには追いつけなかった。だから、肩身が狭くてみんなに意見が言えなくて、バンドの中で孤立していた。
それでも美都は私に優しくしてくれた。
6年生になったら、先輩が使っていたた吹きやすいマウスピースも返されて、だいぶ上達したんだ。
その時、私はトップを任された。
誰もが美都だと思っていた。なのに、急に私が上手くなって、その座を取られて……。先輩も、私の実力を認めたから。トップであることに納得したから。美都にとって私は邪魔なんだ。
5年生の時までは、同じ学年の私以外の6人は、とても仲がよかった。その中に入りたかったけど、私が1番最後にバンドに入ったから、みんなのところに入れなかった。
6年生になって、上達してから少しは意見が言えるようになったんだ。
だけど、6人と私の意見が合わなくて、何度も喧嘩した。6対1っていう訳じゃなかった。
みんなといて楽しいと思えた。
最初はバンドの中でも孤立することがなくなったし、心地よかった。だけど、だんだんそれが7人の気持ちをバラバラにしてしまったかもしれない。私がいる事で、決まらない事も増えた。だから、気まずいっていうか、どうしようもない苦しみだったんだ。
《………。》
「あれ、もしもーし。」
《なんかさ、凛奈らしくないよ?久々の再開!ってかんじで明るくいったら大丈夫だよ。》
「…そうだね。ありがとね。聞いてくれて。じゃ、そろそろ切るね。」
《うん!また明日!バイバーイ!》
「バイバーイ。」
電話を切ると、凛奈は、ため息をつくが、ハッとなって、自分の顔をバチンッと叩いた。
『しっかりしなきゃ!』